エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

あの日、すべてが消えた日 第3部 堕ちた天使の心 第4章 ネームレスの反撃

第40節 クラルンベルの現状

 それから数日後、ルシルメアとケンダルスには強固な防御柵が取り付けられ、 それでも一応念のためにとこっそりとロサピアーナに対して仕掛けることにした。
 ルシルメアはクラウディアス連合軍の一員なのでともかく、ケンダルスということについては納得がいかなかった。 ケンダルスは永世中立国、攻撃してはいけないはずなのだがロサピアーナはその取り決めに対して否定的であるため、そんなものは関係ないと言っているのだろう。 だがそのせいもあって、同じく永世中立国を謳っていたルーティスは止む無く新旧クラウディアス連合軍へと加入していった経緯がある。 ルーティスは学術都市、学び場を守るということは必要不可欠であるため、ルーティスにとってはそれは苦肉の策でしかない。
 しかしケンダルスは独自の宗教国家であり独自の価値観によって成立しているため、ルーティスのような考え方は持たない。 だが今回は命を守るための選択ということで、連合軍が防御を固めたいという提案には了承したのである。

 マダム・ダルジャン、リリアリスの船でクラルンベルへと向かっている一行、メンバーについては追々。 再びクラフォードはリリアリスと話をしていた。
「バカは死ななきゃ治らない、まさにあんたの言う通りだよな」
 クラフォードはリリアリスに対してそう言った。
「結局暴力に対して暴力で対抗って流れになったけど、そういうことだと思って臨むことにするわ。」
 リリアリスは武器の手入れをしていて、今しがた――
「はいカスミん、それからフローラも出来上がったわよ。」
 2人の武器の手入れが終わった。
「最高。皆殺し準備おけ」
「ありがと、リリア♪」
 2人は嬉しそうだった。
「ほら、クラちゃんも出来上がったわよ。私が作ったやつじゃあないからきちんと確認して。」
 そう言われてクラフォードは狼狽えた様子で受け取ると、そのままプレイルーム内で素振りをしていた。
「はい、あんたのもね。ちゃんと丁寧に扱いなさいよ。」
 リリアリスはそう言い、そいつは剣を受け取ると即座に片付けながら言った。
「難しいことを簡単に言うんじゃねえ、できれば敵に言ってくれ」
 そいつはガルヴィスだった。彼の言うことに対してリリアリスは笑いながら答えた。
「確かに! ホント、その通りよね♪」

 そしてリリアリスはさる人に武器を取り出しながら言った。
「ディア様♪ このリリアリス=シルグランディアめがあなた様の剣のお手入れをさせていただきました、 どうぞ、お受け取りくださいな♪」
 と、なんだか上品かつ丁寧にディスティアに彼の剣を差し出した。それに対し、当然――
「なっ、なんですかいきなり……」
 ディスティアは狼狽えていた。
「いいじゃないのよ、イケメンの賢者様♪」
 リリアリスは調子よく言うとディスティアは苦笑いしながら言った。
「やっ、やっぱりそういうことですか……まあ、気持ちだけは受け取っておきます――」
 そして、後ろから――
「あっ、おねー様、出来上がったの!?」
「この人数の分を一度にこなすとは恐るべし――」
「もはや俺の理解を超えているな……」
 ユーシェリア、ティレックス、そしてイールアーズとそのほかの面々もリリアリスに各々の武器を手渡されていたのである。
「相変わらず素晴らしい仕事っぷりね、まるで出来立てほやほやみたい――」
 フィリスは自分の剣を掲げその刀身を見上げていた。そんな各々の様子にリリアリスは得意げな態度で佇んでいた。

 目的のクラルンベルから上陸ができないためデュロンドの同盟国であるオレアルから上陸し、 そこから内陸の国を経由してクラルンベルへと突入する手はずである。
 そしてさらにいくつかの国を経由し、クラルンベルの西のポードルからクラルンベルへと入った。 ロサピアーナはクラルンベルの東側のため場所的には一番遠い所となるが、 侵入経路としては問題から遠いところから入るのが一番といえることかもしれない、 そのほうが怪しまれずに済むことだろうし安全に入れることだろう。
 クラルンベルからの避難民とは逆行していく一行、オレアル側で用意した軍用車に乗って運ばれていった。 そしてクラルンベルの首都キーラの大統領官邸前に集まった。
「これが市街地か、惨いものだな」
 クラフォードはそう言った、周囲は物々しい雰囲気、人の気配がほとんどないような感じだった。 だが、大統領官邸内には誰かがいるような感じがあり、ゼレイアス大統領がここにいるのかは不明だが、 未だにクラルンベルのどこかにとどまっているらしく、この軍の士気を高めていることにもつながっているようだ。
「でもここはまだまだマシなほうで東は町の形を成していないような区域もあるそうよ。 本当に酷いわね――」
 リリアリスがそう言った。そこへイールアーズが話した。
「町が破壊されたような場所ってのは俺も経験あるが、たとえどんなところだとしても酷いもんだな――」
 それに対してディスティアは頷くとさっさと話を切り上げようとした。
「確かにそれもそうですがここに居続けるのは危険です、 ここは首都、ロサピアーナは陥落を狙おうと近くまで迫ってきています。 目的を早く満たしてしまいましょう」
 それをリリアリスに促すと、彼女は話を締めた。
「そうね、さっさと用を済ませましょう。」