エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第28節 大いなる力、復活の鍵

 3日後、ティレックスはオルザードと、見慣れぬ顔2名の4人と一緒にクラウディアスの謁見の間へとやってきていた。 見慣れぬ顔と言っても片方はティレックスの元上司であるレンティスであるが、もう片方は見慣れぬどころか見知らぬ顔である。
 そして、謁見の間にはエミーリアをはじめとするクラウディアス重鎮団が一堂に会していた。 そのような物々しい雰囲気からもわかると思うが、アルディアスから”大地の斧バークレティス”が運ばれてきたのである。 バークレティスは布に包まれており、それをティレックスと見知らぬ顔が2人で丁寧に運んでいた。
「これがそうですが……いかがでしょうか?」
 バークレティスを謁見の間の真ん中に特別に設置された台の上に置かれると、 見知らぬ顔は丁寧に布を取り外すと、そう言って促した。
 それに対してリファリウスとアリエーラと、そしてオルザードが近くに寄って何やら確認していた。
「確かにアルディアスの博物館に置かれているレプリカと同じようなものですね。 一般的な取っ手の先端部に刃の付いたそれではなく、調度品に近いような飾り斧という見た目など、 まさにエンブリア創世で語られているそれの特徴を見事に体現していますね」
 オルザードはそう言った。 刃の部分が大掛かりな三日月を成しており何となくデザイン重視を思わせるその形状、 それについてリファリウスが言った。
「不思議だなぁ、実は”ネーレイダル”もそうなんだけど、どこかで見たようなデザインなんだよ。 ガルヴィス君にそれを言ったらエンブリアでは比較的知られている部類だからそのせいだろって言われてしまったんだけど、 でも、なんか引っかかるんだよねぇ……」
 なんだかありそうな感じだった。それはさておき、アリエーラが言った。
「うーん、残念ですがこの斧からは”ネーレイダル”ほどの力を感じられないようですね――」
 それに対して見知らぬ顔は驚きながら訊いた。
「そんな! まさか、ニセモノだとでもいうのですか!?」
 リファリウスは諭すように言った。
「いやいや、そこまでは。 先んじて伝えているように、エンブリス創世から長らく現存し続けているものなら力がロストしてしまっていても仕方がないってことだよ。 ”ネーレイダル”はずっとクラウディアスの土地が生み出しているパワーの保護を得られているからロスト具合は緩やかだったけど、 そうでもない代物については当時と同じ品質を保てているのかどうかについては流石に何とも言えないところだね――」
 リファリウスは続けて言った。
「とはいえ、”ネーレイダル”を調べたところ、持っている力はあからさまにオーバーパワーであることはわかった。 ”バークレティス”についても、見た限りではパワーを保有するための作りであることはなんとなく分かったことだし。 そこいらの武具と比べても、確かにこれは放置しておくのは危険な”アーティファクト”であることは間違いない、 それぐらいの代物であることは確実で、長らくアルディアスにあったということであれば伝説の代物であるということは確実かもしれないね。」
 さらにリファリウスは立て続けに言った。
「そもそも、伝説の品なんていうのは骨董品という向きも強い。 だから実用に耐えうる代物なのかどうかは別ってわけだ。 そして、そういうレベルの品だから現存していないという可能さえある、 何が言いたいかというと、”炎の剣フレイムティレント”は絶望的だってことだよ。」
 ”風の槍ブリーズチャート”は? ティレックスは訊いた。
「そっちについては心当たりがある。 まあそれはともかく、まずはバークレティスだ、ネーレイダルと一緒に確かめてみないことには始まらない。」

 後日、アリヴァールの祠にて例の石板の突起にバークレティスとネーレイダルをかけるように安置しようとした。 ネーレイダルを置いたところ、石板と共鳴したような感じでキラキラ光っていたが、バークレティスにはどうもその反応が見当たらない。 やはりこれはダメだということだろう、何人かはそう思った。
 ということは、リファリウスの言うように何らかの手を加えて修復する必要があるということだが、さて、どうしたもんだか。
「で、どうすんだよ、これで終わりか? まさかここまで来てそれはないだろうな?」
 ガルヴィスはそう訊くとクラフォードが言った。
「打つ手なしじゃあ仕方がないだろ」
 それに対してガルヴィスが言った。
「てか、作れって言うんだったら作るっつってたよな、だから作ればいいんじゃないのか?」
 リファリウスは呆れ気味に言った。
「相変わらず簡単に言うよねキミは。 確かに作りたいのは山々だけど、生憎ながら材料がそろっていない。 それこそ伝説クラスの偉大なる神器を作れという話だからね、必要な材料にもそれ相応のものが要求される、 簡単にはいかないよ。」
 ガルヴィスは身構えながら訊いた。
「じゃあ、何が要る?」
「そうだね、絶大な大地の力を秘めたエンチャント・ストーンかな。 それと、炎の力を秘めたエンチャント・ストーンもあると助かるよ。」
「どこにある?」
 リファリウスは淡々と言うがガルヴィスが間髪を入れずに訊いた。すると当然――
「こいつなら在り処を知っているぐらいならすでに持っていてもおかしくはないと考えなかったかな?」
 確かに言われてみればその通りだった、ということは――
「ちっ、結局どうにもならねえってことかよ」
 それに対してクラフォードが言った。
「というか、そんな絶大な力を秘めたエンチャント・ストーンが世に知られているぐらいなら世間で大ニュースになっているだろ。 それこそ軍事兵器のための道具として利用されているのがオチだ。最悪、とんでもない使われ方をされている可能性さえある、想像したくないぐらいのな」
 ディスティア様が考えながら言った。
「ということは、そんな絶大な力を秘めたエンチャント・ストーンが世に知られておらず、今でも隠されている場合はどうかということになるわけか。 そんな神秘の秘宝が今でも隠されているとなると――」
 リファリウスが答えた。
「まあ、平たく言えばそういうことだね。 それだけのエネルギーが集中しているところなら、なんらかのパワースポットとして有名になっているところとか、 あとは局所的に原因不明で異常な天候に見舞われやすい場所だったりとか、そう言う場所になっている可能性があるかもしれないね。」