エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第1章 セラフ・リスタート・プレリュード

第13節 協調の心、新たなる計画

 レビフィブの町、人々はなんだか周りの状況を把握していないようで、なんだか不安気だった。
「あっ、リファ様! アリエーラお姉様! なんか、町は元に戻ったみたいだよ!」
 ユーシェリアがいち早く一行のもとへとやってくると、リファリウスは頷いた。
「どうやらそうらしいね。でも、この様子だと……このまま収めるにはちょっと難しそうだね――」
 そこへクラフォードがやってきて言った。
「この様子だとそっちはうまくいったようだな。 でも、このままだと本当に元通りという感じにはならなそうだな。 やっぱり、クラウディアス連合国内で考えるべきか?」
 リファリウスは頷いた。
「それしかなさそうだね。人々の記憶が、島が消滅した時点で止まっているのか、 島が消滅した際に恐怖した記憶もあるかもしれない。 それに、レビフィブなんかは消えたのが2年前でまだマシなほうとも言える、 もっと前に消えたところなんかは世界情勢があまりにも変わりすぎてここよりももっと深刻かもしれない、 となると――今後のエンブリアの風向きがちょっと心配だね。」
 クラフォードは頷いた。
「天下のクラウディアス様の決定事項であればみんなそれについていくだろうさ、だから行政の単位で言えばそれほど心配はない。 だが、一般市民がどう過ごすのか、そのレベルから顕在化してくる綻びをどうするか気にしないとダメそうだ」

 復活した町を楽しみたいのは山々だったが、状況を把握した一行はそのままクラウディアスへと戻って行った。
「そうですか、そんなことが――」
 5階のテラスにはプリシラとララーナ、そしてメルルーナとシェルシェルとエレイアがいた。 そろいもそろって全員プリズム族――って、あれ?
「おい、あの女はどこに行った!?」
 イールアーズはそう言った、そう、リリアリスがいないのである。それに対し――
「お姉様なら御用があるとか何とかでこちらにはおりません」
 とプリシラが言った、あの女! また抜け駆けしやがって! ガルヴィスはキレた。 だが、それに対してクラフォードは呆れ気味に言った。
「ま、何故かあっちに残るって言うもんだからな、あの人のことだから、こういうこともでもない限りはそんなこと言うわけないしな」
 そう言われると確かにその通りだが――それでも腹の虫がおさまらないガルヴィスとイールアーズ。
「姉さまいなくても私がいろいろとこなせばいいだけだ、そのための私でもあるわけだからねぇ。」
 と、リファリウスは調子良さそうに言った。そして、5人のプリズム族の女性陣の真ん中にある端末を取ってベンチに座ると、 リファリウスの両脇に5人の女性がやってきて座りなおしていた。
「ウフフッ、やっと捕まえましたわ、リファリウス様♪」
「リファ様♪ だーい好き♥」
「寂しかったわ、リファリウス様……私のことを抱いて――」
「リファ様♪ あなたのことを幸せにしてア・ゲ・ル♥」
「わーい♪ リファ様♪」
 と、ララーナ、シェルシェル、メルルーナ、プリシラ、エレイアはそう言いながらリファリウスを誘惑、一度に甘えてきた。
「ったくもー、休まる暇もないな。本当に、困ったお嬢様方だな――」
 そんなリファリウスのリアクションはやっぱり得意げだった。無論、誘惑が効いている気配がない。
「あの野郎! マジ殺す!」
 ガルヴィスらに加えてアーシェリスも加わり、殺意むき出しの状況だった。
「やめとけやめとけ、んなことしたって無駄だって――」
 殺意むき出しの男性陣に対してヒュウガは呆れながらそう言うと、ディスティア様が頷いた。
「とはいえ、ますますあの人の思惑通りにはまっていくだけですから、それはそれでいいのでしょう」
 ん? あれ? ヒュウガはディスティア様のほうに向きなおって聞いた。
「あれ? えっ、知ってるのか?」
「ええ、レビフィブに行く前ですね。 と言っても、私も何となくそんな感じがしていたので――」
 ヒュウガは頷いた。
「あんた、肝心な場面に結構一緒にいることが多いもんな、それじゃあだいたい想像できるか。 それに、あんたぐらいの洞察力なら時間の問題だったか――」
 それは買いかぶりすぎです――ディスティア様は謙遜しながら言うと、 ヒュウガはリファリウスに殺意むき出しの男たちを眺めながら呆れた様子で言った。
「まあ、なんにせよ、本当に滑稽だよな――」
「滑稽というより、まさに思うつぼです――」
 ディスティア様も呆れた様子で見ていた。

 後日、”セラフ・リスタート計画”についてリモート会議が催されることとなった。 その席にはクラウディアス側にはリリアリスと、隣にはリファリウスがいた。
「レビフィブの状況はそんな感じ。島はどうってことないけれども、 住民のことを考えると、ちょっといろいろと問題がありそうね――」
 リリアリスがそう言うと、セラフィック・ランドのセガーン・コプコム・トライスの3自治区のお偉いさんがそれぞれ悩んでいた。
「状況はよくわかりました、確かに今のクラウディアス連合国の状況と”セラフ・リスタート計画”の全貌、 そして、場合によってはセラフィック・ランド消滅事件の一連の話まで話をする必要が出てくるということですか。 そういうことならお任せください」
 トライス自治区のお偉いさんが言うとコプコムのお偉いさんが驚いていた。
「任せる? そんなに簡単に決断していいものだろうか?」
 セガーンのお偉いさんも驚きながら言った。それに対してトライスのお偉いさんが言った。
「これまでの我々は助けられてばかり、今度は我々が支援する番です。 しかし、支援するにしても自連合国内がしっかりしていなければその説得力もありません。 ですから、セラフィック・ランド連合国はクラウディアス連合国の一員であり、 エンブリアに住まう者の一員として、れっきとした存在であることを示さねばなりません。 我々でやるべきことはやるべきです。まさにそれこそが我々のなすべきことなのだと考えます。 ということですので、復活したセラフィック・ランド自治区の問題については我々のほうで解決しますのでご安心ください!  クラウディアス様については引き続き、計画を継続いただければと思います!  どうか、よろしくお願いいたします!」
 それに対してセガーンとコプコムのお偉いさんも頭をそろえていた。
「確かにまさにおっしゃる通り! 私どもからもお願いいたします!」
「そうですね! 後ろのことはこちらで引き受けますのでクラウディアス様は再起動計画のほうを進めていってください! よろしくお願いいたします!」
 ルーティスのナミスが発言した。
「話は決まったようですね。 クラウディアス様、復活したセラフィック・ランド自治区についてはこのルーティスでも全力で支援いたします、純粋に距離が近いこともありますしね。 ですから、計画のほうは引き続きよろしくお願いいたします!」
 ルーティスはセラフィック・ランド連合国のすぐ東の海域にあるため、確かに近い。 そう言われてリリアリスは頷いた。
「みんなありがとう。そういうことなら全面的にお願いするわね。 計画についてはこっちに任せてよ。」
 ということで”セラフ・リスタート計画”の内容が再策定された。 一つは当初の計画であるセラフィック・ランド自治区の復活プロジェクトと、もう一つは復活した自治区のケアである。 そして復活した自治区のケアの一環として1つの宿題がある、それは主にトライス自治区が担当している役割である。
「クラウディアス様! ”セラフィック・ランドの祠捜索隊”からの報告です!  元ニテント島があったとされる海域に祠らしきものが確認できたということです!  よろしくお願いいたします!」
 そう、次に行く場所を探してくれるらしい。レビフィブ島の祠を探してくれたのもトライスの捜索隊による手柄であった。 流石に彼らはセラフィック・ランド自治区の捜索隊というだけあって、どの島のどこにそれらしい祠があるのかというのを把握しているらしい。 なんとも頼もしい話である。