エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第22節 不思議な石、伝説の存在

 後日、オルザードをリモート会議に召集。 それと同時にリファリウスの手元にはティレックスからとある金属が手渡された。
「まさか、”アリヴァール・メタル”?」
 ティレックスは頷いた。
「エンブリア創世でも重要ということで実物を一応用意してあるんだそうだ」
 ということはつまり――エンブリア創世には関係がある話ということだろうか、 リファリウスはそう言うとオルザードが答えた。
「エンブリア創世に関係があるというより、エンブリア創世に関連する可能性のある出来事があったというところですね」
 どういうこと? リファリウスはそう訊くとオルザードは答えた。
「順を追ってご説明いたしましょう。 それはエンブリア創世の時代とはずいぶんと離れた時代の話ですが、 どこからともなくやってきたという旅の一団たちが、その”アリヴァール・メタル”を用いて様々な武具を作ったようです」
 クラフォードが言った。
「その話なら俺も知っているぞ、詳しいところまではわかんないが。 当時は”アリヴァール・メタル”を用いたものづくりは今のように確立されておらず、 そもそも”アリヴァール・メタル”が使われること自体がなかったのに、 その旅の一団のおかげで少しずつできるようになっていったという話だな」
 技術の進歩というやつか、ティレックスはそう言うとオルザードは言った。
「はい、確かに技術の進歩という側面もあるようですが、 しかし、そもそもとして”アリヴァール・メタル”の加工を難しくしている原因が技術とは別にあるらしく、 そんなことをものともせずに”アリヴァール・メタル”を加工していったというその旅の一団はまさにエンブリスが遣わした産業の神だったのではないかと言われています」
 クラフォードは頷いた。
「なんか妙な話だよな、産業の神とか。 とはいえ、少なくとも何かしらの史実に基づいた出来事であることは間違いなさそうだけどな」
 ディスティア様も考えていた。
「産業の神――時代はちょうど1,000年前程度でしたっけ、 そんな割と最近ともいえるぐらいの時期にエンブリア神話にも記載されている産業の神の話なんて面白いですね」
 ん? 1,000年前といえば――ティレックスは考えていた。
「俺がちょうど生まれるぐらいの年が大体アルディアス1,000年の年だった気がするな」
 そう言われてガルヴィスも何か考えていた。
「奇遇なもんだな、ヴァルジアってとこも最近に1,000年祭とやらをやっていたそうだ」
 オルザードは頷いた。
「アルディアスとヴァルジアは1,000年前の同時期に建国した国ですからね、当然でしょう。 そして、そのきっかけこそがそのエンブリスが遣わした産業の神だそうです」
 話は急な方向へ――

「どっちも1,000年前、単なる偶然じゃないのか?」
 ガルヴィスはつっけんどんに返すと、グラトが答えた。
「それが単なる偶然で片付けられるのであればそれぞれ独立した話で終わるわけだが、 1,000年前のことについてはあくまで歴史書ベースである程度きちんと書かれているから偶然とも言い切れないのが実際のところだ。 いずれにせよ、そこにいる彼女のおかげでそこまでわかったわけだが――」
 そこにいる彼女とはアリエーラさんのことである、 彼女が”美しすぎる女教授の歴史的大発表”をした時のそれがきっかけで研究がそこまで進んだということらしい。 あの発表がなければここまでの研究の進展はなかったとされているほど影響力は高かったらしい。
 そして、そう言われて照れているアリエーラさんをよそに、リファリウスは虫眼鏡を使いながら入念に金属を調べていた。 その様子を見ながらグラトは訊いた。
「何かわかりましたか?」
 リファリウスは虫眼鏡を置くと、肩を回し、軽くストレッチをしながら言った。
「確かにオルザードさんの言うように、これは単なる技術の進歩という話だけで”アリヴァール・メタル”の加工ができたというわけでもなさそうだね。」
 そしてリファリウスはアリエーラさんに言った。
「アリエーラさん、こんなところにものすごいパワーストーンがあるなんて、これは意外な展開になってきたね――」
 そう言われてアリエーラさんは慌てて虫眼鏡を取り、金属を入念に見ていた。
「なんだ? 何かあったのか? パワーストーンがあるって――面倒な石が含まれている場合、金属の加工は困難を極めるハズだが――」
 クラフォードがそう言うとリファリウスは得意げに言った。
「流石だね、そのあたりの知識はちゃんと得ているってワケか。 確かにエーテルエネルギーの類が含まれている場合、程度にもよるけれども金属の加工は困難を極める。 理由は簡単、物質中のエーテルエネルギーが加工の工程の都合で発生しうる化学反応によっていろいろと面倒なことを引き起こすようになるからだ。 たとえば物質同士が緊密な状態になって物質同士の分離がうまくいかないとか、 最悪、エネルギーが暴走して大爆発も辞さないとかそう言った具合だ。」
 では何故、”アリヴァール・メタル”はそういう金属でありながら加工が可能なのか、リファリウスは答えた。
「徐々に”アリヴァール・メタル”が使われるようになった、というのがポイントかな。 しかも1,000年前っていうのがある程度ちょうどいいことを示している。 それに確か――エンブリア創世っていつの話だったっけ?」
 オルザードは答えた。
「年代は定かではありませんが、今からだとちょうど1万年ぐらい前と言われていますね」
 するとアリエーラさんが驚きながらリファリウスの顔を見て言った。
「これは珍しいですね! こんな空の入れ物のような”セラフ・ストーン”があるなんて!」
 ”セラフ・ストーン”? なんだそれは――大勢が首をかしげているとリファリウスが言った。
「”アリヴァール・メタル”は通常の鉄鋼石類と、その”セラフ・ストーン”とが層となって重なっている物質のようだ。 ”セラフ・ストーン”、どうやら専門的過ぎて通じなかったようだから一般的に使われている通称だったら流石にわかるだろう、つまりは”精霊石”だよ。」
 またとんでもない、希少にして伝説の鉱石の名前が登場したようだ。