それから数日後、今度はガレアで帝国のお偉いさんの集う会議が行われていた。
今回はガレア招集の臨時集会のため、簡単に終わるハズの工程だったが、
ガレアの良さを知ってもらうということで、今回はガレア視察を兼ねた紹介となった。
なお、出席しているのは主催者側のガレアはともかく、
ヘルメイズのほかにはルシルメアとアルディアスも参加していた。
さらに、今回は流石にガレア軍を攻撃した本土軍は不参加、
だが、本土軍のグリモッツは相変わらず参加していた。
そして、会議の席に着くと、アールが口を開けた。
席はそれぞれゆったりとしたイスが用意されており、座り心地を重視したものだった。
そしてテーブルは円形で真ん中をくりぬいたかのようなデザインのものだった。
毎回変えるというこだわり様があるようだが、今回はこれでいくようだ。
「さてと、みなさん、ガレアは楽しんでいただけましたか?」
楽しむも何も――とにかく、ガレアの綺麗な街並みときたら、もはや感動さえ覚えるレベルだった。
「すべて、アール将軍の設計なんですか?」
ヘルメイズの実質的な将・グラントはそう尋ねると、アールは頷いた。
「それにしても――花の植え方というか、本当に素敵でいらっしゃいますね。
まるで、ガレアがどういう場所であるかを表しているかのようですね――」
と、見慣れない顔がそう言った。それに対し、アールは得意げに言った。
「そんな風に言ってもらえると嬉しいね、頑張った甲斐があるってもんだよ。
確かに、女性が多いけどね、ここの管轄は。
でも、花を植えたのは私の趣味であるところが大きいんだ。」
すると、その見慣れない顔は楽しそうに言った。
「アール将軍は花が大好きなんですね! 私も好きです!」
「それはやっぱりそうだよね!」
やたらとその見慣れない顔はアールに食いついている。
それについては後で説明するが、そんな中、グラントが話を割ってきた。
「あの、それはいいのですが、そろそろ始めません?」
それもそうだ、すると、周囲は態度を改め、会議が始まった。
「さて、まず始める前に自己紹介からしようか。
私が、このガレア軍の最高責任者であるアール将軍だ。
まだ成り立てだから今回初めて知る人のほうが多いだろうけど、よろしく頼むよ。」
いや、だから……そんなつかみのネタに会場は笑い転げていた――知らない人のほうが少ないというか、
ここにはお前を知らんやつなんていないっつーの、同席していたエイジはそう思いながら頭を抱え、
肩で笑っていた。
そして今回――ガレア軍の参加者は、これまでとはケタ違いの脅威度を誇る顔ぶれだった、それは――
「ガレア軍基地の受付嬢と、それから将軍秘書をさせていただいております、
ラミキュリア=クアルンキャッツと申します、以後、お見知りおきを――」
と、ラミキュリアは2度目の出席だったので、言うまでもないが――
「同じく、ガレア軍基地の受付嬢と、それから将軍秘書をさせていただいております、
フロレンティーナ=メレストスと申します、以後、お見知りおきを――」
と、2人目の美しい女秘書が表れたが、なんだか照れた様子だった。さらに――
「同じく、ガレア軍基地の受付嬢と、それから将軍秘書をさせていただいております、
フラウディア=エスハイネと申します、以後、お見知りおきを――」
と、3人目の可愛らしく自己紹介する女秘書が表れた。そして――
「同じく、ガレア軍基地の受付嬢と、それから将軍秘書をさせていただいております、
シェルシェル=ラクシュータと申します、以後、お見知りおきを――」
と、4人目も可愛らしく自己紹介する女秘書だった。
4人ともそれぞれ席を立ちながら、それぞれ同じようにエレガントで清楚な感じに自己紹介していた。
「私たち、アール・シスターズと申します。よろしくお願いいたしますね♥」
そして、最後はシェルシェルが楽しそうにそう言うと、
4人で仲良さそうに集合し、正面に向ってにっこりとし、それぞれの姿勢で佇んでいた。
すると、なんだかとてもいい香りが漂ってきたようだった。
それに対し、特に男性陣は彼女らの存在に見惚れる以前に狼狽えていた。
ガレアにはこんな女性たちが活躍しているのか、あまりに圧倒的すぎる存在だった。
そこへ、アールは――
「なーんだか知らないけれども、この4人でこんな風にユニットを結成してしまったんだよね。
まあ、みんな優秀だから全然かまわないんだけどさ、それにしても――なんでこうなったんだっけ。」
アールは考えながらそう言うと、グラントが話した。
「フラウディアさんとフロレンティーナさんと言えば、元は本土軍のベイダ・シスターズの一員でしたよね?
ということはつまり……ですか?」
対し、アールは答えた。
「まあ、そういうことだね、。
でも、彼女らは見ての通り、なかなか美人だ。まさに優秀な美人秘書そのものだよ。」
と、呆れ気味に話すが、彼女ら4人はそれでもにこにこしながらそれぞれの姿勢で佇んでいた。
一通り各勢力の紹介が終わると、本土軍についての話をした。
それについてはグリモッツの話から。
「ふーむ、ベイダ・シスターズを差し向けられるとは。
しかし、彼女らの色香を容易くかわし、そして2人を仲間に引き込むのみならず、
ネストレール、アズラザルをも亡き者にまでする手腕、大変お見逸れいたしましたぞ、アール将軍!」
アールは呆れたような態度で答えた。
「成り行きなんだけどね、狙ってやったわけじゃあない。
とはいえ、出たとこ勝負の作戦にしてはよくできている計画だと自分でも思うほどだからね。
ただ、彼女らのような存在がいるとなると――」
それに対してグリモッツが答えた。
「通称”特定エリート女人プロジェクト”、
本土軍の提唱する”人員家畜飼育計画”のうちの一部のようですね。
調べたところ、育成対象者はごくわずかだったようです。
”人員家畜飼育計画”そのものについては噂にも聞いておりまして、
その目的はほとんどが戦闘に特化した戦士を育成すべきとして考えられたものでした。
また、調査を進めたところ、彼女らのような”特定エリート女人”と呼ばれる存在は司令官エージルが考案したことでしてね、当人は既に戦死していますが……」
”人員家畜飼育計画”の対象者というのが本土軍にはいるのか――アールはそう言うと、グリモッツは首を振った。
「彼女らは”人員家畜飼育計画”の最後の被害者で、残念ですが、彼女ら以外の生き残りはいないはずです。
当初”人員家畜飼育計画”を考えた時には有効な計画だとして考えられたのですが、
一般の兵隊たちを使うのとではそれほど戦果も変わりなく、
ただただ計画維持のための費用だけが莫大になって中止することになっていたのですよ。
ですが――」
アールは考えながら言った。
「なるほど、相手を色で落とすために女性の使い手が必要になったと。
それで、所属している兵隊の系統を品定めし、その子供らを拉致監禁、
”人員家畜飼育計画”によって都合のいい女性へと育て上げる”特定エリート女人プロジェクト”のための実験材料にしたと――」
惨い――そして、見慣れない顔が話した。
「その”特定エリート女人プロジェクト”の対象者はどのぐらいいたのでしょう?」
グリモッツは答えた。
「対象者は認識番号096855番から認識番号096872番までの18人だったようです。
で、その中で4人は合格したのですが、残りの14人は脱落し、中には命を落とした者も――」
惨い――そして、再び見慣れない顔が話した。
「最後ということは、これ以上は被害者が出ないということですよね――」
それに対してアールは話した。
「”人員家畜飼育計画”は終わったけれども、まだまだ惨いことは終わっていない。
あのエリューネルのケースだよ、彼女は私の目の前で異形の魔物ともいえるような存在へと変貌した。
人体実験やエンチャント技術の人体転用なんかも平気でやっている、あれは流石に見過ごしておくことなどできないな――」
確かに、それもそうである。