帰りはルルーナの操縦でクラウディアスへと戻ることにした一行、
にしてもこのルルーナという女性、船の操作がうまいもんだ、クラフォードはそう思った。
それはそうだ、だって何を隠そう――
「ルルーナお姉様! クラウディアスから通信です!」
ユーシェリアはそう言って彼女に促した。すると、
「はいはーい♪ 誰かなー?」
ルルーナはスイッチを押すとそこにはガルヴィスの姿が。
「ん? 誰だ? でも見たような気がするからいいか。そっちはどうなってる?」
それに対してルルーナは楽しそうに状況を話していた。
「そんなことより、そっちのほうはどうなっていますかー?」
「どうって別に、なんも変わっちゃいねぇぞ。
どうも次の風の槍とやらのアテもあるみたいだし、ただ待っているしかねえしな」
それに対してルルーナは楽しそうに言った。
「そうなんですね! やっぱりガルヴィスさんって暇人さんなんですね!」
そう言われたガルヴィスは顔をしかめた。
「あん? なんだとテメェ、もう一度言ってみやがれ……」
それに対してルルーナは楽しそうにリアクションをする。
「わーん! 怖いですー! ということで通信切りまーす♪」
それに対してガルヴィスが慌てた様子で――
「なっ!? おい待て! 話すことがまだ――」
だが、ルルーナは一方的に通信を切ってしまった。
するとルルーナは愚痴をこぼすかのように言った。
「ったく、ガルヴィスのオバカサンと話なんかしたってしょうがないでしょ。
大体なんですか、この間だって……」
その様子を見ていたクラフォードは冷や汗をかいていた。
この間のガルヴィス、彼女がこぼしていた内容はまさにセラフィック・ランドとの連携協定の際の話題のことだった。
その件についてはクラフォードの耳にも入っており、ガルヴィスについては言わんとしていることはわからんでもないが、
それでもちょっと引くようなエピソードだった。
彼は直球すぎるのだ、悪いことではないがあまりに直球に物事を言うのも……
だが、話題についてモヤモヤしていたガルヴィスに対してはヒュウガがなだめるように話をしており、
クラフォードもその際に話に参加していた。
しかし、その際もド直球なガルヴィスに対してヒュウガももはや手が付けられず、クラフォードも頭を抱える結果となっていた、
これじゃあまだリファリウスやリリアリスのほうが数倍マシじゃないか……そう思わざるを得なかった。
そのことについては既にお姉さんも体験済か……クラフォードはそう思った。
「あんたも苦労しているんだな」
クラフォードがそう声をかけるとルルーナは答えた。
「悪い人ではないんですけど、なんか顔を見るのもイヤですね」
ガルヴィスは、どうやらアリエーラさんとリリアリスの2大美女を足して2で割ったような感じのこの美女に嫌われたようだ。
「腹が立ってきたので私も人魚姫になろっと♪」
するとルルーナは勢いよく海の中に飛び込んだ!
「……えっ!?」
クラフォードはいきなりのことだったので驚いていた。
「わぁ♪ ルルーナお姉様いいなー♪ 私にも人魚姫になる方法教えて!」
するとユーシェリアも海の中へとダイブ!
「おい! 待て待て! 誰が操縦するんだ!」
クラフォードは慌ててそう言うとルルーナは呆れたように答えた。
「自動操縦に決まっているでしょう?
まったく変な人ですねクラフォードさんってば、今更ですよ?
ちゃんと覚えといてくださいねー♪ ユーシィちゃん、あっちに行こ♪」
「はーい♪ お姉様ー♪」
クラフォードはがっくりと肩を落としていた。
「そうだったな、今更だったな。ったくあの女、やっぱり見た目通りか――」
見た目通り、つまりはリリアリスの印象通りということである。
彼女の下半身にはやはり人魚のごとき美しい尾びれがついており、ユーシェリアと共にどこかへと消えていった。
「あの女は人魚泳ぎを誰から教わったんだろうか、それもやっぱり見た目通りということか」
ティレックスは戻ってきた。
「海に飛び出したみたいだな」
そこへクラフォードはティレックスにルルーナのことを訊ねた。
「えっ、ええっとその――なんていうか、はっきり言うと俺もまだ理解が追い付いていないところだ。
そういうこともあって詳細はまだ聞けていない――いや、聞く気すら起こらないな」
どういうことだ、クラフォードは訊いた。
「悪いが言葉の通りだ、言いたくないわけじゃないけど俺の理解を超えている存在だからどう表現したらいいのかわからないんだ」
ティレックスは呆れ気味に言った。
なんていうか、とにかく複雑と思ったクラフォード、訊き方を変えた。
「俺らとどう関わっている人なのかというレベルでいい」
ティレックスは悩みながら言った。
「簡単に言えば一応仲間、ヒュウガのお姉さんって言ったろ? だから”ネームレス”なのは間違いない。
それに――以前、お前も彼女に助けられている、ロサピアーナの件で……な」
クラフォードの黒歴史――当人は当時のことについてはまったく覚えていないのだが、
とにかく黒歴史レベルのヤバイような気しかしない――あれはまた嫌な予感しかしないトラウマそのものだった。
でも、その件に彼女が関わっていたのかとクラフォードは思った。
「つまりは恩人ってわけか、そういうことならきちんと礼を言っておかないとだな」
ティレックスは首を振った。
「いや、そこまでは――まあいいか……好きにすればいいかな」
クラフォードは言った。
「ヒュウガのお姉さんを言っていたが、リリアリスさんとアリエーラさんを足して2で割ったようなルックスだな」
「あれ、聞いてない? ヒュウガはそもそもリリアリスさんとは親戚関係らしいぞ、
”ネームレス”だからそう”かもしれない”って話だけど。だからまあ、”そういうこと”なのかもしれないぞ」
クラフォードは悩みながら言った。
「なるほど、天は二物を与えなかったってことか」
「ほんとそれ」
ほんとそれ。
「それはそうと、オリのやつはどうしたんだ?」
クラフォードはそう訊くとティレックスは呆れながら言った。
「オリはプレイルームで寝てるよ。
疲れたんだろ、リリアさんの手伝いをするって言ってずっと付きっ切りだったからな。
あの人の動きについていくなんてどうかしてるよ、あいつ――」
「そりゃあ疲れるよな」