エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第3章 過去の清算

第54節 地鋲の戒、風精の機転

 2人は物陰に隠れると……
「うえーい! 流石は名子役! 素晴らしい演技ねぇ!」
 と、リリアリスはカスミに対してハイタッチをしながらそう言うとカスミも――
「うえーい! 流石は名女優! 素晴らしい演技ねぇ!」
 リリアリスの言い方を真似し、ハイタッチしながらそう言った。そして、
「みんな侵入した?」
 カスミは訊くとリリアリスはカスミを改めて抱えた。
「ええ、あとは私たちだけね。さ、早いところさっさと合流しましょ。」
 この2人、相当にやばいよ。これがクラウディアスの力――
 そしてリリアリスはそのまま議事堂を囲っている柵を大ジャンプで乗り越えて入って行った。 毎度のことながら簡単だな。
「ところでお寿司、本当に食べたい」
「ええ、私も言ったそばから食べたくなったからお夕飯は確定ね。」
 カスミのテンションは上がった。

 リリアリスは着地しようと思った矢先、何かに気が付いて風魔法を駆使し、議事堂めがけて何かを放った!  風魔法で複雑に組み上げたロープのようである。
「うそやん――内部にあんな高度なデバイスつけてんのね、危うくひっかかるとこだったじゃんか――。」
 リリアリスはロープからぶら下がったままそう言った。
「でも、あの程度の罠かかるわけないお姉ちゃん」
 カスミは得意げにそう言うとリリアリスも得意げに言った。
「まあね、それはそうなんだけど。 となると、このまま下に着地するのは得策ではなさそうね。仕方がないから上に行きましょう。」
 と、リリアリスはそう言うと何やら魔法を展開し、自らの身を包みこんだ。
「なーんか、ここ最近やたらとこの魔法の出番が多いわね。まあ、しょうがないか――」
 その魔法は毎度お馴染みの”ミスト・スクリーン”、原理はともかく、自らの姿形をくらます魔法である。
「屋根のほう安全そう。私先行く」
 リリアリスは身体を大きく揺らしているとカスミはそう言いながらリリアリスの身体から思いっきり離脱、 空中で体勢を立て直すとそのままうまく屋根の上に着地した。
 それに続いてリリアリスもカスミの隣へと着地した。
「以前もロープを使うシーンがあったけど、あの時は実物だったかしら。 つまりはやっぱりいろいろと力を取り戻してきているってワケね。」
 リリアリスは自分の腕を確かめながら言うとカスミが言った。
「お姉ちゃん記憶取り戻す、私嬉しい」
 リリアリスはにっこりとして答えた。
「そうね、確かにいい感じね。 取り戻した分だけまた世界が広がるわけだし、そしたらカスミにいろんなことを教えてあげられるし。」
「楽しみ」
 カスミはワクワクしていた。

 一方で地上班――
「どう伝えようか悩んだもんだが流石に”ジャンパー・トラップ”に気が付いたようだな。 だが、そのせいで予定変更は否めない――」
 と、クラフォードが言った。リリアリスが警戒していた例のトラップのことである。
「一般的には”地雷”って呼ばれているあれだろ?  俺も昔、アレにひどい目にあったもんだ――」
 ティレックスはそう言うとクラフォードは頷いた。
「俺もだ。一番ひどかったのは炎魔法が仕掛けられていて爆発したときだ。あの時は流石に俺も死を覚悟したな」
「俺なんか雷魔法が仕掛けられていて―― あれは訓練のハズだったのに設置担当が設定値間違えていたせいで1か月近くベッドの上で過ごすことになったからな。 そのせいで実戦で相手にする前から見事にトラウマだよ――」
 ティレックスも体験談を語った。そんなにひどいトラップなのか――ガルヴィスは2人の話を聞いて愕然としていた。
「使い方によっては大地魔法を発動して地面ごとひっくり返し、生き埋めにするなんていうことも可能ですね。 このトラップは地面に与えた衝撃に比例して効力を高める罠ですので、 リリアさんクラスのとなると、最悪私たち諸共吹き飛ばしてしまう可能性もあるかもしれません――」
 と、ルルーナは説明した、普通に酷いこと語ってる……ガルヴィスはそう思った。
「あの女のパワーを使えば自分は愚か、俺ら――いや、この大陸ごとすべてを吹き飛ばすのも余裕――って冗談だが。」
 クラフォードは頷いた。
「今のエンブリアではそもそも倫理協定で使用しない国も多くなってきていることから最近では使わない国も増えていった、 そもそも製造しない方針になっているから拝めること自体が珍しい。 けど、アガレウスはまだ使用する方針なんだろうなきっと」
 クラフォードはさらに続けた。
「ウォンターはもともとそういう国だったな。 もっとも、倫理協定とかいうものとは縁遠い国だからそもそも”道徳的”とか、そういう言葉すらないんだろうな」
「そもそも昔はなんでもありだったって言われているからな――」
 ティレックスは呆れていた。