ティレックスたちは議事堂の内部へと侵入、
そこへアガレウスの兵隊が現れたがガルヴィスが一撃でねじ伏せ、事なきを得た。
「流石だな、”ネームレス”恐るべしか」
クラフォードは何それとなくそう言うとガルヴィスが反論した。
「ほざけ、この程度の敵に後れを取るようならそもそも侵入しようなんて考えねえだろ。
ともかく、内部がずいぶんと手薄なのはやっぱり連中のほとんどがあの茶番の余興に付き合っているからなんだろうな、
よくやるよ、あの女共――」
クラフォードは頷いた。
「悪かったよ、その通りだ。
だが、内部が手薄なことについては同感、つまりは茶番が終わったことで連中は持ち場へと戻ってくるだろう。
それに、今シメたやつを処理しておかないと面倒なことになる、早いところ隠そうぜ」
そう言うとガルヴィスはそいつを乱暴に扱い、適当な個室を探すとそこへ投げ飛ばして閉じ込めた。
それに対してティレックス……
「流石だな――ガルヴィス、恐るべしか……」
「力技がヤバすぎる。”ネームレス”の中でもこいつほどのやつはいないって訊いた気がするが、確かにこれは――」
クラフォードもガルヴィスの行為については愕然としていた。
だが、言ったことの趣旨については基本的に乱暴者ガルヴィスに対する皮肉である。
「やれやれ、こういうところは変わっていないね。
まあでも、彼の能力としては十分な要素――抵抗はあるけれど、せいぜい利用させてもらうとするか……」
カイトがそう言って締めた。するとガルヴィス、
「おら、なんだか知らんが無駄話してんじゃねえぞ」
と、背後でなんだかんだ言っているカイトたちに対してそう言った。
「だ、そうだ。殺されると悪いから気を付けようぜ」
クラフォードがそう言うとティレックスは頷いた。その一方で女子2人、
「それよりもどうするのでしょうね、リリア姉様は上のほう、合流する気があるのでしょうか?」
ルルーナはそう言うとシエーナが答えた。
「いえ、合流する気はないようです。
そもそもリリアさんのことですから、こうなったらだいたいいつものパターンですね。
ですからこちらはこちらで成すべきことをこなしましょう」
ルルーナは答えた。
「流石は姉さま、弟さんとは”見えるもの”が違いますね。
そういうことでしたら私たちがすべきことは重要人物の確保ですかね?」
シエーナは頷いた。
「ですね。
とにかく、このまま団体行動となると目立ってしまいます。
ですから早いところメンバーを展開しません?」
シエーナはそう言うとガルヴィスは頷いた。
「確かにそれもそうだな。
だったら俺は”迷子の女の子をめでていたお兄ちゃんたち”を返り討ちにする役でいいんだな?」
ティレックスも言った。
「じゃあ、俺はカイトと一緒に中のほうへと入って内部のほうの連中を片付ける役目だ」
「ははっ、お手柔らかに頼むよ」
カイトは笑いながらそう言った。
「じゃあ、私はリリアさんとフィリスさんと合流を試みます。後は頼みます」
シエーナがそう言うと、クラフォードは周囲を見ながら言った。
「ん、じゃあ俺は――あんたと一緒か……」
クラフォードはそう言うとルルーナはにっこりとしながら言った。
「ですね♪ よろしくお願いいたしますね、クラフォードさん♥」
うっ、頭が……クラフォードは嫌な予感しかしなかった、今朝見た例の夢……
一方でリリアリスはカスミと共に駆け回っていた。
「侵入を阻むトラップがあるくせに内部に関してはまったくもってザル同然ね。
”ミスト・スクリーン”一本で全部ごまかせるなんて。」
リリアリスは得意げに言うとカスミは頷いた。
「お姉ちゃんの魔力にかなうやついるわけない。
”ミスト・スクリーン”一本で全部ごまかせるの当然」
それもそうか、自分は”ネームレス”だもんな、リリアリスはそう思った。
「お姉ちゃんどこ行く?」
カスミはそう訊くとリリアリスは言った。
「キラルディアの話だと、古い情報通りなら議事堂の内部に”シークレットルーム”ってのがあるらしいのよ。
元々イングスティアの一部は昔のキラルディアの前身というところが支配していた場所らしく、
この議事堂があるところもそのうちの一つだったみたいね。
で、話だと議事堂の見取り図上じゃあどうしても入れない部屋があるらしく、
通称”シークレットルーム”、つまりそこに何かしらがあるらしいのよね。」
リリアリスはさらに続けて話した。
「ただ、問題はずいぶん前――キラルディアの初代大総統の時代に作られた建物ということで、
正確に”シークレットルーム”の場所も存在も噂程度でしか情報が残っていないことなのよね。
だからこちらとしては手当たり次第に探すしかないというか――」
そう言いながら立ち止ると、彼女は少し考えていた。
「ん、そっか、フィリスは地下からやってきているハズか。
ということは地下に行けってことになるわけだけど……」
リリアリスはおもむろに壁に手を当てて何かを確かめていた。
「確かにこの中からわずかな空気の流れを感じるわね……。
いきなりここで事を起こすと面倒だからなぁ……」
リリアリスは例の”兵器”を引き抜きながらそう言ったがすぐに片づけてしまった。
するとカスミが言った。
「お姉ちゃん、emilyのケース」
それに対してリリアリスは頷いた。
「そうね、そう言うことになりそうね。で、問題はどこに入り口があるかだけど――」
カスミは頷いた。
「お兄ちゃんたちと遊んでる時気になってた。多分あれ」
そういうとカスミはささっと走り出し、とあるところへと向かっていった。
リリアリスはカスミの後へとついていった。
「鋭いわよねえカスミんったら。ま、ここは全部任せましょ。」
リリアリスは得意げにそう言った。少なくともどういうことなのかだけは把握しているようだ。