一方でクラフォードとルルーナのカップルは――
「クラフォードさんってカノジョさんがいらっしゃるんですよね?」
はぁ? クラフォードはあっけにとられていた。
「ウィーニアさんって方がいらっしゃるんですよね! いつもいつも仲がよさそうではないですかぁ♪」
ルルーナは嬉しそうだった。頼むからその話題は辞めてくれ――クラフォードは敵出てこいと念じながらそう思っていた。
「それこそ、この間なんか敵に捕まる時、ウィーニアをかばったって聞きましたよ!
ステキですね! いいなぁ、私もそういう方とお付き合いしたいですねぇ♪」
クラフォードは冷や汗しか出なかった。
その話はロサピアーナとの戦いのときの話か――といってもクラフォードにとっては敵に捕らわれたときの記憶は全くなく、
その間何をされていたのだろうか、自分は何をしていたのだろうか、そして記憶があるのは助けられた後のことで、
その時の自分はベッドの上で、目の前にいたのは何故か5名ほどのプリズム族のお姉さんたち――嫌な予感しかしない、話題に触れてほしくなかったのだ。
で、プリズム族のお姉さんだが、今隣にいるこの女性その系統の血筋のお方……クラフォードは彼女と一緒に行くことを後悔していた。
「にしてもあまりにもずさんだな、どうしてこうも手薄なんだ!? なんでもいいから敵出て来いよ……」
クラフォードはイラつきながらそう言うとルルーナは言った。
「先ほどクラフォードさんがぶっ飛ばした2名様以来、しばらく見かけませんねぇ。
つまりはほとんどガルヴィスさんが現在進行形で返り討ちにしているのでしょう。
そんなことよりウィーニアとのこと、根掘り葉掘り訊かせてくださいな♪」
俺と彼女とはそんな間柄じゃない! クラフォードは腹を立ててそう言い切った。すると――
「ええー!? そうなんですー!? そっか……じゃあ、私にもチャンスがあるってわけかぁ♪」
と、ルルーナ……えっ、なんだって? クラフォードは耳を疑った。
「だって、カノジョさんはいらっしゃらないってことですよね?
ということはつまり、私がクラフォードさんのカノジョになる権利があるってことですよね?」
えっ、そっ、それは――クラフォードはたじろいでいた。
「私、絶賛恋人募集中なんで♪
それに、クラフォードさんみたいな仲間想いのイケメンさんだったら大歓迎ですよ♪」
この人……惜しげもなくストレートにそう言ってくるところといい、
そしてビジュアルといい、やっぱりリリアリスと似たようなものを感じたクラフォードだった。
いや、もう――これ……何度そう思ったことか。
そして……クラフォードは覚悟を決めた。
「わかったよ! 降参だ! そうだよ、俺とウィーニアはそういう仲だよ!
いわゆるデートってやつをしたのは初めの頃の2回程度で最近は全然していない、自衛団の仕事が忙しいもんだからな。
でも、だいたいいつも自衛団の仕事をしながらも一緒にいるわけだし、お互いにそれで良しとしているところもある。
そうだな……いつかはまたウィーニアとどこかに出かけたいなって考えてはいるけどな、それがいつになるかは……」
ルルーナはスマートフォンを眺めていた。
「いつになるかわからないけど、改めてデートしてプロポーズしたいってことでいいんですよね!
素敵! 私もウィーニアみたくそんな恋がしてみたいなぁ♪」
いや、そういうことでは――クラフォードは焦りながらそう言うとルルーナは楽しそうに言った。
「ふふっ、言わなくても私にはわかりますから安心してくださいね!
ちなみに今の発言は全部ウィーニアにきちんと伝えときましたから、もう後戻りはできませんよ♪」
なんだって!? クラフォードは焦っていた。
「だってウィーニアったら、クラフォードとは付き合っていたけど、最近はどうしようか悩んでいるっていうから……」
ウィーニアが悩んでいる? クラフォードは訊いた。
「クラフォードは優しくしてくれるけど、
彼の性格上、デートとかそこまで気にはしてくれないだろうし、
付き合っているんだからいいだろってはぐらかされるだろうから踏み込んで聞こうとするのも躊躇っちゃうし、
それに、いざ訊いたときにケンカになったり、そのままバッドエンドを迎えるのも嫌だから……
結局彼に合わせてこのまま気持ちを確かめないままいるのもありかなって言うもんだから……」
うっ――クラフォードはルルーナにそう言われて日頃の行いを反省していた。
反論したかったが相手はルルーナ、リリアリスとアリエーラ似の彼女にそう言われると返す言葉もなく、
ただただ心当たりしかないその言葉を真摯に受け止める以外にやりようがなかった。
「だから、私が代わりにクラフォードさんの気持ちを確かめてあげることにしたんですよ♪
私が訊いた方が衝突することもないだろうし、それこそ何かトラブルになることがあろうもんなら、
今度はリリアリス姉様がバックに控えていますからね♪」
そう、女性陣には彼女という名の奥の手が存在するのだ、何かあれば彼女からの試練が待ち構えているに違いない、
今後の動向にも差し障る可能性は十分にあり得る――ここは自分で言ったことに対してこのまま踏みとどまるのが正解だ、クラフォードはそう思った。
だって、自分が言ったことについては本当の気持ち、それにウィーニアのことを蔑ろにしていた自分も悪いし、
それをリリアリスに突かれようものならもはや弁明は不可能だ、無駄なところに労力を使うぐらいなら素直にしていれば間違いない……クラフォードはさらにそう思った。
それにしてもルルーナか、リリアリスとはまた違った路線のキャラではあるがこの人怖い……
リリアリスとはまた別のハズだが、彼女と同じような恐怖を感じたクラフォードはにっこりと佇んでいる彼女を見ながらそう思った。
今のやり取りだとリリアリスという虎の威を借る狐という感じだが、このビジュアルを考えると彼女自身が鉄槌を下してくる可能性が見えてきたクラフォード、
これは絶対に敵に回さないほうがいい――そう肌で感じ取った。
するとその時――
「あっ、ほら! クラフォードさんが騒ぎ立てるもんだから敵がやってきましたよ!」
ルルーナは敵のほうを指さしながらそう言った。
誰のせいだ、何故こんなタイミングで……それについては思うところがあったクラフォードだが今となればもはやどうでもいい、
クラフォードとルルーナは臨戦態勢を構えて迎え撃った。
「お願いですからおとなしくおねんねしていてくださいね♪」
ルルーナはそう言いながら剣を抜いた……そのセリフもヒュウガみたいだ、やはり彼との関係を思わせる存在であることは間違いなさそうだった。
それに抜いた剣も機械仕掛け染みた代物だがヒュウガが持っているゴテゴテの機械みたいな代物とは少々印象が違っているなんとも美しいデザインのもの――
とはいえ、やはりヒュウガとの関係を思わせる存在なのは確実だろう、ほぼ聞いた通りなのだが。