エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

遥かなる旅路・天使の舞 第5部 精霊たちの反撃 第6章 動き出した魔女

第125節 シェトランドの本気

 すると、セイバルの研究員らしき存在が現れた。
「来た来た、少なくとも、この土地に何かがあるのは間違いなさそうだぜ」
 ヴィーサルはそう言うとウェザールが合図していた。
すると、ほかのシェトランドたちがその合図により、次々と行動をし始めた。
「何をするつもりでしょうか――」
 ララーナが言うと、リオーンは「ま、見てな」
 そして、シェトランド人は次々にことを起こすと、周囲に気を配りつつ、現れた研究員を気絶させ、 その研究員が開きかけていた研究所の入口を暴き、侵入経路を確保してしまったのである。
「見事なお手並みですね!」
「すごいですね!」
 と、ララーナとメルルーナが感心していると、リオーンは少々得意げに言った。
「ふふん、だーろ? こういうことに関しては頼りになる連中なんだ。 だからシェトランドのもとに嫁に行くんだったらオススメするぜ、オウルの里の連中をな!」
 すると、島出身の連中は一度にずっこけた。
「リオン! せっかくのきれーなねーちゃんなのにそりゃねーぜ!」
「そーだ! そーだ! 今のはあんまりじゃねーか! なんで俺らは省られるんだよ!」
「まったくだ! そりゃあシェトランド差別ってもんだ!」
 というヤジに対して反論するリオーン。
「だーまーれ! あんな美人のねーちゃん捕まえたいんだったらまずは学を積んで来やがれ!  今からでも遅くねえ、サボってばかりいた学校にきちっと行きやがれ!」
「るせー! テメー、人のこと言えんのかよ! オメーだってほとんど学校行ってなかったじゃねーかよ!」
「俺は勉強自体はきちんとしてたの! だから王様になれたの!」
「王様やらされるためにいやいや勉強させられてたクセによぉ!」
 ……シェトランド人は余程苦労しているようである。 その一方でオウルの里の住人達。ワイズリアは腕を組んでなんだか誇らしげな態度だった。
「なかなか魅力的な話だったが、俺、妻子持ちなんだよな」
「俺も妻子持ち。しかも浮気したら即殺されるっていうオマケつきだ。 息子の嫁にとも思ったが、あっちもすでにガキ作っちまってるしなぁ……」
 と、ヴィーサルとウェザールがボソボソと話をしていた。
「俺の手にも届かず、リオーンのところもご覧のあり様、 んで、最終的にはワイズのところってか。 でも、相手はプリズム族だぞ、いいのかそれで――」
 バフィンスは冷静だった。
「別に彼女らがそうすると決めたわけじゃない、早とちりは禁物だぞワイズリア」
 ディスティアはワイズリアの後ろから釘を刺すようにそう言った。
「わっ、わあってるよ! ちょっとぐらい悦に浸ったっていいじゃねえかよ!」
 何なんだこの人たちは、なんでもいいが緊張感のない……

 そして、セイバルの研究所へと一気に侵入、周りはなんだかとても暗々としていた。 配電設備を見つけたシェトランドたちが破壊活動をしたことで、非常電源に切り替わっているようだ。
「よし、いい感じだぜ!」
 リオーンがそういうと、ララーナが訊いた。
「みなさん、施設内を把握しているみたいですね?」
 ディスティアが答えた。
「設計が決まっているのかもわかりませんが、これまで襲撃したセイバルの研究所については大体似たような構造になっているのです。 それに、何度も襲撃しているため、どういう感じの部屋がどういう感じに利用されているのかもほぼ把握している者もいますね」
 なるほど、ララーナとメルルーナ納得した。
「さてと、そうと決まったらディル、あとは頼むぜ」
 リオーンと一旦分かれた。
「というわけだ、お前にも期待しているからな」
 ディスティアがそう言うとイールアーズは「フン」と、相変わらず可愛げのない返事をした。
「改めてよろしくお願いいたしますね、ディア様!」
「ディア様! よろしくお願いいたします!」
 一方で、ララーナとメルルーナはディア様に対して嬉しそうに答えた。

 4人はそのまま研究所の渡り廊下を渡っていた。
「地下なのにこのような大きな空間が――」
 ララーナはそう言うと、ディスティアは答えた。
「地下に作るといっても昔の鉱山の跡などだったりします、ここもそのようですね。 ですが、これまでの研究所の性格的にはこの奥に重要なものが潜んでいるハズです、行きましょう!」
 ディスティアはそう言いつつ、イールアーズを心配しながら言った。
「イール、大丈夫か?」
「おっ、俺は――」
 どうしたのだろうか、ララーナとメルルーナは近寄って話を聞くことにした。 そして、ディスティアが落ち着いたような感じで聞いた。
「いるんだな、間違いなく――」
 だが、イールアーズは悩んでいた。
「ああ、間違いなくいる。 でも、どうしてなんだ!? 何故だかわからんが行ってはいけないような気がするんだ!」
 どういうことだろうか、だが、ディスティアが頷いた。
「ルイゼシアの魂である核がそう訴えているんだな、それは私にも感じる。 ルイゼシアは神授の御霊、その強力な力を利用して私ら全体にそれを訴えているんだ。 そういうことならルイゼシアの意思を尊重したいところだが――」
 それに対し、イールアーズは反論。
「どうしてだ!? 近くにあいつが、すぐ近くにあいつがいるんだぞ!  俺はあいつを助けるためにここにやってきた! 諦めろとでもいうのか!?」
 ディスティアは落ち着いて話した。
「気持ちはよくわかるが――でも、彼女の訴えかけからすると彼女の状態がどうなっているのかわかるだろう、 そんな姿を誰にも見られたくない、そういうことなんだろう――」
 それを言われると――イールアーズは何とも言えなかった。だが、彼女を諦めたくないことだけは変わりなかった。
「なっ、何が起こっているのです?」
 ララーナは訊くと、その時、地鳴りが――
「なんです!?」
 メルルーナは驚きながら言うと、ディスティアが言った。
「くっ、ここまで来たことにもう感づいたか。とにかく、先を急ぐぞ、ルイゼシアの思いを無駄にしないために!」
 と、ディスティアが言うが、イールアーズは……
「おい! そっちじゃない! くそっ、あいつ――」
 どうやら、ルイゼシアのいるところへと行ってしまったようだ。
「やはりこうなってしまいましたか、ある程度は予測していましたが……。 すみません、私はイールを追いますので、そちらのほうは任せても大丈夫でしょうか?」
 そう言いながらディスティアはララーナに説明すると、彼女は頷いた。
「ええ、イールさんのお気持ち、痛いほどよくわかります。ですから、ディア様もお気をつけて!」
「お2人とも、どうかご無事で!」
 そう言われると、ディスティアはイールアーズの後を追った。