ララーナはリリアリスの操縦するマダム・ダルジャン号に揺られながら再びグレート・グランドはティルアの地へと戻ることにした。
「すみませんね、わざわざ送ってもらえるだなんて――」
ララーナはそう言うが、リリアリスは鼻歌を挟みながら答えた。
「いいのよ別に、あっちには私も用事があるからねえ。
あと、さっきの魔女の件だけど、ディスタード帝国のは聞いた感じだいたい片が付いている件のようだからこっちは任せて。」
ララーナは頷いた。
「ええ、それならディスタード軍についてはお任せいたします。
そういえばディスタードと言えば、ユーラルのラミア族というのも気になります。
できれば、そのラミア族の集落というのを見てみたい気がしますね――」
リリアリスはそう言われると考えながら言った。
「確かに、ラミア族って集落なんか形成して集まる種族だったかしら?」
「なんだか不思議ですね、ここでも私たちの価値観が違っているだなんて――」
ララーナも考えながら言うと、さらに続けた。
「フロレンティーナが私たちと似たような方法でラミア族になったというのも面白い話です。
確かに、ラミア族の身体は魔族であること以外は私たちと同じようなものだと言われていますので、
男児にラミア族の子宮を移植すればそれも可能なのでしょう――」
「でも、その前例はこれまでなかったことだと――」
ララーナはさらに考えながら言った。
「もちろん、全部を把握しているわけではないのですが、
それでも、ラミア族では基本そういうことはしてこなかった種族ですからね。
例外は中にはあるのかもわかりませんが、集落という点を見ても少し気になるところですね――」
ラミア族はプリズム族とは違って魔族とともに生きる種族であるため、
集落を築き上げて独自の文化を形成するということがないらしい。
そういうこともあってか普段でもプリズム族以上に見かけることはあるかもしれないが、
魔族自体が世界でも少数派なので、いずれにせよ、それほど見かけることはなさそうである。
だが、それを差し置いてユーラルの地においては彼女らの集落というのがある……それはそれで興味深い話である。
ララーナはティルアに降り立つと、ウィーニアとアローナがやってきた。
船に残ったリリアリスに向って3人は手を振ると、リリアリスも手を振りながらそのまま去っていった。
「お母様、なんか嬉しそうですね! なにかあったのですか?」
ウィーニアはやけに楽しそうにしているララーナに向ってそう訊いた。
「ええ、あの船を操縦させてもらったのですよ。なんだかとても楽しかったです♪」
そう言われたウィーニアは思い出した。
「私も操縦させてもらったことがあるんですよ♪
私が作ったプログラムも採用されていてなんだか嬉しいです♪」
と、ウィーニアは少々自慢げにそう言った。
「ウィーニアさんはコンピュータにお強いほうなんですね!」
ララーナがそう言うと、クラフォードが出てきて言った。
「あれ? ララーナさん? えっ、リリアリスさんはどうしたんだ?」
それに対し、アローナが何食わぬ顔で言った。
「ああ、お姉様だったら先にベスタ・ポートへと向かっているんじゃないの? 船で西のほうに向かっていったしさ」
クラフォードは愚痴っぽく言った。
「ひでえな、さっさと行くなんて……」
クラフォードは慌ててそのベスタ・ポートのほうへと向かっていった。
ちなみにベスタ・ポートとはグレート・グランドの西の玄関口となる港町である。
「お姉様、クラフォードが先にベスタにいるんだと思ってたんじゃないのかな?」
「クラフォードは道案内のつもりで一緒に行く予定だったみたいよ」
ウィーニアとアローナはそれぞれそう話していた。
「リリアは先ほどアンテナを設置する計画だって言っていましたね」
ララーナがそう訊くとウィーニアが答えた。
「ええ、クラウディアスに新しく大規模な防衛システムを設置するとのことで、
グレート・グランドにも似たようなシステムができればいいなって話題に上がり、
それでアンテナの設置について検討するんだそうです」