会議が終わるとリファリウスは頭を抱えながらベンチに寝そべり、
アリエーラさんの膝を枕にしていた――なんて贅沢な膝枕なんだ、羨ましすぎるだろ。
「なんだかいきなり疲れましたね、まさか国際機関の話になるなんて――」
アリエーラさんは心配しながらそう言うとリファリウスは答えた。
「近いうちにその話題は出るだろうとは思っていたけど、まさかこんな早くに出てくるなんて想定外だよ。
経済を回すために産業をどうこうするとか法的な制約とか、その手の話だったら私も望むところだけれども、
流石に法整備の深い話まで突っ込まれると私もお手上げだ。
あのアーマンって人、多分法律関係には詳しい人だと思う、そんな雰囲気がするよ。
うちのお抱えの弁護士先生がダメってわけでもないけれども、それでもあの人に彼をぶつけるのはよろしくない――
流石に彼とは格が違いすぎる、それだけは少なくとも私でもわかるよ。とりあえず棚上げ案件だね――」
アリエーラさんは悩みながら言った。
「ヴァドスさんを修行させると思って差し向けてみてもダメですか?」
リファリウスは一瞬考えた。
「アリエーラさんも意外と意地悪な人だなぁ♪
彼をステップアップさせるのはいいことだけれども、さすがに飛び級過ぎないかな?
あの人と対等に話ができる人でないと正直辛いところがある気がするよ――」
アリエーラさんは楽しそうに、そして悩みながら答えた。
「すみません、言ってみただけです♪
確かに、ほとんどが引退なされてしまった方ばかりですね、再び起用してみます?
もしかして、少し前に追い出してしまった貴族議員様の中には――いたのでしょうか?
適任者の選出は――難しそうですね……」
それから数日後、コエテク島とコナンド島の2島の祠が確認されたという話が。
ややあってクラフォードはティルアでダウンしていた。
ほかにもアーシェリスとフェリオース、イールアーズもダウンしていたが、
その時はアーシェリスとフェリオースは軽傷、すぐに復帰してきたのだが、
まさか、ここで再びダウンするハメになるとは――
「ん? 2つ? なんかおかしくないか?」
クラフォードは元気になったので、セラフィック・ランドからの話を聞いていた。
「そう言われましても、確かに2つ確認されたということです。
すみませんが、まずはクラウディアス様への報告をお願いできますかね?」
そしてクラフォードはリファリウスに話をしていた。
「元気になったー? 滅茶苦茶にやられたもんね。」
「まあな、仲間を守るためならこれぐらいのことは厭わない、お宅と一緒だ。
で、トライスの連中がコエテクとコナンドの祠、2つの祠を見つけたって言ってたぞ。
間違いじゃないのかって訊いたんだがどうやら間違いないらしい――」
リファリウスは頷いた。
「でも確かに、コエテクとコナンドだったら一緒に出現するってありうるだろうね。」
どういうことだ? クラフォードは訊くとリファリウスは説明した、当時を思い出せ、と。すると――
「言われてみれば確かに、コエテク・コナンドって一緒というか、立て続けに消えたんだったな」
「そういうこと。だからもしかしたら、この2つの島って同時期に作られた島なのかもしれないね。
詳しい話はオルザードに訊いてみればはっきりすると思うよ。」
オルザード、アルディアスのお偉いさんにしてクラウディアスにいる大使の一員だが、
敬虔なエンブリス教の信者であるエンブリアヌスにしてエンブリア創世のことを調べている学者でもある。
彼によると、コエテクとコナンドは同時期に作られた島であることは確からしい。
だが、同時に消えたというのは――それが理由でいいのだろうか。
ということで、次はコエテクとコナンドの両方を攻めることにした。
おいおいおい、エンブリア組があんな目にあったというのに大丈夫か?
その心配はもっともだが、”ネームレス”だって数はいるし、あれがエンブリア組のすべてではない。
痛手は負ったにしても全員生きてはいるし勝している、だから次は思い切って同時に現れた2つの祠へと赴くことにしたのである。
そのうちのコナンド島には――
「よーし、やってやりゃあいいんだな?」
クラフォードは少々得意げな態度で望んでいた。
「腕が鳴るわね♪」
彼に続いてウィーニアも少々得意げな態度で望んでいた。
「やりますかね!」
ディスティア様も得意げに言った。
「私も頑張るわ!」
彼に続いてレナシエルも少々得意げな態度で望んでいた。
「けっ、どいつもこいつも色づきやがって――」
イールアーズはなんだか気に入らない様子だった。
そう、この祠の担当は”旧万人斬り”、”万人狩り”、”鬼人剣”と呼ばれた恐るべき3人衆とその彼女。
”鬼人剣”は彼女いないので除く。それに”万人狩り”も別に彼女だと思っていないような気もするが、この際気にしなくてよい。
一方でコエテク島には、たった2人の”ネームレス”が降り立った、それは――
「たまにはいいよね、アリエーラさんとデートっていうのもさ♪」
「そうですね♪ リファリウスさんとデートだなんて嬉しいです♪」
という2人のカップルである。アリエーラさんと2人きりとかリファリウスお前代われ。
だが、祠にもぐっている最中、2人は何やら妙な話をしていた。それについてはまたいつか。
するとそこへ――
「来ましたね――」
アリエーラさんがそう言うと、2人は”兵器”をもって構えた。
「あからさまな殺意を感じる、ビリビリしてくるよ。」
「そうですね、これは今までにないほどの能力の持ち主って感じですね――」
と、その時――
「おっと、そういうオイタはいけないよ。」
リファリウスは前に出て”兵器”を構えると、何やら敵の攻撃を受け止めていた。
「これは厄介だな、体のないタイプの魔物のようだ。
むしろ、あの3人と彼女2人に任せなくてよかったかも――」
体のないタイプの魔物……要は霊体系の魔物である。
受け止めた攻撃は魔法攻撃で、まさに影から攻撃をしてきた感じだった。
すると――
「しかも2体いますね、1人1つずつ?」
「いやあ、さすがに異世界の存在というからには私は援護に入るよ。
だから、アリエーラさんにまとめて倒してもらおうかな。」
「はい、望むところです。」
ということで、こちらはもはや計画が決まったようだ。
一方でコナンド班は――
「ったく、何が来るかと思えばただの2体のガーゴイルの石像かよ。
さっさと始末するぞ――」
目の前に邪悪な石像がこちらを向いて構えていた。
イールアーズは剣を敵に向けて攻撃を放った! だがしかし――
「硬って! ヤロウ、やりやがったな!」
イースアーズは再び突撃した! 敵は硬くて少々苦戦気味である。
「敵は見た目にたがわずということですか、とにかくイールに続きましょう!」
と、ディスティア様は落ち着きながらそう言うとイールアーズが叫んだ。
「っせえ! こいつは俺が1人でやる! お前ら4人はそっちをやれ!」
ったく、あいつは。
「……まあいいです、硬いですが、なんだか強さ的にそこまでっていう感じでもなさそうですので、とにかく倒しましょう――」
ディスティア様は呆れながらそう言うとクラフォードは――
「相変わらずだな、お宅の問題児は――」
彼もまた呆れていた。