エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第25節 精霊の仕組み、謎の暗号

 アリヴァールの祠らしき洞窟の入り口にて、説明が続いた。
「で、精霊族が関係するのですか?」
 ディスティア様がフォローするかのようにそう訊くとリファリウスは答えた。
「正解。流石ディア様、きちんと話を聞いていたね。 この話の流れの中でこの洞窟の中に入ろうと言っていた人は全員精霊族だったね、何故か?  答えは簡単、最初から”洞窟の入り口”として見えていたから。だから私もここに真っすぐやってきたワケだ。」
 アーシェリスが訊いた。
「精霊族以外は見えないのか? 何故なんだ?」
 リファリウスは頷いた。
「申し訳ないけど、それは私にもわからない。 実を言うと私は精霊族だからなのか、逆に何故見えないんだろうって思っているぐらいだ。 でも、確かにそういう感じの力が働いているような気配も何となく感じるし――私に言えるのはせいぜいそのぐらいまでだよ。」
 さらにリファリウスは話を続けた。 世界を創造したのは神かもしれないが、神が没してもなお世界を管理する者がいる、大精霊と呼ばれる存在だ。 つまり、新たな世界を形作る際に精霊の力が必要不可欠、つまりは精霊が管理するうえでは都合のいい状態で世界が作られるわけだが、 それが都合のいい状態のままで完結しているのがアリヴァールの特徴なのかもしれないとリファリウスは言う。
「じゃあ何か、エンブリスってのはつまりは大精霊か何かってことか?」
 と、ガルヴィスは言うとリファリウスは考えた。
「それについては”ありえなくはない”としか言えないなぁ。 ただ精霊の力を用いるすべさえあればいいだけだから、別に当人が精霊でなくたって、 それこそ極端な話、プロジェクトに精霊がいなくてもいいわけだ――まあ、その場合の面倒さは推して知るべしなんだけどさ。」
 それはそれとして、話を戻そう。
「でだ、つまりは岩にしか見えなかった理由というのは、精霊の力のせいでただの岩にしか見えなかったかもしれないってわけか」
 クラフォードがそう言うとリファリウスは言った。
「そう、岩に見えるだけ。見えるだけで入ること自体はおそらく可能だ。 ちなみに、今キミらに入り口が見えているのは私らの精霊族の力に干渉しているせいだと思う。 さて、それが分かったところでさっさと行こうかね。」
 それはともかく、リファリウスの話に一同愕然としていた。

 だがしかし――一行はどういうわけか、あの後クラウディアスへと舞い戻っていた。
「何かあったのか?」
 城の入り口、ハイドラはリファリウスにそう訊いた。 彼女もおそらく、あのアリヴァールの祠の入り口も見えるかもしれない精霊族”ダークエルフ”である。 そんな彼女はイツキと同じタイミングで発見された”ネームレス”である。
「実はそうなんだ。 祠に入れたのはいいんだけど途中で行き止まりでさ、行き詰っちゃったんだ。」
 と、そう言いながらリファリウスはヒュウガに促した。するとヒュウガは頷き、どこかへと足早に去って行った。
「なんだ?」
 ハイドラが言うとリファリウスが答えた。
「その行き止まりの空間に石板があってね、文字やら文様やらが刻まれていたんだけど全然わからなくてさ、写真だけ取って戻ってきたんだ。 で、ヒー様はクラウドに送ったその写真データを見に行ったところ。」
 するとリファリウスはおもむろにアリエーラを抱きかかえると5階のテラスまで大ジャンプ……相変わらずだな、 何人かがそう思って呆れているとハイドラまでもがそれに続いていった……
「は、ハイドラさん!?」
 ティレックスが驚いているとガルヴィスが答えた。
「そういえばあの女もあの使い手だったな――」
 ハイドラも”スカイ・アタッカー”クラスの使い手では上位の存在、”ヴァルキリー”クラスの使い手なのだ――

 ヒュウガは写真を解析ソフトにかけていた。 彼も”ネームレス”の一員であり、天命0年に現れた”フェニックシアの孤児”の1人だが、 リファリウス同様に各地で手広くやっている――というか、リファリウスに付き合わされているだけである。
 ともかく、解析の結果、石板の文字やら文様やらについては意外にもあっさりと謎が解けたのである。 しかし、それは始まりに過ぎなかった。
「なんだよ、わかったんじゃないのかよ」
 ガルヴィスはつっけんどんにそう言うとヒュウガは呆れながら答えた。
「これだけでもわかれば大きな躍進だろうが。 もっとも、お前の頭でこれがわかっていたんだって言うんなら話は別だがな」
 そこへディスティア様が訊いた。
「何がわかったのです?」
 ヒュウガは答えた。
「石板にあった3つの文様だが、ただ文字がそれぞれ4つ重なっているだけだった、 文字のパターンはエンブリアでも一般的に使われている文字らしく、前のホログラムにも展開されていたそれと同じものだな。 ただ、その計12文字……アナグラムの可能性も考えたんだが、特にこれといった該当パターンもなく、このまま解いていくしかなさそうだ」
 つまりは単純な”なぞなぞ”になりそうだった。
「12文字?」
 クラフォードは訊くとヒュウガは言った。
「一応話を付け加えると、石板の上部に横に3つの文様が並んでいて、文様の下には何かしらの突起が8つほど出ていた。 構造的には何かを備えるため――立てかけるための突起だと思うがそれでも目的がわからないし、立てかけるにしても何を備えるべきかも不明だ。 で、ご所望の文様が何なのかだが、重なっているとはいえ微妙に横に少しずつずれていて、分解して得られた文字は左から順に”ば”・”ね”・”ふ”・”ぶ”、 真ん中は”の”・”う”・”さ”・”し”、右は”あ”・”ろ”・”そ”・”す”、ずれと文字の向きを考慮した結果もそれぞれ今言った順だ。 12というからには時間に関する何かということも考えたんだがそれっぽいことも思いつかず、そういうことでもないみたいだ。とにかく、調べられたのはここまでだ」
 ……なんのこっちゃ。