しかしその10秒後に手のひらクルーッ! リオーンは完全にメロメロになっていた……
「うめぇ! 超うめぇ! 最高だなァ!」
先ほどの不機嫌はどこ吹く風か、リオーンは超上機嫌に酒を飲んでいた、それもそのハズ――
「あら♪ 素敵な飲みっぷりですね♪ もう一杯いかがです?」
ララーナは、リオーンの隣でそう優しく言いつつ、酒瓶を持ちながら促していた。それに対してリオーン……
「おお! 頼むぜねーちゃん!」
そう、ララーナはお酌をすることにしたのである。
「くぅーっ! 今日の酒は格別だなァ! こんな美人のねーちゃんに酒注いでもらえるなんて幸せだなァ!」
しかし、その注文は彼だけではなかった。
「リオン! テメェ! 1人でずるいぞ! 俺にも注いでくれやねーちゃん!」
「俺も俺も!」
「うるせーぞオメーら! 俺が先だ!」
「ちげーよバカ! 姉ちゃんは俺のものなの!」
「姉ちゃん俺と結婚しようぜ!」
「なにどさくさに紛れて言ってんだテメー! 姉ちゃんは俺と結婚するの!」
「バーカ! 俺と結婚するの!」
「バカはお前だ! 彼女は俺のフィアンセなの!」
ララーナ人気は大盛況、しまいに喧嘩が始まっていた。だがしかし、
「うふふっ、みなさんにも後でお酌して差し上げますから♪ リオーンさん、もう一杯、いかがです♪」
ララーナも調子に乗ってそう言うと、リオーンは気持ちよさそうだった。
「それよりもねーちゃんは呑まねえのか? 俺が注いでやるぜ?」
「いいえ、私は――」
「あん? 俺が注いだ酒が呑めねえってのか?」
「いえいえ、私はただ、あなたのその素敵な飲みっぷりがずっと見ていたいだけですわ♪」
「デヘヘ……仕方ねえなあ♪」
照れていたというか、もはやデレデレだった。お酌してもらって余程嬉しかったのだろう。
「ホント、単純よね」
「単純というか簡単というか……」
一方のウィーニアとアローナの2人は遠目からその様子を観察しながら呆れていた。
その後、酔いつぶれて寝てしまったリオーンというかシェトランドたち。
多くの男女がみんな酔いつぶれてしまっていた。
その日はこのまま留まるのが得策ではないと判断したウィーニアに促され、
バフィンスを島に置き去りにして一旦ティルアへと戻り、
翌日、再びシェトランド島へと戻ってきた3人はリオーンに対して本題を切り出した。
「おう! 昨日の美人の姉ちゃん!」
どうやら余程気に入ったようだ。
「リオン! テメェ! 1人でずるいぞ! 俺にも注いでくれやねーちゃん!」
「俺も俺も!」
「うるせーぞオメーら! 俺が先だ!」
「ちげーよバカ! 姉ちゃんは俺のものなの!」
「姉ちゃん俺と結婚しようぜ!」
「なにどさくさに紛れて言ってんだテメー! 姉ちゃんは俺と結婚するの!」
「バーカ! 俺と結婚するの!」
「バカはお前だ! 彼女は俺のフィアンセなの!」
と、またしてもヤジが。
てか、昨日と同じ内容のような……ララーナはデジャヴかなと悩んでいた。
いや、これはテンプレである。
それはともかく、そこは流石のプリズム族のララーナ、
「うふふっ、素敵な殿方とあらば喜んでお酌いたしますわ♪」
というリップサービスだが、半ば本気にしている野郎共の興奮ぶりときたらなかった。
それについては流石に察したリオーン、
「バカ! プリズム族のねーちゃんの社交辞令に決まってんだろ!」
そう言って周囲に一喝した。しかし、連中にはそれが通じていないようだ。
「悪りぃな姉ちゃん……」
リオーンは悪びれながらそう言うと、ララーナは訊いた。
「いいえ、かまいませんわ。それより、私のことはプリズム族と……」
リオーンは頭を掻きながら言った。
「いんや、さっきバフィンスに聞いたばっかりでよ、俺りゃあ、あんたらのことはあんまり知らねんだ。
まあ、バフィンスもあんましワカンネっつってたが……」
リオーンは態度を改めた。
「まあ、とにかく、昨日は悪かった。
お詫びと言っちゃなんなんだが、セイバルのやつら、
エレイアの件でプリズム族にも迷惑かけてるって言うじゃねーか、
酒も注いでもらったことだしよぉ、だから俺らも手ぇ貸すぜ!」
しかし、ララーナは優しそうな眼差しで言った。
「いえいえ、お詫びだなんてそんな。
それに、お酌ぐらいでそんなに喜んでいただけるのでしたら、喜んでお引き受けいたしますわ♪」
すると、リオーンは泣きながら言った。
「姉ちゃん、美人なだけでなく、すごくイイ女なんだなぁ……」
それに対し、ウィーニアがズバリ指摘。
「ねえ、あれ、なんで泣いてるの?」
そして、アローナの鋭い回答。
「歳とると涙脆くなるからでしょ?」