クラウディアス連合軍とディスタード帝国軍との戦いについては事実上クラウディアス連合軍の勝利ということで幕を下ろした。
それによってディスタードは旧王国派の立て直しによって政権を奪還、その後は正式にクラウディアス連合軍の仲間入りを果たした。
そしてその後、エダルニアことエダルニウス軍についてもクラウディアス連合軍の作戦によって崩壊した。
此度はクラウディアスが提唱し現在進行形で続いているセラフ・リスタート計画の真っ最中である。
そんな中、クラウディアスに対してティルアにいるアトラストから急な連絡が入ってきた。
それはセラフ・リスタート計画の状況が全世界に放映されているのと同時に話題になっている、とある件のことであった。
「いろいろと面倒なことになっているようだがとうとうヤバイことになってきたようだ――」
クラフォードはクラウディアスのシステム・ルームの後ろ側にて、そうつぶやいていた。
「やつら、これまで以上の規模でやってきたぞ、クラルンベルがマジで危ないかもしれない――」
ティルア側でそう言っているアトラストに対しリリアリスは訊いた。
「状況はそんなに悲惨なの?」
ティルア側にはバフィンスとアローナが話に加わってきた。アローナが話をした。
「クラルンベルからの要請があってね、ぜひクラウディアスに助けてほしいって言ってきたわ――」
なんだって!? それには誰しもが驚くと、リリアリスは訊いた。
「助けっていうのは……これまでのロサピアーナへの包囲網やクラルンベルへの支援だけでなく、
軍事介入をってことでいいの?」
バフィンスが答えた。
「デュロンド経由でそう相談された。
実際、それでデュロンドはクラルンベルへの軍事介入を決めたらしい。
グレート・グランドについてはクラウディアス連合軍との取り決めでクラウディアスとともに支援をお願いしたいって言われたぜ。
んで今現在ルシルメアとケンダルスに掛け合い、
連中の長距離ロケットミサイルに対する防御について交渉しようとしている最中だ。
無論、ロケットミサイル対策については恐らくディスタードに直接オファーが来ることだろうよ」
さらにバフィンスは重要なことを付け加えた。
「グレート・グランドとは別にシェトランドがこの件について立ち上がったぞ。
すでにデュロンド軍の傭兵部隊として現地に向かっている最中だ」
それには再び一同が驚いた。それに対してイールアーズが訊いた。
「なんでだ、シェトランドがなんで他所の民族のことに口出しするんだ」
ディスティアは頷いた。
「セイバルの件と関係があるからですね」
あっ、そう言えばそうだった、イールアーズは腕を組みながら考えていた。
そしてバフィンスは頷くと話を続けた。
「そうだ。セイバルの連中はシェトランドの核を研究しロサピアーナは生物兵器や化学兵器の研究を行っている。
セイバルの兵器の出どころはロサピアーナとの同盟国のエスブラネだってことまでつかんだが、
ってことは当然ロサピアーナから運ばれたものだってことは間違いないだろう。
そしてセイバルの研究所から研究データがごっそりとロサピアーナに渡っていることもあの後の調べでわかっている。
そっちの姉ちゃんの話じゃあシェトランドの核を利用するかどうかはともかく、
所謂パワーストーンとして利用するという点では有用なデータらしいって言ってたよな?」
そっちの姉ちゃんとはリリアリスのことである。そしてアリエーラが言った。
「それは――大変です! 何とかしませんと!」
クラルンベル情勢について理解がイマイチな人もいたため改めておさらいすることになった。
クラルンベルへのロサピアーナ軍事侵攻については誰もが知ることであり、
ロサピアーナの国家元首であるラウファールがそれを決定したことで長らく続くことになった。
他国が何とかクラルンベルを助けようと考えてはいるがなかなか手が出せずにいるのが実情である。
ことクラウディアスのような大国が手を出そうとするとロサピアーナには長距離ロケットミサイルがあり、
他所の国を人質にしているかの如くのため迂闊に手が出せない状況が続いているのである。
現にこの長距離ロケットミサイルはバフィンスの話にも触れた通りルシルメアとケンダルスを射程に収めていると言っている。
そして、クラルンベルに対して加勢しようものならその国に対しては結構めちゃくちゃなことをしでかす始末、
例えばデュロンドの領地であるディグラット中央部に対して最近では不審船を出したり領海侵犯も辞さない状態。
エダルニアと競合してディグラット東部に要塞を建設して侵攻を開始しようと企むなど、もはや手に負えない。
また、エスブラネという国が出てきたがこれはロサピアーナの隣国にして同盟国、
つまり、ロサピアーナと一緒になってクラルンベルを攻撃している国ということである。
もちろん軍事同盟も結んでいることからほぼ同じ兵器を使用していることになり、
ロサピアーナの兵器がセイバルの手に渡っているという理解で間違いないということである。
そしてクラウディアス連合軍によってつい最近崩壊したエダルニアという国もロサピアーナの同盟国だったが、
エダルニアは既に解体しておりロサピアーナもここから手を引いた。
だが、今回の大型侵攻作戦はエダルニアという仲間がいなくなったことによる焦りからきているという見方も強く、
デュロンドとしても危険視している状態である。
「んなこと言われたって――エダルニアはディスタードやクラウディアスをマジで攻め落とそうって考えてたんだから仕方がないでしょ。
それなのに――いわれのない反感を買うことになるなんてねぇ……」
リリアリスは呆れ気味に言うとアリエーラが言った。
「第一、ガリアスは”ネームレス”、私たちと同じ異世界の人間です。
そして彼はロサピアーナとかクラウディアスとかそういう区別には興味がなさそうな人だったハズです――」
「そうよ、だってディスタードもクラウディアスも大国だからっていうだけのことでターゲットにしただけのことよ。
あいつの目的はただの破壊、ロサピアーナが同盟国とかそういうのでなければ間違いなくロサピアーナもターゲットだったハズよ。」
それに対してクラフォードは言った。
「とは言ってもな、連中にそんなこと言ったって通じるわけないだろ。
やつらにとっては”同盟国が敵に奪われた”っていうことでしかないし、実際にそうだからな。
連中の声明も知ってるだろ? ”我らの同士を殺害した者はいずれその責任を取ることになるだろう”ってな。
もはや嫌な予感しかしてこないな――」
リリアリスは悩んでいた。
「これだから戦争犯罪者ラウファールは。アリ、いいこと? 将来結婚するのなら絶対にあんなやつを選んじゃダメだからね!」
「はい! リリアさんのほうこそですよ!」
それは皮肉なのだろうか。