エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第2章 創造主の試練

第20節 協調の極み、戻ってきた枢機卿

 そんなこんなでそれぞれ祠を脱出し、それぞれ町までたどり着いた。
 そしてマダム・ダルジャンに回収してもらうと、そのままクラウディアスへと戻って行った。 何故、そのあたりのやり取りを割愛したかというと――
 リファリウスはアリエーラ女神様を抱えてテラスまで戻ってくると2人でベンチに座り、端末に向かっていた。リファリウス、そろそろ代われ。
「悪いねみんな、待ったかな?」
「遅ぇぞリファリウス! 臨時で会議するとか言っときながら遅れてくるたあいい度胸しているじゃねえか!」
 もはや風物詩と言わんばかりだが――と思いきや、バフィンスは悪びれた様子で言った。
「冗談冗談! まだ時間来てねえもんな! でも、全員集まったみたいだな!」
 と、再びムード作りに成功したようだ。するとモニタ上にもう2人分の枠が現れた。リファリウスが言った。
「そうそう、今回はとびっきりのゲストを用意している。 今後についてどうしても必要だから参加してもらうことにしたんだ。」
 その2枠には、人によっては見覚えのある顔が!
「おいまさか! お前、グラトじゃねえか! 無事だったのか!?」
 バフィンスはそう言った。グラトはセラフィック・ランド全体をまとめている機関のお偉いさんである。 その機関のある場所はスクエアだが、スクエアはまだ復活していないハズ――
 グラトは答えた。
「実はコエテク島に用事があってな、その際に消滅事件に巻き込まれたのだ。 で、まだ状況はよくわかっていないのだが、とりあえずコエテクが復活し、その際に特別執行官殿と遭遇したのだよ」
 そう、そんな一大イベントがあったのだ。 グラトについては今回のセラフ・リスタート計画においては確実に重要な立場にいる人物であることになりえるため、いち早くクラウディアスに帰ってきたのである。 なお、グラトは今回、クラウディアス城のデータ・フロアの3階個室を使用している。 3階は一般開放されている場所だが要人用に特別にセキュリティを設けることもある。 そのためか、特別にラシルとほかの騎士たちが部屋の前で警護していた。
 さらにそれだけではない、もう一方――
「実は連れがいてだな、今後のセラフィック・ランドについてどうしようか考えていたところだ。 彼は以前クラウディアスにいたのだが、ややあって今はセラフィック・ランドのコエテクに身を潜めていた」
 グラトはそう説明した、その人物はまさかの――
「よう、久しいな皆の衆。久しいな、アーマン……」
 その人物はそう言うと、アーマンは反応した。
「貴様、まさかシューテルなのか!? あのローファルが死んだと聞かされていたのだが、貴様は生きとったか――」
 そう、そいつは以前のクラウディアス悪の枢機卿たるローファル派貴族議員の一味、シューテルだった――
 だが、今のシューテルはというと、悪の枢機卿ローファル派とは思えないような考え方の持ち主だった。
「ローファル派というのはやめてくれ、やつは横暴すぎるのだ。 最も権力の強い生まれというだけでクラウディアスを牛耳っていただけにすぎん。 とはいえ、強いクラウディアスを取り戻すという点については同意見なのでな、協力関係を結んだまでよ。 もっとも、今ではヤツですら予想だにしない形で実現してしまっているようだがな。 よもやこのような形でクラウディアスの復権が現するとは!  ヤツが生きていたらなんと言うだろうな! フハハハハハハ!」
 悪の枢軸卿ローファル派の時の物腰は変わっていないようだ。恐らく地なんだろうが。
「だが、ヤツは死んだようだ。 死んだ者のことをとやかく言うのははばかられるが、ろくな死に方をしないとは思っていた…… まさにその通りになってしまったか――」
 それは――なんとも言い難かった。
「さて、こうしてクラウディアスに戻ってこれたことだし、皆で話をしようではないか」
 シューテルはニヤっとしていた。

 シューテルは話を続けた。
「まずは前回の会議の話から決着をつけさせてもらおう。 私は今後、クラウディアス特別執行官より法整備の見直しについて頼まれる運びとなった。 それはすなわち、国際ルールの枠組みについてどう話をつけるべきかということも含まれておる、新参者ではあるがよろしく頼むぞ。 それにしてもアーマン、こんな年端も至らぬような若者相手に大人げなく話をするとは感心せぬな。 貴様は弱いものイジメの枢機卿か? せめて私がいるときにその話をしてもらいたいところだ」
 それに対してアーマンは悪びれた態度で答えた。
「いやいやいや、そんなつもりは。ただクラウディアスの特別執行官という者を試しただけじゃよ。 確かに少々意地悪だったことは認めるが――しかし、まさかこのような方法をとってくるとは思わなんだ――」
 シューテルはニヤっとしていた。
「ふん、意地の悪さは相変わらずだな、アーマンよ。エンブリア真教国デュロンドの名が泣くぞ」
 アーマンは冷や汗をかいていた。
「わかったわかった、降参だ、勘弁してくれぬか。 ともかく、クラウディアス様においても国際法の話ができる者がいるということで理解した。 シューテルよ、今後ともよろしく頼むぞ」
「無論だ。リファリウスよ、これでいいのだな?」
 リファリウスは得意げに言った。
「シューテル氏、今後はよろしく頼むよ。 一応駆け出しの弁護士もつけるから彼にも勉強させてやってくれると助かる。」
「サディウスのところのせがれか、サディウスにはずいぶんと世話になった。 やつのおかげでローファルの目をかいくぐってセ・ランドへと安全に渡ることができたのだ。 無論、リアスティン陛下が見たという景色を見に行くためにな。 だが、私は甘くないぞ、勉強するというからには厳しくしていくからな」
「ぜひ、そうして欲しい。クラウディアスの未来がかかってるからね。」
 次の日からヴァドスの悲鳴が上がったことについては想像に難くない――