エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第3章 過去の清算

第51節 無茶苦茶な存在、敵の動き

 イングスティアの中心地バルカネロ付近に到着すると、一行は少し離れたところで車を置いて町へと向かった。町はなにやら物々しい雰囲気に包まれていた。
「アガレウスの兵士たちですかね、我が物顔で闊歩していますね――」
 ルルーナはそう言うとガルヴィスが言った。
「町は厳戒態勢のようだが町の入り口は特に警戒していないな」
 それもそのハズ、特に城塞のようなものがあるわけでもなし、入り口で出入りを制限している感じではなさそうだ。
「さあ、どうするんだ? フィリスさんは既に来ているんだろ?」
 クラフォードはそう言うとリリアリスは言った。
「みたいね、そこは話を合わせてある。私らは私らのことをしましょ。」
 それに対してティレックスは訊いた。
「気になったんだがフィリスさんが先に来ているってどういうこと?  話を聞いているとフィリスさんの移動が少し早いような……」
 それに対してシエーナが答えた。
「鉱物資源を運ぶ専用レーンが敷設されているそうです。 フィリスさんはそこからこっそりと侵入していると言っていました。 キラルディアから南東のほうにその作業場があるらしく、 随分前にキラルディア側によってイングスティアからの侵攻を恐れて爆破して道を塞いでいたようですが、 イングスティアはそれを改修してキラルディアへの進撃を考えているようですね」
 ということはキラルディアが危ないということか。
「てことはつまり、”ブリーズチャート”もキラルディア付近にあるんじゃあ……」
 ティレックスがそう言うとカイトが答えた。
「そう思うけれども、どうやらブツはバルカネロの主要部にあるようだ。 キラルディアなんてドリストンでは劣勢側だから、”ブリーズチャート”を使用するまでもないと考えている可能性が高いね」
 言われてみればそれもそうか、クラフォードとティレックスは考えた。
「あくまでイングスティア内で幅を利かせるために用いているということか」
 ティレックスはそう言うとリリアリスが答えた。
「むしろ、アガレウスがこれだけの大きな国を奪っているのだから、 イングスティアを奪還しようと考える者たちへの抑止というところでしょうね。」
 そしてクラフォードが追随。
「大きな国だからな、関連諸国がまず黙ってないだろう。 イングスティアと言えばティルエール公国との親交が厚い国だからな、 状況はメディアでしか見れてないが、アガレウス軍とは徹底抗戦すると表明していたらしいな」
 ティルエール公国? ティレックスは訊いた。
「ランブーノ男爵が治めている国だそうよ。国の規模はアルディアスの大体半分ぐらい。 実態は民主国家とさほど変わりないらしく、ティルエダル山脈とかティルエッテル水源のあるディルウィール湿原とかが有名だそうよ。」
 と、リリアリスが言った。なんだよ、案外詳しいじゃないか……クラフォードはそう思うと、気が付いた。
「なるほど、詳しい理由はティルエッテル水源のせいだな」
「ふふっ、そろそろ流石に気が付いたわね、その通りよ。」
 どういうことだよ、ガルヴィスが訊くとティレックスが答えた。
「なるほど、ティルエッテルってティルエール公国にあるのか。 ティルエッテル水源から湧き出る水、通称”ティル・エーテル”は純度の高い水としても有名で、 主にエンチャント産業で用いられる水としては有名な代物だからかな?」
 クラフォードは首を振った。
「当たらずしも遠からず、正解はそれに関連する株のほうだろ?」
 リリアリスはニヤっとしていた。
「ええ、そうよ。 あんた、最近私の行動パターンをよく把握しているわよね、私に気があるのかしら?」
 クラフォードは淡々と答えた。
「ああ、なんといっても難解な思考回路の持ち主だからな、 次の行動を把握しておかないと絶対に話についていけないことは間違いない。 クラウディアスの特別執行官というのはいつも相当の無茶をしでかす仕事らしいから、 こちらとしても予め情報を得ておくべきかと思ったまでだ」
 確かに! ティレックスは大いに納得した。
「ルダトーラとしても一番の懸念材料はクラウディアスの特別執行官様の無茶苦茶な注文と当人の行動だからな。 リリアさんには極力無茶なことをさせないようにとアリエーラさんからも強く言われているから、まあ当然と言えば当然だな」
 それに対してほかのメンバーが大笑いしていた。
「あっははは! 言われちゃったね! リリアリス女史!」
 カイトは意地悪そうに言った。
「フッ、せいぜい周りに迷惑をかけないことだ」
 ガルヴィスも意地悪そうに言った、だが――
「オメーが言うな!」
 ルルーナは明後日の方向を向いてそう放っていた。シエーナはそんな彼女とガルヴィスに対して遠い目をしていた。

 バルカネロの町へと侵入した。 町は団地のようなコンクリート造りの街並みで、なんだか誇りかぶったような建物だらけだった。 兵隊とすれ違いはするも特段怪しまれることはなく、そのまま通過していった。
 するとリリアリスはピタリとその場で止まった。
「そういえばさ、フィリスにカスミんをつけたんだっけ。」
 フィリスにはカスミと同行させていたのである。それがどうかしたかとクラフォードは訊くと、リリアリスはその場でいきなり飛び上がった。
「おい! ちょっと! いきなりどこに行くんだ!」
 ガルヴィスは周りを気にしてそれほど大きくない声を上げて怒っていた。 するとリリアリスがその場へと戻ってきた。だが、その左腕には――
「お姉ちゃん……会いたかった」
 なんと、カスミを抱えて戻ってきたではないか。
「まあ! なんて可愛い子がこんなところにいるのよ! おねーさん超嬉しい!」
「私も超嬉しい。お姉ちゃんに会いたかった」
 じゃなくて。なんでカスミがいるんだよ――いや、フィリスと一緒に行ったのはわかるんだが。