エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第21節 不思議な島、不変の流れ

 そしてグラトとシューテルにはセラフィック・ランド連合国の今後について、セラフ・リスタート計画についての話をしたのである。
「そうか、状況はよく呑み込めないが、すでにやっていることについてはその通りにするしかないのだろう。 ともかく、次はアリヴァール以降の土地を復活させるということだな。 それに”ネームレス”か、只者ではないとは思っていたが、異世界の存在か――」
 グラトは考えながらそう言うと、アーマンが言った。
「それは無理に信じろとは言わん、特別執行官殿もそう申しておったわ、のう?  それに私もまだそこまで理解が追い付いていない。 とはいえ、多くがその可能性に言及しているのだから、そこは足並みをそろえなくては――」
 しかしグラトは首を振ってこたえた。
「いや、”フェニックシアの孤児”の件といい、ずいぶん前のルーティス奪還の件といい、 リファリウス殿の様々な能力を見せつけられているのでな、むしろ私は信じているぞ。 それに――セラフィック・ランドで消えたとされるリアスティン王の一団―― その異世界”アンブラシア”へと渡った可能性があると言われたほうがしっくりとくるようだな」
 確かに突如として消えた一団、まさかその可能性に言及されるとは思ってもみなかったリファリウス。 前からそうは考えていたのだが、ここへきてそういう話をする者がいるとは――
「ものはいきなり消滅するわけではない。 となると、エンブリス異世界人説とは逆に、リアスティン王の一団が異世界人として向こうの世界に行った可能性もありうる―― 前々からその可能性に言及してきたけど、まさか本当に――」
 リファリウスはそう考えるとアリエーラさんは頷いた。
「確かにその通りですね――。それならなおさらエミーリア様のお父様を探さなくては――」
 それに対してシューテルは考えながら言った。
「ふむ、クラウディアス調査団か……形こそ違えど、当時の流れは今でもずっと続いているというわけか――」

 といったことで、グラト氏がセラフィック・ランド連合のまとめ役であるということから、 復活したセラフィック・ランドについてのケアについては各自治区と連携し、彼が主軸となって引き受けることとなった。
「特にアリヴァールとくれば早めの復帰が必要となるだろう、リファリウス氏には不要かもしれぬが――」
 と、グラト氏は言ったがリファリウスは首をかしげていた。
「どういうこと?」
 シューテルが話した。
「アリヴァールは昔からの刃物の名産地だからだ。 質の良い金属が取れることで有名な土地でな、あの土地でとれる金属から作られる刃によってこの世に数多の英雄や殺人鬼を生み出したと言われている。 特別執行官殿が手を組んでいる者たちの中にも、かの地でとれた金属で作られた武具を使う者もいるのではないか?」
 あれ、そう言われてみればそうだった気が。そんなに有名な金属なのか?
「なるほど、覚えておくよ。 ということはつまり――武具を新調したい人のことを考えると対策を急がれるってわけか。」
 アーマンは頷いた。
「左様。特別執行官殿は独自にものすごい武具を用いておるようだからどうでもいいことじゃろうが、 それでも、お主らはこのエンブリアのための新たな英雄となる者たちなのだから、 流石に武具が使い手に追い付いていないとなると問題も多かろ? だからそのための協力ということじゃ」
 そう言われてリファリウスは何やら考えていた。
「”アリヴァール・メタル”か……」
 すると、横からとんでもない話が。それはトライス自治区からの話だった。
「何っ!? それは本当か!?」
「はい! 間違いございません!」
 それに対してバフィンスが次が決まったようだなと言うが――
「はっ、はい――確かに次のアリヴァール島の祠があるらしき島が見えたのですが、ただ――」
 ただ――なんだ? グラトが訊いた。
「島はいいが祠は確認できてないのか?」
 トライス自治区は悩みながら言った。
「えっと、結論から申しますと、祠については確認できておりません。 というのも実は、アリヴァール、フェアリシア、それからフェニックシアについてはそもそも祠の所在が分かっていないのです!」
 なっ、なんだって!? 何人かはその事実に愕然としていた。それだけではない。
「それから今回発見されたアリヴァールの島ですが、 これまで確認できた祠だけの島とは様子が全く違うのです!」
 その様子とは――とんでもない様子だった。

 ということで今回の話題を持ち帰ったリファリウス、会議室を設けて全員に公開した。 それに対してクラフォードから指摘が。
「なんだこれ、どうなっているんだ!? というかこれ、祠の島じゃなくてアリヴァール島そのものだよな?」
 トライスが確認したアリヴァールの島、まぎれもなく完全系で出現したのだった。それに対してガルヴィスが言った。
「てことはなにか、アリヴァールはもう復活しているから次のフェアリシアに行けってことか?」
 アリエーラさんが否定した。
「そういうわけでもないみたいです。 そう思ってフェアリシアの島があった場所も確認したそうですが、それらしいものは何もなかったということです――」
 そもそも祠の所在が分かっていないのとは別の問題で、フェアリシア島跡には何もないというからにはまずはアリヴァールの攻略が必要不可欠ってわけか。
「それにアリヴァールの島自体は完全系かもしれないけど、どうも人がいるような気配がないらしい。 つまり島だけは完全系で出てきてはいるものの、それ以外ではこれまでのケースと何ら変わらないと、そう言うことらしいよ。」
 リファリウスはそう付け加えた。
「やれやれ、なんだか面倒そうだな。ま、アリヴァールっつったら”アリヴァール・メタル”とやらが有名だそうだからせいぜい頑張ってくれよな」
 ヒュウガはそう言うとリファリウスは思い出した。
「ああそうそう、それそれ。誰かアリヴァール製の武器を持っているって言ってたけど、誰だったっけ?」
 するとクラフォードが前に出てきてリファリウスの前にそれを出した。
「これか? なんか調べものか?」
 するとリファリウスはおもむろにその剣をそっと引き抜いた、大きくて太い剣――アリヴァール製の大剣、アリヴァール・ブレイドである。 それを見てリファリウスは思い出した。
「そうだ、これだ。そういえばキミのだったか、誰のだったっけってずっと考えていたけどこんなに身近にいたとは。」
 こんなに身近にいて忘れるんじゃねえとクラフォードはそう言いながら頭を抱えていた。 大体、剣の手入れを以前に何度かしてもらったことがあり、その際もきちんと確かめていたような気がするんだが。 まあ、他人が使っているような市販の武器をいちいち1つ1つ細かく覚えちゃいないか、自分で作ったものならともかく。 逆に自分で作ったものならこいつ大体覚えているからな。
「言われて見れば”アリヴァール・メタル”って確かに特殊な金属だった気がするなぁ。 サンプルは何回か借りたこともあったけど、そう言えば調べたことは一度もなかった。 でも、みんなでそこまで言う金属なんだから、改めてマジメに調べておく必要がありそうかな。」
 ディスティア様は考えながら言った。
「かもしれませんね。 アリヴァール島自体が何やら今までとは全く違う出方をしているというからには、 その金属の影響を考えてみる必要もあるかもしれません。 それこそ、もしかしたらエンブリア創世では何か手がかりになることがあるかもしれませんし――」
 それに対してティレックスが気が付いた。
「エンブリア創世ってことは、またオルザード呼んだほうがいいかな」
 リファリウスは頷いた。
「そうだね、ぜひ頼むよ。 さーてと、またルーティスに頼んで”アリヴァール・メタル”を借りてこないと――」