それから少し経ち、今度はワイズリアが現れた。
「おう、ヴィサルとヴェサル、先にいんじゃねーか」
それに対してヴィーサルが言った。
「ワイズ、それどころかお客人だ」
彼は促すと――
「おお、そうそう、確かプリズム族のねーちゃんがいんだっけな」
情報が早いな、ヴィーサルがそう聞いた。
「最近は話を聞いてから動くってクセをつけるようにしたもんでな。
でないとローナやリファにも嫌味言われるからな」
「何を言ってる、当然だろ? 大体俺らもずっと言ってるじゃねーか!」
「へん! お前らが言ったところで俺には響かねえんだよ!」
ヴィーサルとウェザールはもはやお手上げだった。
「あ、それからこっちに来る前につかんだ情報だが――」
と、ワイズリアは話を続けた。
ヴィーサルとウェザールは慌てて集会場へとやってきた。
「なんだ、どうした、2人とも――」
リオーンが言うと、今度はそこへワイズリアがやってきた。
「よう、ワイズじゃねえか! そうか、来たんだな――」
そこへワイズリアが言った。
「おう! 来てやったぜ! でも、そんなに悠長なことしている暇はねえみてえだぜ!」
そう言いながらワイズリアは座り込むと、くつろいでいた。酒はねえのか、そんなことを言っていた、どの口が悠長って?
とにかく、ヴィーサルは説明した。
「……まあ、ワイズが持ってきた情報なんだが、
セイバルとロサピアーナってのが同盟を組んでいるということらしい」
で、それがどうした――シェトランド人はそろいもそろってそういう顔で返答しているが、実際にはなかなか重めの内容である。
「セイバルのやつらがどんな奴と手を組もうが関係ねぇな!
とにかく、敵とあらばぶっ飛ばせばいいだけだぜ!」
それに対してウェザールが突っ込んだ。
「でも、相手はあのロサピアーナだとちぃっと話が変わってくるぜ」
だが、そこにヤジが……
「セイバルがほかのヤツと手を組むってどういうことだよ!?
セイバルのやつらめ、俺らはシェトランドだけで勝負しようって考えてんのに汚ねえやつらじゃねえか!」
「待て待て、あのプリズム族のねーちゃんもいるぞ、だからつまり、
こっちが2種族でやってくるから向こうもそれ相応に相手してやろうって考えたわけだ」
「なるほど! そういうことか! セイバルめ、考えたな――」
「でも、おかしくないか?
だって、シェトランドもプリズム族も少数民族だぞ、そもそも少ないのにわざわざ勢力増やそうとしてくるか?」
「民族の数なんざ関係ねえんだよ、こいつは戦争だ、
つまり、相手が増えるのならこっちも増える、そう言う理論ってやつに基づいてやるのが戦争ってなもんだ」
「なるほど! 確かにそう言われてみればそうだな!」
そんな話を聞いているヴィーサルとウェザール、そしてルジーナは頭を抱えていた。
「ララーナさん、バカばかりの集いで本当に申し訳ないな――」
「まったくだ、同じ種族として恥ずかしい――」
「まったく。いい加減にしてほしいわね――」
みんな苦労しているんだなとララーナは思った。
「じゃあなんだよ、つまりはセイバルがロサなんたらってのと手を組んだ理由ってのは俺らとは全く関係がないってことか!?」
ヤジがそう言い放つと、ヴィーサルは答えた。
「そういうことだ。やつらが手を組んだ目的はただの技術提供、技術を開発するには金がかかるからな、
だから、俺らの核とかを使って得られた技術とやらを売って金を手に入れるのがやつらが手を組むことにした目的で、
別に俺らがプリズム族と手を組むことにしたから同じことをしてみたとか、そう言うわけじゃないんだ」
なんだ、そうだったのか――と、ヤジは安心していたが――
「おい、そこは安心することじゃないぞ。
連中が金を手にしたってことは、それだけ俺らの核を研究するための力を手にしたってことだぞ」
そう言われるとヤジは動揺し、一気におとなしくなっていた。
「なんだか急に静かになられましたね――」
ララーナはそう聞くと、ヴィーサルは言った。
「こいつらは基本単純だからな、
自らの身に危険が迫っていることを知った途端に手のひらクルーだ」
というより、シェトランドの背景的にこの話の流れでその判断が遅くないのだろうかとは思うのだが。
「まあ、シェトランドだからな、他を寄せ付けない民族性っていうのは伊達じゃねえってことだ。
自分たちの身にどのようなことが降りかかるのか、直接かかわらなければ我関せず、
だから、直接どういう影響があるかをしっかり言ってやんないとわからねえってことだな。
まあ、言ってやれば……ご覧の通りさ」
と、ウェザールは補足した。そういうことなのか、ララーナはそう思った。
プリズム族なんかは密かに暮らしつつも、実際には他所の種族のオスを獲得すべくこっそりと行動する種族、
ある程度は他種族に依存している種族である。
プリズム族とは同じように隠れ住んでいる種族とはいえ、その目的は違うようである。