キラルディアに到着した、早速だが港に来てくれと言われたので一行は言われた通り、港へとやってきた。
「おやおや、これはこれはクラウディアスの屈強な戦士たちと、クラウディアス名物・インテリ美女たちのお出ましですね!」
と、ヴェラルドは調子よく言った。彼はマダム・ダルジャンの隣に立って待っていた。
「あらあら、わざわざ船の面倒を見てくれていたのね。」
リリアリスが言うとヴェラルドは答えた。
「お前はクラウディアス様をもてなすようにしろと言われて決まったものですからね」
リリアリスは腕組した。
「もはや完全に外交担当ね。」
「外交は今や国の政策の最重要案件ですので、どのポジションの者であろうと外交を兼任していることが多いです。
私はそのまとめ役でもありますが、まあ、最初のリファリウス様との立ち会いでは私が受け持っていますから、
対クラウディアスについてはこの私がそのままやらせてもらっています。
もちろん、クラウディアス連合国のキラルディア代表も私が担当させてもらっています!」
するとヴェラルドは船のほうを一瞬見てから言った。
「ああそうそう、マダム・ダルジャンIIを直接お目になりたいかと思いまして港に案内いたしました。
この通り、この場所に停泊いたしました!」
そのドッグは、まさにVIP待遇と言わんばかりの作りであり、まずは収容サイズの広いこと、
まあ、マダム・ダルジャンIIはそこそこに大きい船のため、ある程度の大きさがないと停泊できないが。
そして、レッド・カーペットを模したレッドロード、赤いペンキで塗り建てた道できちんと舗装されていた。
さらに、搭乗口付近は周りとは違ってごみごみとしておらず、理路整然と綺麗になっていた。
「いやあ、我がキラルディアにはこれほどの船はありませんよ、本当に立派な船ですね!」
そんな待遇に何人かは愕然としており、船の所有者のリリアリスは苦笑いしていた。
そして、キラルディアのホテルへと案内された一行。
カイトとシエーナ、そしてガルヴィスとも一旦別れることにした。
そのホテルには会議場があり、リリアリスたちはそこへと促された。
そこにはキラルディアのお偉方が立って待っていた。
「クラウディアス様バンザイ! イングスティアの攻略の件、誠にありがとうございます!」
一番偉そうな人物がそう言うと、キラルディアの重鎮軍は一斉に礼をしていた、いや、そんな――リリアリスたちは謙遜していた。
「ところで、目的のものは回収されましたか?」
実際に一番偉い人、大総統代行はそう訊いてきた。
一番偉そうな雰囲気だった人物は大総統補佐官で、結構お年を召していたのだが、
大総統代行は腰の低そうなセールスマンという感じだった。
リリアリスは”ブリーズチャート”を会議卓の上に置いた。
「なるほど、これがそうですか、まさに伝承の通り――」
キラルディア重鎮軍は口々に言うと、リリアリスが話した。
「伝承では、キラルディアに伝えられたということね。」
そうなのか? するとヴェラルドが言った。
「みたいですね。
秘密の研究室の資料、早速クラウディアス様よりご提供いただいたエルフェドゥーナ語の対応表を使って読み解いてみましたが、
ドリームストーン・アイランド、つまりはここ、ドリストン大陸では珍しい鉱石がよく見つかるということで、
その謎の解明を賢者キラルディアがこの地に腰を置いて研究したのが始まりだそうです」
なんと、そうだったのか、だから珍しい石が見つかる?
「賢者キラルディアがキラルディアを開国したことについてはもちろんこの国にも伝わっています。
ですが、珍しい石が見つかること自体はそれだけが理由ではありません。
それはキラルディア自身が、ほかの国から珍しい石を持ち込んではエンブリアの研究を続けていったことが理由にあるそうです。
しかし、この度はまさかクラウディアス様が”ドラクーガの秘密の研究室”を見つけていただいたそうで、
それにエルフェドゥーナ語の情報まで提供いただいたことでさらにキラルディアの歴史が解明されることと思います!
本当にありがとうございました!」
キラルディア国務長官のメドーナはそう言った。賢者ドラクーガは賢者キラルディアの弟子にあたる存在らしく、
彼はキラルディアの意思を継いで研究を続けていたようだ。
そして、そのドラクーガこそが、”アリヴァール・メタル”をあの場所に安置した張本人らしい。
ちなみに、バルカネロの地下にあった残骸はやはりというべきか、ユーラルから持ち帰ったものだったらしい。
また、”ブリーズチャート”についても、賢者キラルディアによってこの地にもたらされものだったようだ。
「ということは今の話を聞く限りだと、このドリストン大陸はそもそもキラルディアの土地だったって解釈になるわね。」
リリアリスはそう言うと大総統代理は言った。
「……まあ、イングスティアについては今後次第ですのでともかく、ほかの国についてはとやかく言いませんよ、
すでに長らく国家として成立している国へ流石に返還せよとは言えません」
さらにクラフォードが言った。
「で、アガレウスの件についてだが――」
それに対してヴェラルドが答えた。
「ああ、それは本当に申し訳ございません、情報が不正確でして――。
正しくは既に認識いただいている通りのもので間違いないと思います。
ご指摘の通り、こちらとしては見ている以上の情報はイングスティアとの関係悪化もあり、なかなか確認できないのが実際のところでした」
それに対してルルーナが言った。
「頭を使うのも悪くないですよ。
それに、何故、アガレウスなのかについてははっきりとした答えが出ていませんし、
イングスティアの一部がいきなりそう言っただけなので、そうなると誰だって流石にお手上げです。
そんな要素があるのにおかしいだろなんて言ったところでどうしようもありませんよ、ねぇ?」
そうなだめられる様に言われると、ヴェラルドは答えた。
「ま、まあ、確かにその通りなんですが――」
「だったら気にすることないわよ。
この際だから詳しそうな人に聞いて答えを探しましょう。
その件はそれで終わり、いいでしょクラちゃん?」
リリアリスが得意げにそう言うと、クラフォードは冷や汗をかいていた。
「い、いや、俺は別にそこまで咎めたりするつもりはないんだが――いや、あの……わかった、悪かったよ……。
詳しそうな人って、やっぱりあのオヤジか……」