ある日のこと、リリアリスはなんと、とんでもない恰好をしていた。
その姿は下着姿――そう、例のミスリル繊維の服装一つで会議室に鎮座していた。
下着姿であることは間違いないとはいえ露骨にそう見えるわけではないのがまだマシなほうだが、
その印象は何となく”軽そうな女”という感じの露出強め、かつ大きなバストサイズが形成するそれと、長くて綺麗な御御足を披露していた。
いや待てよ、まさか――
「おい、まさかだが、その格好でこれから海の中に行こうってんじゃないだろうな?」
ガルヴィスはそう言うとリリアリスが答えた。
「何よ、わざわざこんな格好してどこに行くっていうのよ、ほかにあるわけないでしょ。」
マジか……ガルヴィスは呆れていた。
そんな中、女性陣はそんなリリアリスの姿に賞賛していた。
「流石は姉さま! とってもセクシーですね!」
フラウディアがそう言うとリリアリスは得意げだった。
フロレンティーナさんも楽しそうに言った。
「まったく、あの服装の中にこんなものを隠し持っているだなんて反則じゃない♪」
「ま、女の標準装備だからわざわざ見せるほどのもんでもないしね♪」
やはりリリアリスは得意げだった。
そうだった、リリアリスは女だった――男性陣の何人かは改めて認識していた。
だからと言って別に何がどうということはないが、
「おい、そこの野郎共、心の声が聞こえているってば……」
リリアリスがそう言うと男どもはわざとらしく驚いていた。
「で、それで”魔の乱域”付近でその格好をすればいいと思うんだが、なんで既に着替えているんだ?」
クラフォードはそう言うとリリアリスは答えた。
「ここでも十分”魔の乱域”付近でしょ。つまりは文字通り、ここから直接”魔の乱域”海底洞窟へと向かうつもりよ。
ヒー様の捜索ですでに海底洞窟らしきものがあることは確認済みだから、あとは直接行って確かめるだけよ。」
発想が斜め上すぎる、直接ここから行くって――
「本当はこっそりいくつもりだったけど例によって素材回収班も用意したいからそういうわけにもいかなくってね。
とりあえず、私とアリとで一緒に行くから、ほかは何とかして行くことを考えてもらえると助かる。」
えっ、アリとって――アリエーラさん!?
「はい! 私たちにお任せください!」
なんと! アリエーラさんまでリリアリス同様にあの麗しのボディを披露しているというではないか! それは一目拝んでみたい!
「いや、絶対にそれ、おかしいから――」
ヒュウガは頭を抱えていた。
そして2人が退場すると、残された面々は悩んでいた。
「で、あの2人の人魚姫は行っちまったけど、本当に行くのかよ?」
クラフォードはそう言うとガルヴィスがヒュウガに訊いた。
「てか、リファリウスはどうした? ヤツも行ったのか?」
ヒュウガは首を振っていた。
「いや、あいつはフェニックシアに行く準備のほうを進めている。
あいつは水の中はNGだからな、今回についてはノータッチだ」
ヒュウガはさらに続けた。
「行くんだったら早くいこうぜ、潜水強者のメンバーでな。
もちろん今回”魔の乱域”に行くってことで船のほうにも手を入れておいた。
でも海流の激しいところなのは変わらないからな、その点は意識して名乗り出てほしいところだ」
簡単に言うが誰が行くんだ、ガルヴィスは呆れていたが――
「みんなで反対するもんだから言わなかったけど、俺、潜水も泳ぎも自信があるほうなんだ。
だから俺も行こうかな――」
と、ティレックスは手を挙げていた。それに対してヒュウガは頷いていた。
「そうだったな、ずいぶん前に海難救助の時に手伝ってもらったもんな。で、ほかは?」
すると、何人かが次々と手を挙げていた。その様にガルヴィスは驚いていた。
それもそのハズ、今まで否定していたハズのクラフォードも手を挙げていたからだ。
「そのあたりの準備が進んでいるってことなら後は潜って泳ぐだけってことになるわけだな、それなら話は早い」
ヒュウガはガルヴィスに訊いた。
「お前、泳げないんだっけ」
「いや、ただ素潜りは苦手なんだ――」
ガルヴィスは頭を抱えていた。
さっそく”魔の乱域”へと出港、海は荒れていた。
だが、マダム・ダルジャンはそれをものともせずに乱域の中央へと停泊した。
「すげえシステム、こんなんでよくも船のバランスを保っているもんだ」
クラフォードは改めてそう言って感心していた。
「心行くまで褒めちぎってくれたっていいんだぞ」
ヒュウガのこういうところは本当にリファリウスとそっくりだ、クラフォードはそう思って呆れていた。
「なんでもいいけど早く行こうよ! リリアさんとアリエーラさんが待ってるし!」
オリエンネストはそう言うとティレックスは考えた。
「絶対に待っているわけないな、あの2人のことだからさっさと行っているに違いないし」
だが、遅ければ遅いで間違いなく殺されるからさっさと行くことにした。
ヒュウガは船からアンカーを垂らすと、そのアンカーを伝って最初にディスティア様が飛び出し、
ほかの男性陣もそれに続いていった。
そして船の上、ヒュウガとユーシェリアの2人は適当にくつろいでいた。
「行かなくてよかったのか?」
「うん、力仕事だしね。ティレックスを迎えてあげたいんだ♪」
「なるほど、ティレックスは幸せ者だな」
「えへへ♪」