あの後、一行は船のもとへと到着、そして、遠目にはものすごい規模の大爆発が起こっていた。
それから数時間後、イールアーズが休んでいる船室にて――
「大丈夫か、イール?」
ディスティアがそう聞くと、イールアーズはがっかりしたような表情で答えた。
「ああ、なんとかな。俺は結局、ルーイに助けられただけだったってことか……」
泣いているのはわかる、やせ我慢しているようだった。
「違う、お前がルーイを助けたんだ、彼女だってそう言っていただろう?」
すると、ディスティアは目の前に石のようなものを置いた、ルイゼシアが託した彼女の核である。
「流石は神授の御霊だな、本人から離れてもなお神々しく生きているような感じだ、
まさにルイゼシアが喜んでいるようだ」
そう言って、ディスティアはその場を後にした。
扉が閉まると、イールアーズは柄になく大声で泣き叫んでいた。
ディスティアがリオーンのいるところへ戻ってきた。
リオーンの目元はうるんでいた。
「目からはどうやら相当の汗でも流れたようだな」
「っせぇ! そうだよ、汗が噴き出たんだよ! いろいろとあってな!」
ディスティアはため息をつきながら言った。
「まったく、あんたは親なんだから、それぐらいは別に素直でもいいと思うんだけどな、
ったく、どいつもこいつも、本当に素直じゃない。
ちなみに私も泣いた、もはやしばらく涙も出ないほどにまで枯れ果ててしまったことだろう。
だが――」
だが――なんて言ったらいいのか言葉がみつからなかったディスティア、
そのままその場を後にすると、リオーンは再び目から大量の汗が流れ落ちてきた。
ウィーニアとアローナは2人でシェトランド人の核5つを目の前にして話し合っていた。
「エレイア、こうなることを予感していたみたいね、だから一緒に行かなかったんだ――」
と、アローナは言った。
だが、それでも泣いているエレイア、もはやなんとフォローしてあげたらいいのかわからなかった。
「でも、これはこれで深刻よね、ルイゼシアのためにも、私たちはしっかりしなきゃ!」
ウィーニアはそう言うと、端末に通信相手の顔が映った。
「そっか、そんなことが――言葉もないわね――」
相手はリリアリス、事の一部始終を聞くと、彼女もがっかりとしていた。
「つまり、ダムサード大陸北東部で起きたっていう大爆発はルイゼシアなのね……」
ウィーニアは元気なく「はい」と答えた。だが、それよりも伝えなければならないことがあった。
「姉さま、施設内でこんなものを発見しました。
実物は5つともここにありますが、どうしましょう?」
リリアリスは受け取ったファイルの中身を確認すると、
それは、エレイアの時にも問題になっていたアンテナの受信機と、シェトランド人の核がくっついているものだった。
そして、それは5つとも、ウィーニアとアローナが持っていた。
「本来ならシェトランドさんに渡して葬ってもらうことにしていたのですが、
アンテナがくっついているので、ルーイのためにも調べてほしいって言われて私たちで預かっています」
リリアリスは頷いた。
「わかった、そういうことならこっちで一旦引き取る。
けど、なんだか嫌な予感がするわね――」
そして、その嫌な予感は的中。
クラウディアスにおいてもごたごたが発生していたが、それは落ち着き、
5つの核については随分と後になってからディスティアとイールアーズ、そして、ララーナにも伝えられた。
「なんだ、何かわかったのか?」
イールアーズがなんだか不思議なぐらい穏やかな感じに聞いてきた。それはそれはもう異様ともいえる感じだった。
「結論から言うと、このシェトランドの核はいわゆる”電池”ね。
ただ、このアンテナの能力も加えることで普通のヒューマノイドタイプの人間の神経系ですら操作することもできるかもしれないっていう見立てね――」
ということはつまり――ララーナは言った。
「そうですか、そういうことなら、確かにその通りですね――」
そう、その5つのアンテナが取り付けられている核は、あの時ララーナとメルルーナが対峙した5人の男の体内から発見されたものだった――
すると、ララーナは悩んでいた。
「ですが……問題は1つだけ足りていないことですね……」
それについてはリリアリスもウィーニアから聞いて把握していた。
核はいずれも識別番号が振られて管理されていたようだが、1つだけ足りないのである。
「純粋に1つだけ欠番なんじゃないのか?」
イールアーズはそう聞くと、ララーナは答えた。
「それも考えたのですが、おそらく、この核が置いてあっただろうケースが実際に6個あったことなどから察するに、
本当に6つあったように思うのです。
それに、欠落しているロットのケースを確認すると、あからさまに持ち去られたような痕跡がありましたので、おそらく間違いないかと――」
つまりは1個だけ行方知れず……
「本当に、嫌な予感しかしないわね、ルイゼシアのためにも、みんなで引き締めてかかるわよ。」
いつになく弱気なリリアリス、それはほかの全員もそうだった、ルイゼシアの件で相当堪えたのである。
あの後、ララーナとリリアリスはヒュウガと一緒に話をしていた。
「そうか、シェトランドの連中には伝えたんだな――」
ヒュウガは言うと、ララーナは力なく言った。
「残りの1つの所在、気になりますね――」
ヒュウガが訊いた。
「でも、残りの1つってそれこそルイゼシアって可能性はないのか?」
「どうかしら? でも、ルイゼシアの体からむき出しになった時点で不安定になるほどよ、
ケースに入れて保存しとくこと自体難しいんじゃないの?」
ヒュウガは考えた。
「だよな、核だけ取り出してって感じじゃないもんな。
核だけって感じでなくて、ルイゼシアごと誘拐されているあたり、その線はないか――」
ヒュウガは訊いた。
「そういや、あの5つの核はどうした?」
ララーナが答えた。
「いずれもオウルの里から持ち出された核だったようで、注射を施したのちに無事に埋葬されたようです」
「ったく、ずいぶんと墓を暴いてくれたみたいで……腹が立ってくるわね。」
通常は核が傷ついた時点でロストしてしまうシェトランドの核だが、やはりエレイアの核の性質から学んだのだろうか、傷ついた核をも再利用できるようになってしまったらしい。
そこで、リリアリスが前々から考えていたプロジェクト、薬による核の効力を制限するプロジェクトが開始された。
だが、それには大きな問題が――
「問題は、あのシェトランド人たちをどうやって黙らせるかね――」
核の効力を制限するには薬の投与がキーになるわけだが、その手段が注射で、シェトランド人はそれをすこぶる嫌がっていた。
「ったく、子供かよって感じだ。ちょっと考えないといけないな――」
だが、ララーナはにっこりとしながら言った。
「ですが、男の人たちならなんとなくやれそうな気がしますね」
なるほど――リリアリスはそんな彼女を見ながら納得していた。
「ということはモノ(酒)で釣る作戦か、女はその点難しいから――ちょっと面倒しそうね。」