エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第4章 ネームレスの反撃

第45節 エクステンショナブル・ウィザード

 マダム・ダルジャンは目標であるロサピアーナ艦を発見、しかしすでに船は停止しており、デュロンドを射程に収めていた……
 そのことがリリアリスらに伝わるとリリアリスは意を決してデュロンド側のほうへと船を着水、 そしてデュロンドの領海内でターンし、沖のほうへと戻っていった。 さらに船を海の上で停止したが、そこはなんとロサピアーナ艦の真正面だった。
「おい、リリアリス! 一体何をするつもりだ!」
 ヒュウガがそう言うがリリアリスはロックを解除すると操舵室を飛び出し、船首側へと飛び出していった!
「リリっ……くそっ、エクステンショナブル展開していた真の理由はこれか――」

 船が止まり、ロック解除されたことで他の面々もプレイ・ルームから飛び出してきた。
「リリアさん! 一体何をするつもりです!?」
 アリエーラが飛び出しリリアリスのもとへと急いで駆け寄ってきた。
「連中の使用するエネルギーは所謂魔導レーザー的なもの、ここでバリアを張って敵の攻撃を受け止めるのよ!」
 兵器による攻撃を自分の魔力で受け止めるだなんていくら何でも無茶である、 フィリスがそのようなことを言うとヒュウガが言った。
「エクステンショナブル・ウィザード・フィールドを展開しているからな、 その無茶を承知でやるつもりらしい……」
 するとアリエーラは頷きつつ、リリアリスの隣で力を集中し始めた。それに対し――
「アリ!?」
 リリアリスは驚いていた。
「だから無茶はしないでくださいな。 楽しいこともつらいことも私と一緒ですよ、私にも協力させてくださいな――」
 さらにフロレンティーナも加わった。
「あんたたち2人がやるっていうんだから私がやらないわけにはいかないわよねぇ?」
 2人とも――リリアリスはそうつぶやいた。 そこへディスティアが3人の足元を見ると、何かの魔法陣が浮かび上がっているのに気が付いた。 これがそのフィールドなのか、自分もと思って陣の上に行こうとすると別の誰かがそれを遮り、その陣の中に入った。
「私もそれなりに魔力持っているつもりだから私の力も使いなよ。 それに――アリとリリアと一緒なら絶対に成功させたいしね!」
 それはフィリスだった。うっ、自分の役目がとられた、ディスティアは残念そうにしているとヒュウガが言った。
「まあまあ、これはこれで仕方がないだろ。 それよりもできることはまだあるぞ、こっちは力仕事。ティレックス、お前も一緒に来いよ」
 ヒュウガに促された先はあの制御室内、3人が入っていく中ユーシェリアもそれについていった。
「そこにレバーがあるだろ?  これから船のエネルギー出力をさらにあげることにするが敵の攻撃を受けたときに船のエネルギーがあふれ出そうになるぐらいのものすごい負荷がかかる。 だからそのエネルギーがあふれ出ないようにそのレバーを目いっぱい押し込んでくれ」
 それに2人は息を飲みながら頷くと、その場で軽い準備運動をしつつレバーのつかみ方をそれぞれ考えていた。 レバーは長めに作られており力が込めやすそうだが、どことなくなんだかおしゃれな井戸水をくみ上げるようなポンプレバーに見えた。
 そしてヒュウガはユーシェリアに目をやると、
「運がいいというべきか――衝撃が来た途端にシステムが一度にアラートを吐き出すようになるから俺と一緒に状態をクリアーにしていくのを手伝ってくれ。 それをしないとシステムがうまく動かないからな」
 それに対してユーシェリアは「はいっ!」と力強く元気に答えた。

 はるか沖のほう、ロサピアーナ艦ではけたたましい警報が発生していた。 それは大型破壊兵器からレーザーが放たれようとしている警報である。
 総員は緊急配備、各自持ち場についてレーザー発射に備えていた。
 兵器の中央あたりから砲門がゆっくりと出てくるとそこから周囲からパワーを吸い込むかのようにエネルギーが一点集中、 3度の大きなビープ音が鳴りやんだ後、砲門から真っ赤な色のレーザー・キャノンが放たれた!
 そしてものすごい速度で空を切り裂いて放たれたキャノン砲はデュロンドに向けて一直線!  その赤い物体が確認できたヒュウガは――
「来たぞ2人とも、レバーの準備はいいな?」
 そう言われたディスティアとティレックスは1本のレバーを2人でそれぞれが思ったところを握り始めた。 そしてユーシェリアもその2人の様子を見た後、目の前の操作盤に接続された端末を見て覚悟していた。

 空を切って突っ込んでくるレーザー・キャノン、透過物質のようで明らかに魔力の塊であることがわかるようだ。 そしてそれが空中に展開されているいくつかの膜を貫いてデュロンド方面へと突っ込んできた。 その膜はマダム・ダルジャンで展開されているバリアから放たれている薄い魔力の層で、 つまり4人で展開している魔力の壁の中へと侵入してきたということである。
 そしてそれがついにマダム・ダルジャンからその物体が確認できると――
「巨大な魔力よ! みんな気を抜かないで!」
 その魔力を感じ取ったリリアリス、 みんなにそれを伝えると、リリアリス、アリエーラ、フロレンティーナ、フィリスの4人は改めて気合を入れ力を集中していた。