エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第37節 海の底に眠りし炎の力、脅威の女

 リリアリスは飛び込んできたオリエンネストの存在に気が付いた。
「あら、来てくれたのね。」
 リリアリスはオリエンネストに風魔法を使用、オリエンネストは水中呼吸ができるようになった。
「リリアさん! すっごく便利な能力ですね! しかも水の中でしゃべられるんだ――」
「ええ、人魚の足ついているだけで息できるわけじゃあないしね。 それよりもとにかく一旦洞窟から出るわよ、サメみたいなのしかいないから。 肉が分厚くて食べごたえはありそうだけど返って食べづらそうだから鯛でも採りましょ。」
「ストーム・シーブリームだね! わかった!」
 なんだか仲がよさそうだった。リリアリスとオリエンネスト、不思議な組み合わせである。

 一方でクラフォードとティレックスはアリエーラさんの魔法の力を借り、 リリアリスらが行った方向とは反対の方向、つまりは洞窟の奥のほうをじっと様子を見ていた。
「あの2人、入り口のほうに向かったようだな。 さっきのサメの群れを考えると、この洞窟はあんなのしかいないのか。 にしても、洞窟全体を通して水の中を進んでいくことになりそうな雰囲気だな。 むしろ懸念していたことが便利な能力使いのおかげで障害にはならなそうだ。 できれば泳ぐ能力のほうも何とかしてもらいたかったが流石にそれは――」
「すみませんがそれは流石にムリですね。水魔法で押し出す程度のことはできそうですが――」
 アリエーラさんは申し訳なさそうに言うとティレックスが言った。
「それはそれで助かりそうだが泳ぐときにバランスを崩しそうだ」
 クラフォードは考えながら言った。
「崩したって水中呼吸できるんだからその点では問題なさそうだが、それでもそこまで世話になりすぎるのもな。 一番の問題はパワーストーンがどんな状態で置いてあるかだが、 レイゲン洞のロックイーターのような感じにいてくれるのは勘弁してほしいところだ」
「リリアさんいるんだから大丈夫だろ、この間海の中でライトニングを締めてたからな」
「ドラゴンを締めたとも聞いているぞ。まったく、どうなってんだあの女……」
 ティレックス、クラフォードが呆れ気味にそう言うとアリエーラさんは再び苦笑いしていた。 ライトニングはドレッドノート・イエローテール・ライトニング、 ドラゴンはテンペスト・ドラゴンブリーム、 それぞれエンブリアの海に生息している鰤と鯛の巨大魚のことである。

 ということで、リリアリスとオリエンネストはストーム・シーブリームを捕まえて戻ってくると、それを火であぶっていた。
「またずいぶんと贅沢な野営食だな、確かにこのあたりじゃあ鯛が有名だが、こんなところまで来て食えるとは思わなかったぞ」
 と、クラフォードは嬉しそうに言った。さらに話を続けた。
「そうそう、この少し先の様子を見に行ったんだが、水温がだんだん温かくなってくるぞ」
 リリアリスは頷いた。
「海底火山ね。 実際にマグマだまりがあるのはもっと下のほうみたいだけど、問題のブツがどこにあるのか気になるところね――」
 ティレックスは考えていた。
「ただ、大いなる炎の力の石っていうぐらいだから、少なくともマグマだまりがある近くまではいかないとダメなんじゃないか?」
「確かに、ちょっとアツそうね――」
「ちょっとじゃすまないだろ、丸焼けだ。 海の中を行く能力よろしく、炎の中を行く能力のほうはぜひお願いしたいところだ」
「はぁ? そんな都合のいい能力があると思って言ってる?」
「もちろんだ、全部いい感じに都合よくやってきているからな。 まさか、流石にノーとは言わないだろうな?」
 するとリリアリスは得意げに言った。
「しょうがないわね、欲しがりなクラちゃんのためにお姉さん一肌脱いじゃおうかしらね。」
 やっぱり何かやるのか、クラフォードは呆れつつもやることについては期待していた。

 一方で海の上、場所を変えてヒュウガとユーシェリアは話をしていた。
「うふふっ、ヒュウガさんってやっぱりおにーちゃんみたいな人だなー♪」
「おにーちゃんっつったらリファのことじゃないのか」
「うん、リファリウスさんもおにーちゃんだけど、やっぱりちょっと違うかな……」
 ヒュウガは頷いた。
「やっぱりそういうことだよな、それはそうか。 でも、俺はおにーちゃんって柄じゃないぞ」
「そんなことない! おにーちゃんはおにーちゃんだよ! 今まで結構面倒見てくれたし!」
「いや、面倒見たってほどでは……。第一、俺はそこまで慣れ親しんでいたわけでもないし――」
「でも、男の人ってそういうもんじゃない?  私は、距離感的にもちょうどよかったと思うんだけどなー?」
「そう思うか?」
「思う思う! それに、困ったときにはいろいろと助けてくれるし、 教えてほしいって言った時もいろいろ教えてくれたでしょ?」
「ああ、そうだったな――」
「ふふっ、嬉しいなぁ、リリアお姉ちゃんとヒュウガお兄ちゃん――私、幸せ者だぁ――」
 と、ユーシェリアは寝そべって言うと起き上がってヒュウガに訊いた。
「そういえばヒュウガお兄様とリリアお姉様ってどんな関係? 恋人?」
 ヒュウガはあっさりと否定した。
「いや、俺にとってもリリアリスはむしろ”お姉様”だ。 なんだか知らんがそれは肌で感じる、あいつは俺との血のつながりを感じる――」
 血のつながりか、言われてみれば確かにユーシェリアはそんな印象を受けた。
「確かにお兄様ってお姉様とどこかしら似ているもんね。 面倒見もいいし、変わった人だけど私は大好きだよ!  だから本当にありがとう! これからもよろしくね!」
 そう言われてヒュウガは照れていた。
「そう言われるとは思わなかった。てか、そんなに似てるか?  まあいい、ありがたいと思ってくれれば俺も今までいろいろとやってきた甲斐があるってもんだ」
 ところが――
「んー、でも、そんないろいろって言うほどやってもらったかなー?」
 それに対し、
「一応恩人の一人なんだろ、やってもらったことをきちんと覚えとけ」
 と、ヒュウガが言うとユーシェリアは楽しそうに言った。
「わぁー! やっぱりお姉様そっくりだぁ! なんか嬉しい!」
 そう言われたヒュウガは頭を抱えていた、何故嬉しい?