と、クラウディアス特別執行官美女陣熱が入りすぎたところで話を戻すことにしよう。
魔法の光度があまりにまぶしすぎるため、頭上から光を照らすように位置を調整、光度も調整していた。
そして、職員の誘導もなく、リファリウスとアリエーラさんが先陣を切ってそこそこ長めの階段を下りて行った、一本道なので迷うこともないわけだが。
すると、なんだか古代遺跡みたいな場所へと到達し、リファリウスは石壁に手を当てて考えていた。
「なるほど、確かに人工物、
まあ、階段というものがそもそもそうなんだけれども、洞窟内自体が全部そうなわけか。」
誰が作ったのだろうか、それはわからないがとにかく、職員は少し先に進むと――
「あっ、ここです! こちらに来てください!」
職員は2人を促した、するとそこには――
「これが”祭壇”、なるほどね、コエテクと同じものかはともかく、ここにもそれらしいものが一応あるのか――。」
リファリウスは考えると――
「ん? これは、文字ですか?」
アリエーラさんは”祭壇”の前でしゃがみ、”祭壇”を調べていた。
”祭壇”には文字のようなものが刻まれており、彼女はじっとそれを観察していた。
それに対して職員は言った。
「ええ、そうかもしれませんし、そうでないかもしれません。
というのも、その文字というか文様について調べたのですが、エンブリアにあるどの文字ともまるで一致しませんで、
さらに調べたところ、似たような文字のパターンなどもないことからロスト・グリフと定義されています――」
ロスト・グリフ、失われた文字。今では読み方のわからなくなった文字は、エンブリアでは文様と定義されている。だがしかし――
「いや、これはロストしていないから文様ではなく文字だ。」
と、リファリウスは得意げに言った、何故かというと――アリエーラさんが先ほどリファリウスが放った魔法と同じもの、発光体を発動する魔法を展開した。
だが、魔法は黄色い光で展開中のままを維持しており、完全発動に至っていない――
「さあ、見てみなよ。これと同じ文字のものがどこかにあるハズだ。」
と、リファリウスは再び得意げに言った。
魔法発動時のエフェクトに、所謂ルーン文字的な文様が浮かび上がっているわけだが、
彼女が発動した魔法も例外ではなかった。
しかし――
「これは先ほど発動さた発光体の魔法!?
確かに改めて見せられても私も見たことがない魔法系統ですが――でも、言われてみれば確かに同じ文様……
いえ、文字があるかどうかはともかく、文字の傾向は似ているように思いますが、一体これは――」
職員はそう言うとアリエーラさんは魔法をキャンセル、展開している黄色の光のエフェクトも消えていった。
すると、アリエーラさんが職員の問いに答えた。
「この文字はエルフェドゥーナ文字と呼ばれるものですね。」
そんな文字、初めて聞いた職員だった。
そして、エルフェドゥーナ文字が展開される魔法といえば1つしかなかった。
「せ、精霊魔法、ですって!? あの伝説の大精霊のみが扱えるというあの!?」
リファリウスは頷いた。
「私らも使えるということで使い手は伝説の大精霊のみなのかどうかはともかく、
正確には”フェドライナ・ソーサー”と呼ばれている。
もちろん、ほかの系統の魔法のように専門的な呼び名は好まれないから一般名に落とし込まれるわけだけど、
”フェドライナ・ソーサー”についてはその性質上、一般名が全く考えられていない。」
リファリウスは話を続けた。精霊魔法と言えば普通はほとんどの魔法も精霊魔法に該当するわけだが、
伝説の大精霊が扱う特殊な魔法という特殊な性質が故に結局”フェドライナ・ソーサー”には便宜的な呼び名がつけられなかったため、
仕方なく精霊魔法という呼び名で定着するようになったのである。
つまり、エンブリアにおいて精霊魔法と言えば”フェドライナ・ソーサー”に特定して示すものであると思えばいい。
「で、肝心の効力だけど、まさに原始魔法中の原始魔法で、発動に関しては超シンプルなのに効力は絶大。
ただ、あまりにシンプルすぎて返って使用が難しいとされている、
たとえ大精霊でも才能がないと使うことすらままならないというレア魔法だよ。」
そんなことを平然と言うこいつ、知っているから言っているかもしれないがますます何者なんだとしか思えない、そもそも使えている時点で。
いや、でも……”ネームレス”ならありうるのだろうか、職員は息をのんだ。それはそうと、
「そっ、それで……まさか、この祭壇の文字が読めるのですか!?」
するとリファリウスは得意げに言った。
「そうだね、とりあえずやってみようか。」
えっ、本当に!?
そして――
「”トライスは封印されるであろう、その時はいずれか訪れる”――うーん、意味深だな……」
リファリウスはそう言った、えっ、封印って!? 職員は慌てて聞き返した。
「わからないけれども――もしかしたらセラフィック・ランドの消滅のことを示しているのかもしれない。
まあ、それよりも続きがあるみたいだよ。」
それをアリエーラさんが読み上げていた。
「”しかし、トライスは回帰への道を開く最初の鍵である。封印の時が訪れる前に我が名を唱えよ”、ですね――」
ど、どういうことだ、職員はまた訊き返した、というか、”我が名”とは?
「リファリウスさん、もしかして”あれ”では!?」
リファリウスは頷いた。
「そうだね、”あれ”しかないよね。」
その際の出来事については”セラフ・リスタート計画”を提唱した”天命の刻32”の席で話題に出たものである。
「それで、セラフィック・ランドに赴いた際に何か発見がありましたか?」
発言者はグラント、ディスタードのヘルメイズ領の将グレストの一人息子で、
今ではヘルメイズ党代表という立場で国を動かしている。
というのも、今やディスタード”帝国”など、本土軍が崩壊してから見る影もなく、
元は王国体制の国であることから”王国”を名乗ってはいるものの、
”帝国”に王族が殺されてからは主もおらず、国を立て直すために政党を作って民主政治へと切り替えようとしているのであった。
だが、ディスタードは王国として昔の名残を残すという動きがあり、結局”ディスタード王国”という名で国を存続させることになった。
なお、ディスタード帝国の時のヘルメイズのトップであるグレスト将軍はもはや表舞台に立てるような身体ではないため、
表舞台に出るのはもっぱらグラントの役割、彼が実質的なトップである。
そして、グレスト将軍はそのままグレスト将軍として存在しているようだ。
ともかく、グラントの問いにリファリウスが答えた。
「ああ、ビンゴだったよ。
なんといっても私らが第13番目のトライスに先に行ったことが正解だったらしい。」
ルーティスのナミス市長、ルーティス自治区の責任者の一員であり、
クラウディアス特別執行官との交流も深く非常に仲が良いのが特徴で、
クラウディアス連合国に関する外交についてはほぼ彼女に一任されているほどらしい。
ついこの間なんかはアリエーラさんとフロレンティーナさん、
そしてリリアリスと一緒に買い物なんかに出かけて女子トークに花を咲かせていたほどの仲である。
それについてはまた今度にしよう。
その彼女が発言した。
「それはやはり、この世界ができた順とは逆に行ったことが幸いしたということですね?」
リファリウスは頷いた。そしてことの一部始終を伝えた。