エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第3章 過去の清算

第59節 流れの変化、不穏なる兆候

 議事堂正門付近がやたらと騒がしいため、兵隊たちは正門へと慌てて集まってきた。 だが、その数は20程度、想定人数よりも少ない数であるのはやはり――
「既に粗方片付けているからな、主にガルヴィスが。 つまりは出てきた連中は上の人間に近しい人物……いや、やはりこれは――」
 ティレックスはそう言うとカイトは頷いた。
「どうやら、想定通りの展開だったということらしい。 つまりは”してやられた”というわけだ……」
 ティレックスは頭を抱えていた。
「まあ、本当かどうかは答えが出てくるか。 どうやら面倒も起きたようだしそろそろ引くか」
「そうだね、ここは引いておこうか」
 ティレックスとカイトは顔を見合わせて互いに頷いた。

 クラフォードとルルーナも周りの状況を見て考えていた。
「これは……まさにルルーナさんの言った通りかもしれない。 リリアさんも想定していたことなんだろうか?」
 クラフォードは訊いた。
「してなかったと聞きましたね。 が、おそらく姉様のことですから正直”どっちでもいい”事だと思いますね♪」
 ルルーナに言われてクラフィードは頷いた。
「……確かにそれもそうだな。 それこそ主目的はあくまで”ブリーズチャート”、どっちでもいいといえばどっちでもいいか。 ただ、後処理はどっちに傾くかで全然違ってくる。 いずれにせよ、”ブリーズチャート”の奪取だけは前提だから後のことは後で考えればいいだけのことだしな」
 ルルーナは言い返した。
「どっちに倒れても結果は同じですよ?  だって、どっちにしたって上の人間はいずれも確保してしまったではないですか?  つまりどっちにしても責任者がいないので、どのみち終わりです。 だからそこへクラウディアス連合国が救いの手を差し伸べた時点でチェックメイトですよ。 当然、キラルディア国が主導で事に当たることにはなると思いますが」
 クラフォードは考え直した。
「確かに、どちらに転んでも一緒か。 手間で言えばむしろ、ルルーナさんが言った通りのほうが楽っちゃ楽ということぐらいか」
「ですよね! こんなに可愛くて賢い女、カノジョにしてみたくありません?」
 ……ルルーナはにっこりしながらそう言った。 やっぱりこの女、ほぼリリアリスだ……クラフォードはそう思いながら頭を抱えていた。 彼女が言っていることはほぼネタに近い発言……毛色こそ違うが、こういうところもそっくりである。
「それはそうと、なんか変なのが来たから巻き込まれないうちにずらかるぞ――」
 しかし、ルルーナはその争いの渦中のほうへと向かっていった。
「……そう言えばそうだったな」
 クラフォードはそう言い残して建物の3階へと上がっていった。

 3階に着くと、正門側の窓からシエーナが眺めていた。
「やっぱりここにいたのか――」
 クラフォードが訊くと彼女は答えた。
「あらクラフォードさん、ルルーナさんは?」
「ああ、見ての通りだ。あの女もよくやるよ、まったく――」
 クラフォードは外のほうを指さすと、そこにはルルーナが外に出てきた様子が見えた。
「あらまあ、ということはつまりそう言うことですね――」
 シエーナはそう言うと、クラフォードは女と対峙している兵隊たちを見ながら言った。 兵隊たちはボロボロの状態でひどい様相だった。
「流石にガルヴィスはいないよな?」
「そのハズです、おそらく敷地内にはいないと思いますね――」
 クラフォードは頷いた。
「だよな。ともかく、あの”槍”をとっとと回収したらミッション・コンプリートだが――」

 少し時を遡り、その邪悪な女と退治している兵隊たち。
「何よあんたたちは? あんたたちに用事はないのよ、おとなしくそこを退きなさい。 さもなくば……お前たちから奪ったこの力、お前たちに試して見ることにしようかしらん? ウフフッ……」
 と、女は槍を前に出してそう言った、何っ!? 奪ったってまさか……兵隊たちは狼狽えていた。
「なっ、何を言う! あれは我々のところでしかるべき場所に安置しているのだ! 奪えるハズなどない!」
 と、1人の偉そうな兵隊がそう言うと女は邪悪な笑みを浮かべて言った。
「あら、どうかしら? これを目の前にしてそう言えるのかしらん?」
 すると、女は槍を天高く掲げると、槍からものすごい風が巻き起こり、しまいにはあたり一帯を吹き飛ばす猛烈な風が!
「うわあああああ!」
 兵隊たちは何名か飛ばされると、女は風を収めた。
「うふふっ、これはほんの小手調べ。 さあ、事態がわかったのなら早くそこを退きなさいな♪」
 すると先ほどの兵隊ともう一人偉そうなのが女相手に構えながら話をしていた。
「どっ、どういうことだ!? 何故アレがあの女の手にあるのだ?  あれは間違いなくあそこにあるハズだが――」
「だがこの力は――」
 すると女はニヤっとしながら答えた。
「うふふっ、バカねぇ――あんたたちが大事にしていたところ悪いんだけどすり替えたのよ!  どうしてもというのなら確かめてご覧なさいな♪ ウフフフフッ……」
 すり替えただって!? どうやって!? 兵隊は訊いた。
「どうやって? フフッ、こうやったのよ!」
 女は再び槍を掲げると、偉そうなのが反応した。
「まっ、待った! わかった! おっ、おい! お前! 例の場所に安置されているブツを持ってくるのだ!」
 それに対して兵隊が反応した。
「えっ、でも――」
 偉そうなのが耳打ちした。
「たとえでっち上げであってもこの女を排除しなければならん。 いずれにせよ、ここまでの力を用いる以上、あのブツの力が必要なことは確実だ、だから早く持ってくるのだ!」
 はっ、直ちに! 兵隊は建物の中へとそそくさと入って行った。