アリエーラも単身でとある施設へと向かっていた。
「流石ですね、リリアさんはもうケルベイナ発電所を攻略中ですか。
私も早く行かないと――」
アリエーラもまたミスト・スクリーンを使用し、車でマドベーニ発電所へと急いでいた。
「敵が多くなってきましたか、このあたりから歩いて移動しましょう――」
アリエーラはそう考えつつ車から降りると、真っすぐ発電所へと侵入した。
「高い塀ですね、私も上から侵入しましょうか……」
アリエーラは風魔法を用いて自らの身体を浮き上がらせ発電所内へと侵入した。
すると――
「せっかくですから、このまま――」
アリエーラは地上に向けて氷魔法を発動した!
「悪いことをする人たちはお仕置きです!」
地上にいる敵兵たちは一瞬にして氷漬けになった……
そしてアリエーラは地上に降り立つと、そのまま”兵器”を携えたまま発電所内へと入っていった。
彼女らについては単身での行為だが、
同じように単身での侵入をした者もいれば複数人でロサピアーナ軍が占拠している拠点をそれぞれ制圧していった。
「早いな」
「遅いわね。」
クラフォードが待ち合わせ場所であるブナイストの街の集会場へとやってくると、
そこにはリリアリスとアリエーラ、そしてフロレンティーナとフィリスが椅子に座って待ち構えていた。
「あんたたち”ネームレス”とかと一緒にしないでくれ。それよりもほかの面々はどうした?」
リリアリスは言った。
「ディア様組が戻ってきたわね。でもティレックスが化学兵器に侵された程度で全然平気よ。」
それのどこが平気なんだ、クラフォードは焦ってそう訊ねると、
「私が食らった兵器と同じ毒だったみたいだからすでに血清を投与して経過を見ているところよ。
今はユーシィが健気に看病しているんだから邪魔しちゃダメよ。」
あんたも食らったんかい……クラフォードは頭を抱えながらそう言った。
「リリアさんは本当にあんなの食らって平気なんですか?」
アリエーラは心配しながら言うとリリアリスは答えた。
「ええ、まあなんとか。
頭痛がするのがどうしても残っているけど、それでも食らった時に比べるとだいぶマシだから全然大丈夫よ。」
リリアリスは一応食らったことで効果があるわけだがそれよりも驚愕なのがシェトランドである。
「今回の作戦はシェトランド人中心のほうが攻めやすいかもしれないわね。」
リリアリスがそう言うとクラフォードは頷いた。
「シェトランド人、そんじょそこいらの毒が効かない体質だからな。つまりは今回の化学兵器も?」
フィリスは頷いた。
「流石は石の民っていうだけあるわね、特にイールに任せとけば全部きれいさっぱりなんじゃない?」
確かに言えてる。クラフォードも含め、やや下に顔を向けながら鼻で笑っていた。
「恐ろしいぐらいに計画通りに事が進んでいるな。後続部隊はどうなっている?」
クラフォードに対し、リリアリスは解放した拠点にはすべて配備済みであると言った。
このような情勢の国であるため、当然インフラ設備――特に発電所が奪われていただけあって町の機能は既に喪失している。
電波も不安定でインターネットなどはほとんど使えない状況が続いている。
そこでマダム・ダルジャンに組み込んでいたユニットを利用し、
今は自動操縦を用いてクラルンベルの南沖で待機している状況である。
そこからミサイル・ガードを展開し、
同時にその魔法フィールドの効果に無線電波を乗せることでクラルンベルのある程度の範囲の無線通信をサポートしているのである。
そしてブナイストは南沖側からそれなりに近い街であるため無線通信の範囲でもある。
しかし、このフィールドによる効果はそれだけではなく、敵の通信手段も封じていた。
「トランシーバーが使えないのは不便だな」
別の部屋から出てきたイールアーズがそう言うとヒュウガが答えた。
「それは仕方がない、敵の通信手段を無効化するためだしな。
味方側も使えなくなるのは確かに悩むところだが情報を奪うのも立派な戦術、そのためならやむ無しだ」
フィールドには通信の一切を封じる妨害電波も含まれていた。
要するに通常なら誰も通信が使えないのだが、それを可能にするのはトークンである。
リリアリスは端末を操作しながら言った。
「トランシーバにトークンをインストールできればいいんだけどね。
しかもクラウディアスの超高性能サーバで生成した秘密鍵でクラウディアスのサーバで認証を受けないとトークンは入手できないわ。
つまりはクラウディアスのお許しがないとこのあたり一帯は全然通信ができないってワケね。」
ディスティアは苦笑いしながら言った。
「なるほど、これがサイバー攻撃というものですか――」