エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第4章 ネームレスの反撃

第44節 漕いでダメなら……

 ティルア勢を残し、車をぶっ飛ばして追いついたヒュウガたちは出港直前のマダム・ダルジャンのところまでやってきた。
「待てよ――」
 ヒュウガがそう言うとリリアリスは言った。
「早く乗りなさい! 船をぶっ飛ばすわよ!」
 それに対してヒュウガは頷いた。
「よし、早速やろう」
 やろうって、一体何をするつもりなのだろうか……

 船は出港するとヒュウガはさっそく船のとある箇所のレバーを操作すると、 そこから入口が開き中へと入っていった――
「なんだこの部屋は!?」
 ティレックスは驚きながら言うとリリアリスが話をしながら入っていった。
「制御室よ、この船のシステムの制御を一手に引き受けている部屋、エンジンルームとも言うわね。 危ないからそこにいて。」
 いろんな機械部品がむき出しに近い形でおいてあり、 しかも入り口付近から潮風をほぼ感じないようになっていて、 流石に腐食対策は万全の部屋のようである。
 そして部屋の奥から声が聞こえてくる。
「ブースト・ターボ起動、全出力160%まで上げとくぞ」
「エアッド・ドライビング・モード展開、それからエクステンショナブル・ウィザード・フィールドも展開。」
「ドラゴン・バーニアとファルコン・ウィングをアタッチ、OK。異常は?」
「バッチリ出てるわ、エマージェンシー・モード発動。シートベルト・フィールド正常起動、これで完了よ。」
 その後2人は出てくると、
「さあみんな、緊急避難よ。プレイ・ルームに集まってて、ロックするわよ。」
 リリアリスにそう言われるとみんなで言う通りにしていた。

 そしてリリアリスとヒュウガが操舵室へと行くと、船は急に停止したようだった。 何をする気だろうか、みんなでそう思っているとプレイルームの頭上からリリアリスの声が。
「行くわよみんな、最初だけどこか適当なところにつかまっていて!」
 所謂館内放送、ますます何をするのか不安だった。するとその時――
「ウィング展開、バーニア点火!」
 今度はヒュウガの声が聞こえると、次はリリアリスが――
「はいよー、シルバー!」
 勢いよくそう言うと、船が突然振動し始めた!
「なっ、何!? なんなの一体!?」
「りっ、リリアさん! 一体何ですかこれ!?」
 フロレンティーナとアリエーラがそう言うとフィリスが――
「ちょっと! 外見てみなよ!」
 そう促されて一行は窓越しから外を眺めると、なんと!
「どっ、どういうことだよこれ、なんかちょっと海が遠くないか!?」
 それに対してユーシェリアが言った。
「遠いっていうより多分飛んでいるような気が――」
 なんだって!? 全員が驚いていた。
「そうよ、連中よりも早く着くためには飛ぶしか手がないからね。 言ってもエアッド・ドライビング・モードはあくまで水の上を高速航行するために取り付けたオプションでしかないからね、高度もこれが限界。 ちなみに揺れるけど出力160%と異常な状態のせいだからそこは許してね。 室内はシートベルト・フィールドのおかげで歩けるレベルだと思うけど、 外に出たら時速4,800kmでぶっ飛ばしている中に放り出されるから、そっちで勝手にロックを開けてたりしないでね。」
 なんとも恐ろしい発想である、船を漕いでダメなら飛んでみるとか……。 それにしてもスピードも恐ろしい値をたたき出しているようだ。
「流石に出力160のスピードだな、 このままだと船が持たないぞ、エクステンショナブル展開したんなら早くしろよ」
「はいはい、まったく人遣いの荒いヒー様ねぇ。行くわよ、シルファーヌ・ブラスト!」
 今度は魔法!? すると船首側から巨大な風の刃が! どうしたんだろうか、ティレックスがそう言うと、
「超絶音速を維持するためにを文字通り風を切って空気抵抗減らしてんじゃないの」
 フィリスがそう言った。確かにそんな感じがする。
「でも発動した魔法、ちょっと大きすぎません? だって完全に風の刃に隠れている状態ではないですか、この船……」
 その大きさは半端ではないすごい大きさ、ディスティアはその点を指摘すると、
「エクステンショナブル云々とか言ってたから、多分船の機能で魔法の効果を拡大させているんじゃないかしら?」
 と、フロレンティーナが言った。 確かに船からミサイル・ガードといいミスト・スクリーンといい、 船に魔法機能を搭載させるぐらいわけないのでそのぐらいの機能はついていてもおかしくはなさそうである。