エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第3章 過去の清算

第62節 嵐のチャート、力の根源

 すると、クラフォードの炎魔法の合図を皮切りに、その場で激しい風の流れと雷鳴が。 邪悪な女、正体は流石にお分かりだろうその魔女様と魔女ルルーナ様は力を合わせて嵐を巻き起こそうとしていた。
 ……一つ疑問なのだが、こんな激しい”フェドライナ・ソーサー”を行使している存在がいて、”ブリーズチャート”って本当に必要なんだろうか?
「うふふっ、お前たちの力が如何に無力なのか思い知らせてやろう。 そう、これこそが本当の風の力よ!」
 邪悪な魔女様は強烈な乱気流を巻き起こし、そして、
「ふふっ、ついでに私の雷の力も味わいなさいな♪」
 魔女ルルーナ様は天から激しい雷を呼び起こし、2人で力を合わせてそのあたり一帯を荒らしていた。
「うわあああああ!」

 嵐が明けた。嵐という通り副次効果として雨も降ったがそれも止んでいた。 それによりイングスティアの連中については誰もがその場でダウンしていた。
 そして、その中で小さな女の子が一人現れると、落ちていたあの槍を手に取り目の前の邪悪な魔女様にそれを手渡した。
「あら、いい子じゃない。 ヨシヨシしてあげるからこっちにおいで――」
 その邪悪な魔女様は両手を広げてその子を迎えると、女の子は槍を抱えたまま魔女様に飛びついた。
「うふふっ、ヨシヨシ♪ さあさ、ここはクラウディアス連合軍に任せて私らはさっさと撤退しましょ。」
 そう言うと女の子は頷き、隣の魔女ルルーナもニコニコしながらその場から一緒に去って行った。

 魔女の2人は元の姿に戻っていた。 だが、カスミは今度はリリアリスではなく、何故かルルーナに抱っこしてヨシヨシしてもらっていた――。 そして町の外まで出てくると、そこにはフィリスとガルヴィスの姿が。
「よっ、あまりにも酷い嵐だったからここで待ってたよ」
「ヤレヤレ、ようやく終わったようだな、さっさと帰ろうぜ」
 2人の後ろには2台の車があった。片方は自分たちが乗ってきた車――エルガラシアの軍用車と、もう片方はキラルディアの軍用車だった。
「キラルディア? 誰か来たの?」
 フィリスが答えた。
「イングスティアで事が済んだからってすぐに駆けつけてきたよ、対応が早いねあの国。 まあ、じっと様子を見ているみたいだから嵐が止んだ途端に動いたんだろうけど。 で、私を見つけると車だけおいてって、そのままバルカネロへと向かって行ったよ」
 リリアリスは頷いた。
「OK. いい感じね。ということで、私らは引き上げるだけってことね。 そうと決まったらさっさとキラルディアに行きましょ。」
 それに対してルルーナが反応した。
「はーい♪ マダム・ダルジャンを遠隔操作しまーす♪  塔着地点をキラルディアの港へとセット♪  あっ、その前にタムオスの入り江に置いてきた小型ボートを回収するのが先ですねぇ――」
 つくづく高性能だな、船もこのお方も。

 車はエルガラシア軍用車には男性陣が、女性陣はキラルディア軍用車に搭乗した。
「先客が乗ってら。ご丁寧にシートベルトまでしてるな、お行儀がいいことで」
 男性陣のほう、そうクラフォードが言った。それは何かというと――
「てか、鉄鉱石かこれ? 鉱石にしては何かの破片という感じだが――」
 ティレックスはそう訊いた、先客は車の最後尾シートに括りつけられていた、乗せたのはガルヴィスである。 それについてはガルヴィスが答えた。
「ユーラルで俺とカイトが見たそれと同じような物体らしい。 ユーラルではこれの鉱床ではなく、これと同じように破片というか、 何かの残骸のようなものがあったんだが、どうやら今でもわからずじまいだな」
 クラフォードは訊いた。
「ん? 鉄かなんかじゃないのか? どう見ても鉄のようだが――」
 カイトが答えた。
「いや、これは合金だね、しかも強度は例によってかなりヤバイ代物だ。 覚えているかい? こいつの強度はリファリウス氏らの”兵器”でさえびくともしなかったヤバイやつだ。 それだけにそもそも加工が難しいレベルだ。 イングスティアはこれを見つけたはいいが、 残念ながらそんな特性がゆえにキラルディアへの進撃には至らなかったというのが実際のところなんだろう」
 秘密の坑道にあったものはこれだったのか、フィリスが見つけて確認してきたということらしいが――
「いや、これはバルカネロの地下にあったものだろう。 秘密の坑道にあったものはむしろ女性陣と一緒に乗っているほうだと思うよ」

 ということで、女性陣。
「確かにこれは”アリヴァール・メタル”と似たような性質の石ね。 しかも精霊石部分の力は高く保有されたままということは――”アリヴァール・メタル”の元々の状態とみて間違いないわね。」
 と、リリアリス。こちらも鉱石が先客としてすでに搭乗していた、乗せたのはフィリスである。
「恐らく”アリヴァール・メタル”で間違いないと思いますね、元々の状態がなんて呼ばれていたかについては別として。 大昔の状態の”アリヴァール・メタル”を切り出してここに持ってきたという感じではないでしょうか?」
 シエーナはそう言うとフィリスは頷いた。
「まさにそんな感じだった。 実は秘密の坑道の話だけど、あそこはどちらかというと秘密の研究室って感じだった」
 ほう、それは――リリアリスはニヤっとしていた……実に興味深い、といった面持ちである。
「つまりは研究資料みたいなものがあっていくつか調べている形跡はあったけど、 内容は全部エンブリアでは未解明のエルフェドゥーナ文字ばかりで諦められていて結局投棄されていたし。 で、問題の後ろの子なんだけど、ご丁寧に結界が張られていたからね。 フィールドに触れた感じ、内部の力を保つ働きがありそうだったから、 ”アリヴァール・メタル”みたく力が抜けたものじゃなくてちゃんと力を保有したものとして残存していたって感じね」
 フィールドは長らく力を持続するように仕掛けが施されてはいたが、何度か力を補充したような痕跡があった、 だが、フィールドの力は弱まっている状態だった、フィリスがそう続けてそう説明するとリリアリスは頷いた。
「前にも言ったとおりだけど、精霊石でも力が抜けたホロウ・ストーンの状態であれば加工しやすくなって今のエンブリアでも大流行するほどになるわけだけど、 同じ精霊石セラフ・ストーンが含まれるってなると加工が難しいから、 つまりはイングスティアはキラルディアからこれの所在を教えてもらったにもかかわらず、これを使って新兵器を作ることはできなかったってわけね。」
 すると、リリアリスはその子……鉱石を見て気が付いた、表面がきらりと光っている様を見て気が付いたようだった。
「おっと、これはまさか……! そうか、精霊石――私としたことがこんなことまで忘れていただなんて。 でも、これがアリヴァール島に……なるほど、そういうことだったのね、何となくだけど見えてきたわね。」
 なんだなんだ、何が見えたんだ。