ララーナたちはリオーンに促されてリオーンの家へと案内された。
集会所みたいな家で、軒先に人だかりがあった。
なんだかどこかの国の古き良き時代の民家の様相である、日の丸でも見えそうだ。
そして、そこにはバフィンスが囲炉裏を囲んでシェトランドたちと話し合っていた。
「おう! とりあえず面倒するからな、予め話だけは通しておいたぜ!
言ってもシェトランドだからな、話をする上で”言葉のあや”を使ってるから、
そこんとこよろしく頼むぜ!」
……つまりバフィンスは、あることないこと話をしたらしい。。。まあ、その辺は適当に合わせるしかなさそうだ。
「悪りぃな、なんつってもどいつもこいつも我が強ええもんでな。
ちょいとうまい具合に話をしねぇと、すーぐ”ノー”と言いやがる……」
リオーンはそう言うと、バフィンスと話をしていたシェトランドたちが言い返した。
「なーに言ってんだリオン! 我が強ええっつったらオメーが一番じゃねえか!」
「そうだそうだ!」
「言うに事欠いてアホかテメェは!」
「こんな美人が困ってんのに先に突っぱねたのはあんたでしょ!?」
それに対してリオーンが噴火……
「あん? んだとてめーら! 誰が一番頑固だと!? 表に出ろやゴルァ!」
それをバフィンスが静止した。
「まあ待てや、こんなところでんな話してたって仕方がねえぞ。
さっさと終わらせてさっさとうまい酒でも飲もうぜ!」
そう言うと、リオーンはデレた様子で言った。
「確かに、それもそうだなァ! セイバルの連中なんざさっさととっちめてさっさとうまい酒を飲もうぜ!」
おそらく、彼の頭では何においても酒が優先されるようである。
というか、これがシェトランド……前途多難である。
とにかく、ララーナたちは会議に加わり、話をし始めた。
流石にこの場でいきなり酒盛りを始める者はいなかったが、それにしても酒臭い場所だった。
「とにかく、セイバルの場所はつかんでおいたわよ」
1人の女性のシェトランド、さらに話を続けた。
「つってもぜーんぶローナとシャトからの情報なんだけどね」
ローナことローナフィオルと、シャトという人がそれぞれ調査をした結果なんだそうだ。
それに対してウィーニアが訊いた。
「ん? ローナとシャトさんってことは……ガレア軍が動いているの?」
リオーンが話をした。
「いんや、あのねーちゃんたちはガレアとは別に動いているって言ってたな。
それこそ、シェトランドとして俺らと一緒になってセイバルをやっつけようってことになっているからな。
言ってもあのねーちゃんたちのことだから最後にあのリファってやつにぜーんぶ話をするんじゃねーかと思うんだが、
だがまあ、別にそれはそれでいい、俺らのやり方でやらせてもらえればなんだってな」
それに対してララーナが訊いた。
「となると、私は私らのやり方でやることもあり得るのですが、それは――」
リオーンは答えた。
「ま、そいつはお互い様だからな。それならそれで仕方がねえ。
それに、俺らにとってはむしろ一刻の猶予も与えられない状況だからな、
その点、あんたにも同じところがある、手段を選んでいられねえってわけだ」
それに対し、ララーナはにっこりとした顔で答えた。
「ふふっ、そう言っていただけると嬉しいですわ、シェトランドの長様。
私共のやり方はあなた方シェトランドと共に行くこと、それしかございませんわ。
ですから、ともにセイバルたちを倒しましょう!
そして、勝した暁には……たっぷりと祝杯の酒をお酌いたしましょう――」
それに対してリオーンとバフィンスはテンションが爆発した!
「うおーし! そうと決まったら今すぐセイバルを叩きのめしに行くぜぇ!」
「行くぜぇ! お前ら酒をたらふく用意しておけや!」
それに対し、先ほどの女性のシェトランドがリオーンの頭をヘッドロック!
「もう! すぐに調子に乗る! まだ全然話してないでしょ!
ルイゼシアの命がかかっているんだからちょっとぐらい考えなさいよ!」
そして、バフィンスにはアローナが見事なアッパーを食らわせていた!
「ったく! なんのためにここに来たのよ! そろそろいい加減にしときなさいよ!」
その光景にララーナは呆気にとられ、後悔しながら言った。
「わ、私、悪いことを言ってしまったかしら……」
ウィーニアは呆れながら言った。
「違うわよ、お母様は悪くない。問題はこの2人のスイッチが変なところにあることだけ」
そして、会議は進行していった。
皮肉なことに、年長者のリオーンとバフィンスがいないほうがスムーズに話が進むのである……。
「随分と離れたところにありますね、そこがセイバルの本拠地ということですか?」
シェトランドが答えた、そいつの名前はヴィーサルというようだ。
「そいつは間違いないな。
それ自身は俺たちの調べでもともとある程度は予測していた。
とはいえ、なかなか尻尾をつかまさないんでな、確証を得たところで行動に出られなかったというのが実際のところだ。
だが、ローナとシャトが今回有力な突破口を見つけてきてくれた。
しかし、それが結構難儀するようでな、どうしたもんかと悩んでいたところだ。
それがいつの間にか酒盛りになっていたってオチだが……」
俺たちの調べ……ララーナは気が付いたので訊いた。
「そう言えばヴィーサルさんと言いましたね。
ということは”月刀のヴィーサル”ですか?」
そう言われたヴィーサルは驚きながら言った。
「まさかプリズム族にその名を知られているとは光栄だな……!
そういうあんたは”白薔薇のララーナ”だろ?
聞いてるぜ、とてつもない剣技と美貌で相手を魅了するってな。
確かに噂通りの美人だぜ」
それに対してリオーンはララーナをまじまじと見つめながら言った。
「あ? なんだねーちゃん、”白薔薇のララーナ”だったのか!?」
てか、今更か。とにかく無視して話を続けた。
「うふふっ、嬉しいですわ。
でも、ヴィーサルさんとウェザールさんがまさかシェトランドだったなんて――」
ララーナがそう言った、ウェザールは彼の弟である。
それに対してヴィーサルは頷きながら言った。
「ああ、傭兵業をしながら情報を集めていたからな。
昔からセイバル共はシェトランドを誘拐しては研究を繰り返してきた。
情報を持って帰ってきては連中の拠点をつぶし、ようやくここまで連中を追い詰めたってわけだ」
ララーナは考えながら言った。
「でも、追い詰めたのにルイゼシアさんが……」
それに対して先ほどの女性、ルジーナが言った。
「追い詰めたからルイゼシアが誘拐されたのよ、みんなそう噂してる。
そのせいでこっちからなかなか手を出しづらくってね。
でもあいつら、別に何を要求してくるでもなし、
どんどん戦況をひっくり返してきているからこちらも応戦することにしたのよ。
でも……別に人質を取ってどうこうするっていう感じじゃないみたいだし――」
ウィーニアは考えながら言った。
「うーん、”神授の御魂”か、そいつらの狙いはあくまでソレなのね――」
さらにバフィンスは付け加えた。
「それにシェトランドは少数民族、よその国を動かしてまでどうこうするっていう連中でもない。
さらに言うと、セイバル人ってのもシェトランドやプリズムほどではないにせよ、それなりに少数の種族だ。
それなのにリオーンの後ろ盾はグレート・グランド国だっていうのにシェトランドの性格上、
自分たちの問題は自分たちで解決するって腹もわかっていても、
やっぱり堂々と人質にするって言ってしまうと、
グレート・グランド国の娘をって見え方になってしまうとよその国からも目を付けられかねない。
つまり、せっかく手に入れた強力なカードはあくまで”神授の御魂”としての価値としてしか扱えないってのが連中の悩みどころでもあるってわけだな」
意外とマトモなことを言う彼に対してウィーニアとアローナは呆気に取られていた。
その光景に他の者もその空気に押されて少々驚き気味、すると、バフィンスは言い返した。
「んだよ! 俺がマトモなこと言って悪いかよ!」
女性陣はクスクスと笑っていた。まあ、日ごろの行いというやつである。