ということで、クラウディアス南の玄関口となる港町フェラントの専用ドッグからさっそくマダム・ダルジャンIIで大海原に出た。
この船はリリアリス所有の船で、オーバースペックな仕様であることも有名。
超高速航行を展開したりなど、様々な機能がてんこ盛りである。
特に、個人所有の船とは思えないほどの圧倒的広さを有しており、全長は堂々の24メートル越えという、中型船舶に該当する大きさ。
それだけに飽き足らず、各部屋は”ユニット”で構成されており、ユニット内は魔法で不自然に拡張されており、
もはや豪華客船かというレベルの大所帯の乗船にも耐えうる構造となっている。
まさにありとあらゆるテクノロジーを駆使した結果の産物であり、リリアリスの技術力とこだわりの強さがよくわかるというものだ。
その船を動かしているのはフロレンティーナさん、彼女は中型船舶免許を取ったばかりで今は動かしたい盛りである。
「そこのセクシーな美人の操舵手さん、情報だとそろそろレビフィブ島の祠が見えてくるころですよ。」
操舵室、リファリウスは得意げに言うと、フロレンティーナさんは楽しそうに答えた。
「あらアナタ♪ 教えてくれてア・リ・ガ・ト♥」
それに対してリファリウスは得意げに答えた。
「麗しき愛しい美人妻のためなら当然のことだよ。」
冗談でもそういうこと言うから男性陣が嫌がるんだ。
リファリウスが主に男性陣から嫌われる理由は女性陣に至極人気があることだが、最大の理由はそれによってさらに調子に乗っていることが原因として挙げられる。
だが、この冗談にもノリノリな女性陣――というか女性陣はむしろ、リファリウスにセクシーな美人の操舵手さんとか、
麗しき愛しい美人妻とか、その類のことを言われるのを期待しているため、なおのこと男性陣は嫌がる、特にアーシェリス。
それが示すかのように、
「まあ、あなたったら麗しき愛しい美人妻だなんて嬉しいわ♥ あとでたぁっぷりとイイコトしてア・ゲ・ル♥」
と、フロレンティーナさんからのリップサービス返しがもれなくついてくる。
「ったく! ヤツの何がいいんだか! あんなヤツ!」
アーシェリスは激怒していた。それに対してフェリオースは、だったらわざわざ見てなきゃいいじゃんと思いながら呆れていた。
イイコトなら私にも是……いやなんでもない。
船で思い思いにくつろいだり喜び楽しんだり呆れたり、はたまた怒り狂ったりしている中、問題の地点へと接近していた。
「あれがレビフィブ島の祠の入り口か……」
と、ガルヴィスは船の上からそれを眺めていた。
5つの何かしらのシンボルを持っていけば偉大なる精霊様の守りが手に入りそうな雰囲気でしかなさそうな祠の入り口、
海の中にいきなり下へ通ずる階段とか異様な光景である。
だが、地下ゾーンは広いのだろうか、そう考えると不気味な様相をした入り口という感じである。
「なーんか、見るからに嫌な予感しかしないな……」
フィリスはそう言うとガルヴィスは答えた。
「まったくだ、勘弁してもらいたいものだな、この調子であと9個も回るんだろ? ただひたすら面倒なだけだな」
確かにそんな気がする。とはいえ、
「でも、裏を返せば、さすがに創造神エンブリスが誕生した世界……いわば創造神の世界に行くということですから、
創造神も安易な方法でそれができるようにはしていないということかもしれませんね」
ディスティア様はそう言った、そう言われたらそれまでなんだが。
創造された側が創造した側の世界へと踏み込むのはなんとなく変な感じがする、
だから本来であれば、その道をふさいでおくべきが普通だ、どうしてそのような道を開けておいたのだろうか?
「となると、”回帰への道”を用意したのはエンブリスらではない可能性が高い?」
フロレンティーナさんがそう言うとリファリウスは言った。
「それはわからないけど、少なくとも創造神らがその手段を用意しておかないと”回帰への道”なんてものは作れないんじゃないかなと思う。
エンブリア開発時に元の世界との穴を開けて設計するか、開けずに設計するかでそのあたりの仕様ががっちりと決まると思うから、
”回帰への道”があるということは最初から穴を開けている状態で作ったと考えるのが正しいだろうね。」
それに対してガルヴィスは呆れながら言った。
「あのな、お前のお得意なプログラムとやらの類じゃねぇんだから――そんな単純なもんなのかよ?」
しかし、ヒュウガは違った。
「俺も同意見だ、
逆にその異世界側から”インフェリア・デザイア”とか語るやつがいてこっちの世界に干渉してくるってことは、
つまりは穴が開いているということなんじゃないかとしか言えない気がするからな。
それこそ連中は”神の御業”とやらを利用してこっちに来ているとか言われたらそれまでなんだが、
つってもわざわざ”回帰への道”ってのがあるぐらいだし、
作り手としたら穴が開いているんだったらそう簡単には暴けない道筋も遊び心で作っておく可能性もありだ。
それに――俺としては”エンブリアはプログラムか何かの類で作られている”って言われたら、むしろその意見のほうに同調する。
作ったやつが異世界人で異世界では普通の人間だなんていうことになればなおのことな」
マジかよ……ガルヴィスは呆れていた。
「そう、私もそれには同意見だ。
でも、それにしてはよくできている世界という気がする、それだけにエンブリスはまさに偉大なる神として奉られたということだね。
とはいえ、1人でこれほどのものを作るとならば、それこそが真の神の御業と言えるもの、
というか、普通の人間というのなら実現させるには相応の労力を伴うだろう……だから”エンブリア・プロジェクト”メンバーによる組織的な開発事業だったんじゃないかなと思えるんだ。」
リファリウスはそう言った。つまりは所謂神の使徒がいるということである。
まあ、そのほうがエンブリス教信者に対してもちょうどいい感じに説明が可能のようだ。