エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第16節 険しき地を乗り越える力、金剛なる魔物

 そして、一行はレイゲン洞の中へと入った。そこには神秘的な光景が――
「わぁー! すごーい! キレイ!」
「すごいすごい! 世の中にこんな場所があるなんて!」
 ユーシェリアとフラウディアは興奮していた。
 天井から漏れ出ている光が洞窟の中を照らし出しており、 洞窟の底のほうに広がる湖をキラキラと輝かせていたのである。
「これはまた――」
「すごいな、まさにこの世のものとは思えない……」
 ヒュウガとティレックスは絶句していた。
「すごくいい場所ね。 これでパワースポットって言われたらまさにその通りって感じよね――」
「だね。 こういうことならもっと何人か連れてくるべきだったなぁ……」
 フロレンティーナさんとリファリウスはそう言った。 すると、ヒュウガは精神値計を取り出して言った。
「そこの精霊、ここがパワースポットたらしめる要素はわかったか?」
 そこの精霊と言われてリファリウスは答えた。
「ああ、バッチリだ。中に入る前からわかっていたけど、中に入った途端に力の流出がすごいね。 確かに奥のほうからかなりの力を感じるよ。 しかも場所の高さで言えばやや上のほうだ、入り組んだ地形ということで考えれば確かに跳躍力は必須のようだ。」
 すると、ヒュウガは精神値計がたたき出した値を見せながら言った。
「同意見だな。ちなみにこっちも入り口の段階で通常の6~7倍ほどの値を検出している。 数歩歩いた先はカウンターストップ必至だな、問題のモノ付近じゃあ1桁増やす程度じゃあ足りないかもしれない」
 相当のパワーを発する物体が奥にあるということらしい。 ということは、それが絶大な力を秘めたエンチャント・ストーンかもしれないということか。

 ということで、その話題を引っ提げて一路クラウディアスへと舞い戻ると、人選をしなおして再度レイゲン洞へと戻ってきた。
「で、何故一度戻ってきたって? そろそろその理由を話してもらおうか?」
 ガルヴィスはつっけんどんにそう訊くとクラフォードが言った。
「この力場は――確かにここにいるモンスターはかなり危険なやつがいるかもしれないってわけか」
 ガルヴィスは呆れながら言った。
「はぁ? おい、まさかそれだけの理由で退散してきたわけじゃあねえだろうな?」
 ディスティア様が諭すように言った。
「いや、むしろ極めて重要な理由と踏みました。 それこそ、アンブラシアへの回帰を果たすための代物と考えればそうあってしかるべきという感じですね。 ”ネームレス”たちがアンブラシアの住人ということであれば、ここにいるのは”ネームレス”にとってはごくありふれた地元獣、 つまり、”ネームレス”でも一定の労力を伴う獣たちがいても不思議ではないということですね?」
 リファリウスは頷いた。
「まあ、でもここの獣はみんな静かだ。 縄張りを侵さなければその限りではないかもしれないけれども、外に出て面倒ごとを起こそうっていう感じではないのが不幸中の幸いだ。 ったく、私としてもいきなり穴をあけたのは迂闊だったよ。」
 ヒュウガは投げ捨てるように言った。
「まったくだ、次からは気をつけろよ」

 あたりの魔物は静かだった。 どの魔物も水棲生物のような印象の魔物で、以前は海の生物であることを物語っていた。 確かに、いざ戦いになると個体能力の高さゆえに面倒こそするが、 群れで襲ってくるわけでもなく案外静かなもんだった。 場所の都合、特段敵となる相手がいるわけでもなし、襲撃するという意識の薄い魔物ばかりなのかもしれない。
 そして、なんとか最深部へとたどり着いた。だが――
「上にあるっていったが、この上か? どうやって行くんだよ?」
 まさに20メートルほどの高低差のある崖の上にそれらしいものがあるという話、やはり跳躍力なしでは上がれそうもない。 そして、20メートルという通り、一行は既に海面よりも低いところにいるのである。 正確にはわからないが、海面よりも低いところでは最深45メートルぐらいはあるようだ。
 そして、跳躍力と言えばリファリウスの出番ということになりそうだがその前に――
「なあ、逆に上から穴を掘ってこの上にたどり着くっていう発想はなかったのかよ」
 ガルヴィスはそう言うとリファリウスは答えた。
「いくら私の武器が”兵器”って言われているからってそれは流石に無茶だよ。 厳密にどれぐらい分厚いのかはわからないけれどもこの上は非常に頑丈な岩盤があって、掘るぐらいならこうして行ける道から行くのが適当と考えられる。 流石に岩を10数メートルも人力で掘り進んでいくのは世界を破壊しようということでもない限りはかなりキツイ所業になりそうだ」
 そんなオーバーな。いずれにしても前途多難、それでも意を決していくしかなさそうだ。

 各々、思い思いに足場をゆっくりと探しながら上へと登って行った。 足場を探しながら少しずつ上へと登って行く者、 だが、特筆すべきは意外と岩壁にしがみついて登坂して行く者が多いことだ。
「これぐらいはお手の物だな。 足場の少ない場所ってことはとんでもない跳躍力かよじ登っていくかのどちらかだ」
 と、クラフォードが言うと、上のほうから突然ロープが垂れ下がってきた。
「そこから続きはこれでも使いなよ。」
 リファリウスとハイドラの2人が上から頭を出してそう言っていた。
「使いなよじゃねえ。すでに着いてるんだったらいいじゃねえかよ、2人で何とかしろよ」
 ガルヴィスはもんくありげにそう言うと、ハイドラが言った。
「残念だが思った以上に厄介だ。 できるだけ”なる早”で来てもらえないだろうか」
 マジか……。

 そして、最後にガルヴィスがそのロープを伝って這い上がってくると、そこには――
「なんだこいつは!?」
 そこにはまさにこの世のものとは思えないようなものが。 そいつはおそらく亀の魔物、体長は5メートルほどと巨大な亀だが、甲羅が独特で光り輝く岩のようなものになっていた。
「こいつはロックイーターだ、つまりは岩を食う魔物で一定の岩を糧とする生物だが――」
 と、ヒュウガが言った。だが、こいつはここにあったはずの絶大な力を秘めたエンチャント・ストーンを食ってしまったやつだということらしい。
「ロックイーターにも好き嫌いがあってなんでも食うわけではないハズだが……」
 クラフォードがそう言うとディスティア様が言った。
「でも、そのエンチャント・ストーンの力に照らされ、魔性の力が引き起こされてしまった結果なのでしょう。 この道中の魔物もそんな感じでした、おとなしくはありますが、いざ牙をむいてみればいずれも手強い存在です。 そしてこいつはその結果、禁断の果実を口にしてしまったということなんでしょう――」
 するとロックイーターは起き上がり、こちらに牙をむいてきた。
「やる気満々かよ、そういうことならいい、要はこいつを倒せばいいんだろ?」
 ガルヴィスは剣を引いてそう言うと、リファリウスも剣を出して言った。
「そういうこと。キミには悪いけど、その石は私らがもらい受けるよ。」