エンドレス・ロード ~セラフ・リスタート~

エンドレス・ロード 第1部 果てしなき旅への軌跡 第1章 セラフ・リスタート・プレリュード

第14節 将来への投資、ロスト・テクノロジーへの挑戦

 少し時間が経ったがまだ出発する兆しではない。 それどころかリリアリスもどこかに行ってしまい、リファリウスもどこかに行ってしまった。
「どーすんだよ、これ!」
 ガルヴィスはカンカンだった。そこへティレックスが来た。
「ああ、リリアさんもいないのか……」
 リリアさん”も”ってなんだ、ガルヴィスはティレックスに食いつくように訊くと、ティレックスはビビっていた。
「えっ、いや、だって……リファリウスなら今さっき、ヒュウガと一緒にガレアに行ってくるって言って船出してたからね――」
 ガルヴィスはブチ切れた。
「あの野郎! 今更なんでそんなところに行く必要があるんだバカ野郎!」
 そこへディスティア様が言った。
「フェニックシアどうしようって言ってましたけど、そのことに関連する内容ではないですかね?」
 フェニックシアなんか最後だろう! なんで最後のことを今から心配しているんだよ! ガルヴィスは顔を真っ赤にして激怒していた。 それに対してクラフォードは考え直していった。
「ん、言われてみれば確かにそうだな、この計画と”セラフィック・ランドの祠捜索隊”の報告からすると、 祠は消滅する前のもともとあった場所に出現しているんだよな? だとすると……それは確かに大問題だ――」
 それの何が問題なんだ! ガルヴィスはつっけんどんに訊いた。すると、ティレックス――
「や、ちょっと待てよ――そうなると確かに、フェニックシアのことは早めに考えておいてもいいってわけか――」
 だからなんでだよ! ガルヴィスはそう訊くとカイトが言った。
「ガル君、フェニックシアだけはほかの”島”の自治区と違って”大陸”なんだ。 しかもこの大陸だけ、ほかの地方にはない非常に珍しい特徴を持っている。 ”フェニックシアの孤児”だったんだから流石にわかるだろう?」
 はぁ? そんなもん――ガルヴィスは言った。
「フェニックシア大陸は浮遊大陸なんだろ? てことはつまり、祠とやらが宙に浮いている可能性もあるってわけだ。 だからなんだよ、空飛べる乗り物でも用意すれば簡単な話だろ?」
 だが――
「俺、生まれてこの方、空飛ぶ乗り物なんて一度も見たことがないな」
「俺もだ」
「俺も。あるんだったら一度は乗ってみたいな」
「空飛ぶ乗り物なんてずいぶんと夢のある話ですね」
「空飛ぶ乗り物ぉ? ふん、”ネームレス”ってのはそろいもそろっておめでたいヤツばかりだな!」
 と、ガルヴィスの反応に対して口々に言う男性陣、最後から2つ目はディスティア様、そして最後のは当然イールアーズである。
「えっ、ない……のか……?」
 ガルヴィスは狼狽えながら言うとクラフォードが答えた。
「昔はあったようだが、度重なる戦争のせいでむしろ飛行技術がロスト・テクノロジーとなってしてしまった。 エンブリアは昔にあったという国際機関が消滅して戦争無法地帯と化してしまった結果、 狙い撃ちされるようになって危ないということからどの国でも作らなくなってしまった。 たとえ作ったとて、ほかに着陸できる場所がなければ仕方がないということで、結局飛行機産業は世界規模で衰退してしまったってわけだな。 ちなみにこれはエンブリアの歴史を知るものだったら誰でも知っている話。 要は、飛べるものがなければ浮遊大陸にたどり着くことができないってことだ。 フェニックシア自体はエンブリスからロープウェイによる行き来ができるらしいが、 今回の祠だけの出現状況を考えると――そっちには期待しないほうがいいかもしれないな」
 マジかよ……ガルヴィスはうなだれていた。 でも言われてみれば確かに、自分がエンブリアのあちこちを旅していた時、そんなものは見たことがなかった気がする。 そうか、見なかったんじゃなくそもそもなかったのか、そう反省していた。
「イール、みっともないぞ。昔には一応あったのだから、そんな言い方はないだろう?」
 ディスティア様はイールアーズにそう言ってたしなめていた。 ディスティア様の場合、ほかの人には柔和な態度だが、イールアーズに対しては昔のディルフォードなりの態度で話をするのが特徴である。
「なっ、なんだよ、そんなものが本当にあるのかよ!?」
 イールアーズは狼狽えながら言うと、ディスティア様は考えながら言った。
「それでガレアですか……なるほど、もしかしたらリファリウスさんはこのエンブリアに飛行機を復刻する気かもしれませんね!」
 あいつのことだからあり得るかもしれない、誰もがそう思った。
「ほほう、そういうことだったら楽しみにしといてやろうじゃねえか!  寄り道するぐらいだからな、しょうもないものを作った暁にはあんなやつぶっ殺してやる!」
 と、ガルヴィスは何気に狼狽えながら言った。 いや、リファリウスのことだからその点は心配ないだろう、そう考えるとガルヴィスのこの態度はただのやせ我慢である。

 一方ガレアの工場にて、リファリウスとヒュウガは端末にある大きなディスプレイに表示されている図面を見ながらあーだこーだと言っていた。
「なーんか腹が立つな、もうちょっとマシなものないの?」
 ヒュウガはイラつきながらそう言うと、言われた帝国兵は狼狽えていた。
「これが最良のスペックです! これ以上はありません!」
 そう言われるとヒュウガは呆れていた。
「まあまあまあ、データの平面図面から立体模型を2Dプリンターで興して作るということ自体が無謀だったんだよ。 だからといってどうやら3Dプリンターはないようだし――」
 リファリウスはなだめているとヒュウガはうなだれた。
「ちっ、この世界には3Dプリンターもないのか。てことは作らないと……」
「まあ、そうなるだろうね。 でも、それって偉い遠回りだから現実的とは言えないよね。 だから実物でモデルを作らず、データ上でモデルが作れればいいと思わない?」
 どういうこと――ヒュウガはそう訊くとリファリウスは改めて言った。
「データの図面だから、その図面をもとにデータ内で作ればいいんじゃないって話だよ。」
 そう言われてヒュウガは閃いた。
「なるほど、名案だな、そっちのほうが手っ取り早いか。となると投影装置的なものが必要だが――」
「それは簡単、私に任せるといい。というか、すでにそれができそうなものは作ってあるから、あとは応用するだけだね。」
 なんだそれ、ヒュウガはそう考えると――
「そうだった、別に機械だけの力に頼らんでも魔法ならお手の物か。 それに、言われてみればマダム・ダルジャンにそれらしいものがたくさん積んであったな。 じゃあ、あとはプログラムするだけか――」
「適当なものを見繕っていろいろとやってみるよ。 ヒー様はコーディングしてくれればそれでいい。頼んだよ。」
 そう言いながらリファリウスは港のほうへと去って行った。
「しゃあない、やってやるか」
 そして、ヒュウガは得意げにそう言った。