ララーナはアンテナを破壊した。
だが、それと同時にディスティアとイールアーズのところでも異変が起きていた。
「ん? なんだ? 攻撃が緩んでいく?」
生物兵器の攻撃の手が緩んでいった。それに対し、
「なっ、なんだ!? おい、どうなっている! さっさとそいつらを始末しろ!」
男のほう……テラ・パワー・コア研究員代表なるそいつは狼狽えていた。すると――
「まっ、まさか、発信源がやられたとでもいうのか!?」
発信源をやったのか、ディスティアはそれを察してイールアーズに言った。
「イール! 今がチャンスだ! ルイゼシアを助けるぞ!」
それに反応したイールアーズは頷くと、生物兵器へと1人立ち向かい、
ルイゼシアの身体を捜索し始めた。
すると――
「くっ、動くな!」
代表は銃を突きつけてきた、だが――
「もはやこれまでです、この時点であなたの命運は尽きているようなものですから」
ディスティアが素早く動いており、銃を握っている代表の腕をへし折りつつ、その場で軽くねじ伏せていた。
「ぐはっ! つっ、強い――」
イールアーズは彼女の名前を呼び続けながら生物兵器の胴体を破壊しながら無我夢中で探していた。
するとそのうち、ルイゼシアの上半身が!
「ルイゼシア! 大丈夫か! しっかりするんだ!」
イールアーズは彼女にそう必死に訴えていた。だが、しかし――
「私のこと、必死に探してくれていたのね、ありがとう――」
と、どこからともなくルイゼシアの声が。この上半身がしゃべっているようではなかった。
「そいつが言っていたことは本当よ、私の意識は既にこの兵器の中にある、
兄さんが見ているそれはもうただの抜け殻なのよ、ごめんなさい――」
そっ、そんな――ディスティアはがっくりと肩を落としていた。
だが、イールアーズは――
「うるさい、そんなの、関係あるか。お前はお前だ、俺がずっと探していたお前以外の何者でもない!」
そういうと、イールアーズはルイゼシアの上半身をしっかりと抱きしめていた。
それに対し、ルイゼシアは――
「にっ、兄さんったら――でも、嬉しい、兄さんに会えて――」
だが、この後どうするかである。
イールアーズはもはやルイゼシアから離れようとしないのだが、
生物兵器となってしまったルイゼシアは、なんと――
「兄さん、助けに来てくれてありがとう。でも、そろそろお別れの時間だね――」
お別れ!? どういうことだ!? イールアーズは慌てふためいていると、
なんと、ルイゼシアの上半身がイールアーズのみぞおちめがけて飛び出してきた!
「ぐはぁっ……、ルーイ……、ルイゼシア……」
イールアーズはその場で気を失った。そこへディスティアが駆け寄ると、
「あなたはディル兄さん!」
ルイゼシアは今度、ディスティアに反応した。
「そっ、そうだけど……どうしてイールにこんなことを?」
ディスティアは驚きながら聞くと、彼女は答えた。
「ごめんなさい、兄さんのことだからきっと、私のことを諦めないかと思って――」
確かに、それはその通りかもしれないが、でも、どうして? ディスティアは訊いた。
「私の核……連中がこんな風に私を改造してからとても不安定なの。
だから……いつ爆発するかもわからない」
そんな! どうすれば――すると、彼女は言った。
「私はもういいの、兄さんにも会えたし、こうして助けてもらえたから、私はそれで充分幸せ――」
まさか、そんな……
「ねえ、エレイアは元気? お父さんは? みんな無事でいる?」
ディスティアは彼女の話に涙しながら言った。
「ああ、みんな、みんな元気だよ」
すると、彼女は――
「あれ、あなた、本当にディル兄さんなの? なんだか感じ変わった?」
すると、ディスティアは少し気を取り直し、楽しそうな感じに答えた。
「あれ、バレました?」
それに対してルイゼシアも楽しそうに答えた。
「うふふっ、ええ、でも、なんだかとっても楽しそう。
ディル兄さんったらイケメンなんだから、もうちょっと肩の力を抜いて明るく振舞えばいいのにってエレイアが言ってたけど、
本当にその通りになったんだね! 私も今のディル兄さんのほうが好きだよ!」
そう言われ、ディスティアは涙しながら言った。
「ルイゼシア……助けられないのか?」
すると、ルイゼシアの身体から何かが飛び出してきた。それは、彼女の核の一部だった。
「これを私だと思って持っていってくれればそれでいいわ。
さて、もうあまり時間がないわ、みんなと一緒に、ここから逃げて!」
そういわれ、ディスティアは核を拾い上げると一旦目をつむっていた。
そして、見開いた後、覚悟したかのように言った。
「ルイゼシア……助けられなくてすまないな」
「いいのよ、私はもう、兄さんに助けられた。
イール兄さんにもディル兄さんにも、両方の兄さんに助けられたの!
それに、このままでいることのほうがつらいから、むしろ私を救ったのだと思ってくれればそれでいいわ」
そうか……ディスティアは涙しながらそう言いつつ、イールアーズをいつものように背負っていた。
「ふふっ、兄さんをよろしくね。
それから、みんなにも――エレイアにもお父様にもよろしく言っておいてね」
それに対し、ディスティアは涙をこらえて「わかった」と一言だけ言った。