エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

遥かなる旅路・天使の舞 第5部 精霊たちの反撃 第6章 動き出した魔女

第121節 ダムサード大陸へ

 一行はセイバルの拠点となる場所へと進むことにした。 侵入経路としては例によってガレア軍の手引きである。
 バルナルド国から侵入し、古い洞窟を通ってセイバルのいる場所まで進むという方法があり、 今回はそれを伝って進むことにしたのである。
「バルナルドってやや距離がありますが、エダルニアの東方にある国ですね。 バルナルドはガレア軍と交流がある国らしいですから、つまりは段取りを整えてもらったのでしょう」
 と、ディスティアが言った。でも、バルナルドからどうやってセイバルの拠点まで侵入するのだろうか、 シェトランドたちはそれが気になっていた。古い洞窟とは? 気になることは多かったが――
「バルナルドのその洞窟って言ったら俺も使ったことがあるぜ。 ビザイストって勢力が――今はもうないんだが、そいつらに加勢しようとした際、 目的地に着くまでに直接ダムサード大陸に乗るのが難しいってんでバルナルドに協力を要請したところ、 その洞窟を使わせてもらったぜ」
 と、リオーンが説明した。また新たなワードが出てきて理解が追い付いていないシェトランド勢がいたが、 ある程度は無視した。要するに、
「これから向かおうとしているのはダムサード大陸の北東部で、そこにセイバルの拠点があるってことだ、 そのためにはバルナルドにある洞窟から行かなければいけないってことだ」
 先んじて船の上で待ちぼうけしていたイールアーズがそう説明したが、それでも不明な点が。
「ダムサード大陸の北東部にセイバルの拠点があるんなら直接乗り込んじまえばいいじゃねえか、 なんでそんな面倒をしなければいけねえんだ!」
 と、ヤジは全く納得していなかった。それに対してディスティアが説明した。
「残念だがダムサード大陸には社会主義の国が多くてな、グレート・グランドは当然のこと、 我々と協力体制にあるクラウディアスにガレア、デュロンドなんかはもちろんのこと、 そうなると、我々シェトランドの民も同じように敵視している可能性がある。 つまるところ、そういった勢力の船は軒並み敵扱いだから、迂闊には上陸できない。 ということは遠いところから上陸することを考えないと上陸前に沈められるということだ」
「じゃあよお、だったら連中にとって敵視してねえ船を選んで乗ればいいじゃねえかよ!  って思っただろ?」
 と、ワイズリアがそう言うと、ヤジのうちの何人かは図星をつかれていた。
「んな都合のいいものがありゃあ苦労しねえもんな。 ったく、こんなレベルの連中ばかりで本当に申し訳ないなあ――」
 と、リオーンは申し訳なさそうにララーナとメルルーナに対していった。
「た、大変ですね――」
 ララーナとメルルーナはリオーンのことを察してそう言った。

 プリズム族の2人はウィーニアとアローナ、そしてレナシエルことエレイアと共に船室で話をしていた。 シェトランドの野郎共ばかりである中で数少ない女性陣だが、やはりガレア軍の船であるという都合、 女性贔屓と言わんばかりに女性向けの設備が充実していた。
「シェトランドとプリズム族の話とは言いながらあなた方もついてきてしまっていますね」
 ララーナはそう聞くと、ウィーニアは心配そうに訊いた。
「だ、ダメでしたか?」
 ララーナは首を振った。
「いえ、私たちはいいのですが、シェトランドさんとしてはそれでいいのかと思いまして――」
 アローナは呆れながら言った。
「まあ、バフィンスがくっついちゃってきているしね、私らなんかはその次いで。 どーせリオーンとワイズとバフィンスなんかはいつも通り呑んだらそんな細かいことなんか瞬時に忘れるだろうし、 それに、シェトランドのことだから多分私らのことなんて忘れているわね」
 えぇ……
「ま、いつものことだけどね」
 ウィーニアも追随、いつものことって――あれほど気にしていたのに案外大雑把なんだなとララーナは思った。
「でも、私たちは船の上でお留守番だから、みなさんで頑張ってきてください!」
 と、ウィーニアが言うと、レナシエルが言った。
「私もお留守番しています。 プリズム族さん、よろしくお願いいたします!」
 ディスティアというか、ディルフォードと一緒に行かないのか、そう聞くとレナシエルは答えた。
「私の役割は彼を待つことですので。 それに、ウィーニアたちの手伝いもしたいし――」
 彼を待つのが役割――なんか心に響いてきそうだ。