ということで、再びメンバーをそろえて答えの解説を。
「まずはこの3つの文様、改めて聞くことになるだろうけど、それぞれ4つの文字が微妙に横に少しずつずれて重なっているのがポイントだ。
それを分解し、ずれている順番に並べるとこうなる――」
左の文様は”ば”・”ね”・”ふ”・”ぶ”、真ん中の文様は”の”・”う”・”さ”・”し”、右の文様は”あ・、”ろ”・”そ”・”す”、
ここまではヒュウガが解析したことでわかっていることだった。
「でだ、ここで武器が登場するわけだ。
というのも、この発想に至ったのは姉さまが先日ルーティスのウェポン・マルシェで見かけた武器の陳列からふと思ったことなんだけど――」
そう、彼女はその際に武器を並べ替えていた、斧・杖・大剣・槍の順番に――
「つまり、アックス・ロッド・ソード・スピアを見て考えたわけだ。」
大剣はブレイド、その時たまたま大剣が目に入っただけのことらしいが、
今回の文様の都合で剣のソードとして考えたようだ。
そう、それっていうのはつまり――
「それってまさに右の文様の”あ”・”ろ”・”そ”・”す”だな!」
と、ティレックスが興奮しながら言った。
「なるほど、そういう法則性があるってことか。つまりは武器の接頭辞――」
ガルヴィスは考えながら言うとリファリウスは頷いた。
「もちろん、それだけで謎が解決するほど甘くはない。
今回選抜された武器は4種類だった、ではほかに4種類のもので何があるのかで考えると、
世界の構成元素たる四大属性、つまり地水火風の属性を思いついた。
それを踏まえると、真ん中の文様が示している”の”・”う”・”さ”・”し”がそれっぽいなと思ったんだ。」
それについてはアリエーラさんが説明した。
「なるほど、世界の構成元素たる四大精霊ですね!
つまり、”の”は大地の上位精霊”ノーマラス”、”う”は水の上位精霊”ウンディーヌ”、
”さ”は炎の上位精霊”サラマンドラ”、”し”は風の上位精霊”シルファーヌ”ということになりますね!」
エンブリアでは小中学校でも習うもの、以前にルーティス学園にて彼女がそれを教えている場面もあったと思うが、まさにそれである。
リファリウスはアリエーラさんに対してにっこりとして頷いた。
「そして、右の文様の配置と合わせて考えると、
大地の力を秘めた斧、水の力を秘めたロッド、炎の力を秘めた剣、風の力を秘めた槍っていう組み合わせが現れるんだ。」
でもそれだけで謎が解けるのだろうか、ガルヴィスは怪しみながらそう訊くとリファリウスは頷いた。
「まさに私としてもそれは懸案事項だ。
だけど思い出してほしいのは、石板についていた8つの突起、まさに4本の武器を備えるためのものだと考えるとしっくりこない?
だからその点を踏まえた検証として、有識者に対してなぞなぞを出題して答え合わせをしてみることを考えた。」
これまでの通り、真ん中の文様も右の文様も何かしらの接頭辞を現している。
となるとやはり左の文様”ば”・”ね”・”ふ”・”ぶ”も何らかの接頭辞になっていることはまず間違いないだろう、そこまでは考えた。
「問題はその接頭辞が何を現しているのだろうということだ。
でも、よくよく考えると一番肝心なものがないよね?
それが指し示すものがどう呼ばれているか、つまりは武器の名前だよ。
だからそのつもりで有識者に対して名前を答えよと出題したところ――」
ティレックスは頭に”ば”の付く”大地の斧”として”バークレティス”を、
ラシルは頭に”ね”の付く”水の杖”として”ネーレイダル”を、
オルザードは頭に”ふ”の付く”炎の剣”として”フレイムティレント”を、
そしてクラフォードは頭に”ぶ”の付く”風の槍”として”ブリーズチャート”を答えた。
そう……リファリウスの読み通りの展開となったのである。
「そして実はこの4つの武器……いや、神器はまさにエンブリア創世においても重要な代物だったようで、
今回の件もまさにエンブリア創世がらみのこと、つまりはそれらの神器を示している可能性が非常に高そうだ。」
ということはつまり――
「じゃあその4つの神器を探し出さないといけないってワケか、ずいぶんと面倒そうだな」
ガルヴィスは頭を掻きながら言うとリファリウスは首を振った。
「いや、探すのは2つだけでいい。実は2つについては既に抑えてあるからね。」
そうなのか? ガルヴィスが訊くとまずはティレックスが言った。
「”バークレティス”についてはアルディアスに伝わっていてな。
博物館にもレプリカがあるんだが本物――かどうかはわからないが、レプリカとは別に厳重に保管されている。
大いなる力を持つ何かということで一般的には公にされていないけど――
今はオルザードを通じてアルディアス側に使用許可を求めているところだ」
ティレックスが”バークレティス”を知っていたのもアルディアスに伝わっていたからという理由だった、要するにたまたまである。
「”ネーレイダル”はこのお城の地下に備えられている杖がそれです。
大昔に封じられて以来、一度も開けられたことがない部屋の中にありましたね。」
ラシルはそう説明した。彼がそれを知っていたのもティレックスと同じくたまたまだった。
「てことはあと2つ――と言ってもそんな創世時代の代物だろ? 本当に探し出せるのか?」
リファリウスは考えながら言った。
「ラシル君に言われて”水の杖ネーレイダル”を実際に見てきたけど、確かにとてつもない力を秘めた代物であることは確実だ。
だからそう言われると――どうだろうか、そんなものがあったらエンブリアはもっとひどくなっている可能性が高い、
いや、すでに起こっているわけなんだけど――」
どういうことだ? ガルヴィスが訊くとリファリウスは首を振って言った。
「まあいいや、それはとりあえず。
ただ、一つ言えるのは世界同士の扉を開くための強力な力を持つ鍵が必要だっていうことなのかもしれない。
だとすると、単に大いなる力を秘めた地水火風のパワーを備えたものが必要だっていう意味合いなのかもしれない。
だって、例え神器と言えど所詮は作り物、長い年月を経ればその力をロストしてしまうようなものだってあるからね。
でも、”ネーレイダル”は流石にクラウディアスに封じられていたおかげか、ものすごい力を秘めていることは確実だった。」
ということはバークレティスはもしかしたらダメな可能性があるということかもしれない。
「ダメだったらどうするんだ? ”セラフ・リスタート計画”はここでおしまいか?」
アーシェリスが言うとリファリウスは答えた。
「いやいや、そんなまさか。ものがなければ作ればいいだけの話だろ?
今言ったように、神器そのものでなくて、大いなる力を秘めた地水火風のパワーを備えたものであればいいということかもしれないからね。
だから左の文様は単に名前を指定しているのではなく、それぐらいの力を秘めた代物じゃないといけないよってことなんだと思う。」
「それには一理あるな。
長い年月を経ているんだ、そのブツの形が変わっている可能性もあるだろうし、
あの一枚岩のどこで本物か偽物か判断しているのかわからんしな。
力の大きさだけってんなら何となくわからんでもないから、その考え方は俺としても同意見だ。
でも、そんなブツでもお前の手で作れるのか?」
ガルヴィスはそう言うとリファリウスは答えた。
「ああ、作れって言うんだったら作るよ、望むところじゃないか。
でも――それほどのものを作らないといけないんだ、材料をそろえるほうに難儀するね。」
いずれにせよ、計画続行は前途多難のようである。