それから数時間後、何か異変を感じたユーシェリア、操舵室に赴くと、その異変の原因が分かった。
「アンカーに何か引っかかってるみたい、これは――戻ってきたみたいだね! しゃあない、回収してやるか!」
そう得意げに言いながら彼女はアンカーのスイッチを押し、アンカーの巻取りを行っていた。すると、
「みんな、おかえりなさい!」
男性陣が一度に浮上してきた。
「ねーねーみんな、どうだった?」
どうだったもなにも、まだ海面に出てきただけなのだが。
だから、そんなことはいいから早く船に乗せてくれ……ティレックスがそう言うとユーシェリアは照れた様子で言った。
「あっ、それもそうだねぇ! さあみんな、早く上がりなよ!」
いや、何故だか知らないが絶対にわざとやっている気がする。
これはリリアリスのアレとそっくりだ、クラフォードとティレックスはそう思い、お互いに顔を合わせていた。
そしてティレックスは目的のブツを差し出して言った。
「これがそうらしい、まさかのマグマだまりから採取したものだ。
凝縮してこんなエンチャント・ストーンに加工するだなんてとんでもない能力を持っているよ、あの人たちは――」
リリアリス姉様とアリエーラお姉様か、ユーシェリアは思った。
「んで、リリア姉様とアリお姉様は?」
ユーシェリアは訊くとクラフォードが答えた。
「もう少しだけ要るみたいだから先に戻ってろと言われた。
行きと同じ、帰りも自力で泳いでくるんだとさ、ったく、とんでもない人魚だな」
人魚? ユーシェリアは話を聞くと、その人魚について詳細が知りたくなってきた。
私にも教えてくれ、アリエーラ人魚様のことを。
それはそうと、そう言えばとある御仁の姿が見当たらないのは一体どうしたことか、クラフォードは訊いた。
「なあ、ところでヒュウガはどうしたんだ?」
それについてユーシェリアは楽しそうに答えた。
「私、知らなーい♪」
なんでだよ、クラフォードは答えた。だがその時――
「あら! 皆さんお帰りですね!」
と、ユーシェリアの後ろから見慣れぬ女性の姿が――
「なっ!? えっ、誰!?」
クラフォードは驚いていた。その女性を見たティレックスは頭を抱え、ぼそっと言った。
「またか……まあいいや、好きにさせておこう」
それに対してその女性はティレックスに訊いた。
「あーれー? ティレックス君どうしたのかなー?」
だが、ティレックスは何も言わずにそのままどこかへと行ってしまった。
「いや、じゃなくて誰だ? 俺たちのことを知っているようだが――」
クラフォードはその女性にズバリそう聞いた。すると――
「誰だなんて失礼な方ですね、そう思ったらまずは自分から名乗るもんですよ♪」
それはそうなんだが、それ以前に見知らぬ者が他人の船に勝手に乗り込んでいるのはいかがなものかと――
クラフォードはそのようなことを言いながら自分のことを話した。
すると、
「あら! 確かに言われてみればそうですね! それはそれはすみませんでした!
でも、この船はクラフォードさんのものではありませんよね?」
それもそうなんだが――というかなんだか妙に手ごわそうな女だ、クラフォードはそう肌で感じた。
女性のルックスはどことなくアリエーラさんのようで、彼女のような控えめで物腰柔らかな印象を受けるのだが、
ふと見るとあのリリアリスを想起させる見た目ともいえるような気がしなくもない。
というか、しゃべった感じがどことなくリリアリスっぽいような感じもあり、なんだか土足感が半端なかった。
「まあいいです、私の名前はルルーナです! 以後、お見知りおきを、クラフォードさん!」
それに対してオリエンネストが反応した。
「ルルーナさん! お久しぶりです! ヒュウガ君は帰っちゃったんですね!」
は? あいつは帰った!? クラフォードは耳を疑った。
「そうなんです、フェニックシアのことがあるからあとはよろしくって言って私に押し付けて行ったんですよー」
ああ、フェニックシアか……すでに前途多難が想定される浮遊大陸の件――クラフォードはそう思った。
「で、ルルーナさんと言ったか、あんた何者だ?」
それに対してルルーナは笑顔全開で答えた。
「私はヒュウガのお姉ちゃんです♪」
ヒュウガの姉!? クラフォードは驚いていた。