エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

遥かなる旅路・天使の舞 第5部 精霊たちの反撃 第6章 動き出した魔女

第110節 立て続けにインパクトの大きい話

 あの場は何とか収まったが、ララーナはその現場から移動し、なにやら考えていた。
「あらお母様、姿が見えなくなったと思ったらここにいたのね?」
 リリアリスがやってきた。そこはお城の4階である。
「すみません、ちょっと考え事をしていたもので。 あの場はシェルシェルに任せようと思いまして、いろいろと考えていました」
 ララーナはそう言うとリリアリスは訊いてきた。
「いろいろ? 確かに、お母様が里を飛び出してここまでくるだなんてなかなか珍しいことじゃない、何かあったの?」
 ララーナは答えた。
「ええ、考えていたのはフラウディアとフロレンティーナのことです。 それに、セイバルのエレイアの件についてもずっと考えていました」
 そう言われると、リリアリスは頷いた。
「共通している話はいずれも魔女を示しているわね。 ということはつまり、お母様の世直し旅が始まるわけね!?」
 ララーナは遠慮がちに言った。
「いえいえ、そんな大それたものでは。 とはいえ、このままずっとほったらかしにしておくわけにもいきませんからね――」
 リリアリスは頷いた。
「確かに、私も特にエレイアの件についてはずっと思っていることがあるのよ、 彼女、プリズム族の身体で補っている状態でしょ?  それ自身は彼女に非があるというわけじゃあないんだけれども、そもそも彼女自身はどうしてそうなったのか、 セイバルの連中がどうやってそのプリズム族の身体を手に入れることができたのか、 そこがまだ全然わかっていないのよね――」
 と、そう自分で言ってリリアリスはピンときた。得意げに話し始めた。
「なーるほど、てことはつまり、お母様はそれを調べようとしているってわけね。」
 ララーナは楽しそうに言った。
「ええ、その通りよ。 やはりプリズム族を世に出すという上ではそういった輩がいるのも困り者ですので、 この際再び”白薔薇のララーナ”を世に放つことを決めたのですよ」
 そう言われてリリアリスは何か閃いたようだ。
「そういうことならちょうどいいのがあるわ!」

 ララーナはリリアリスに言われた通り、クラウディアス1階の横庭へとやってくると、 その後からリリアリスがお城の外からやってきた。 リリアリスは確か5階のほうへと向かったはずなのになぜお城の外からと言いたいところだが、 例によって階段を使わず、高低差を無視してぴょんぴょん移動しているに決まっている。
 リリアリスは何やらアクセサリを取り出しながら話をした。
「シェルシェルの腕がアレだからね、 似たようなエレガント・エディションならお母様も扱えるんじゃないかと思って用意してみたんだけどどうかしら?」
 そう、アクセサリはザ・”兵器”だった。エレガント・エディションというとおり、全体的に美しい仕上がりとなっていた。 特徴は”白薔薇のララーナ”という通り、美しいバラの光るデザインであり、非常に際立っていた。
「まあ! すごく素敵な武器ね!」
「ふふっ、名付けて”フローラル・ブルーム”! なんだかお母様のいい香りが漂ってきそうな名前じゃないのよ。 つまりはお母様のそのいい香りで力を増幅する効果が含まれているってことよ。 あと、シェルシェルの”エレガント・ニードル”と似たような仕様だけど、お母様がちょっと軽いって言ってたから、 特別に重量を足してあるわよ。 私のよりもちょっと重たいけれども、このぐらいのほうが手になじむって聞いてたから、その通りにしてみたわ。どうかしら?」
 すると、ララーナは軽々と”フローラル・ブルーム”を振り回していた。
「これは確かにちょうどいいですね! ざっと450g程度でしょうか?」
「ええ、正解。ちなみに刀剣槍モードに切り替えると――」
 そう言われたララーナは妖術を込めて刀剣槍モードへと切り替えていた。
「なるほど! これはいいですね! 500gぐらいはありますかね」
「お母様ったらマジでプロね! 持っただけで重さがわかるだなんて!」
 ララーナはにっこりとしていた。不思議な能力である。
「にしても、大きさのわりには軽いのが相変わらずすごいと思います。原料は何でしょう?」
 すると、リリアリスは周囲を見渡しながらララーナにひそひそ話をしていた。
「なんですって!? そんなものが使われているのですか!?」
 リリアリスは念を押すように言った。
「ええ、そうよ。 私だってなんだってそんなものを持っているのかわからないけれども、 こんな個人が持っているというだけでもパニックものだからね、ここだけの話にしてもらえると助かるわ――」
 どうやら、ミスリルと双璧をなすほどのヤバイ物質らしい。
「わかりました、確かに、ちょっとインパクトの大きすぎるお話ですね――」
 ララーナは冷や汗をかきながらそう答えた。
「だけど、果たしてそんなものをもらってもいいものなのかしら?」
 リリアリスは考えながら言った。
「まあ、でも、お母様の市女笠も同じ物質が使われているから別にいいんじゃない?」
 確かに軽い金属、どうやら同じ物質のようである。が、それは理由になっているのだろうか。