リファリウスはユーシェリアの魔法を解き、その場から移動すると、
そのままガレア軍の本部の前にたどり着いた。
「フラウディアさんも戻っているハズ。
ユーシェリアさんも手分けして、施設内の残党の掃除と、
牢獄から仲間を助けたり、お願いできるかな?」
それに対してユーシェリアは、どこかの女子がやりそうな変な敬礼をして答えた。
「はいっ、お任せください! リファリウス様こそお気をつけて!」
そう言いながら彼女は本部内へと戻っていった。そして、リファリウスは――
「さてと、最後のクセモノを懲らしめるために参りますか。」
得意げにそう言いつつ、北の海岸のほうへと歩いて行った。
リファリウスは海岸に到着した。
「うふふっ、ほら、向こうからやってきたでしょう? 私の言った通り――」
女が邪悪な感じで色っぽくそう言っていた。そいつは――あのチュリンカだった。
「そうだな、確かにお前の言う通りだ。そうか、エリューネルもマジェーラも殺したのか。
エリューネルもマジェーラも、私の忠実なる部下だったのに――よくもやってくれたな」
と、そいつは言う。そいつの名前はベイダ・ゲナ配下でナンバー・ファイブであるアズラザルというやつだった。
「だが、それにしても――あのエリューネルを殺ったというのは……本当か?」
アズラザルは続けざまにそう言うと、リファリウスは何食わぬ顔で答えた。
「ああ、確認したければしてくるといいだろう。
だけど、私がしたことよりも、あんたたちのしたことの罪の重さをまずは悔いるべきだと私は思うね。」
そう言われたアズラザルは不敵な笑みを浮かべながら言った。
「ふっ、どういうからくりであれを倒したかはわからんが、どうやら倒したことは本当らしい、そいつは信じることとしよう。
だが、罪とは――生物兵器に仕立て上げたことか? あれは彼女が望んでなったことだ。
もっとも、そう仕向けたのも我らのようなものだが――それよりも、もっと大事なことに目を向けてもらわんとな」
すると、アズラザルは部下に合図をすると、その部下は、何か台車のようなものを運んできた。
台車には白い布がかぶされている。そして、それをチュリンカのもとへと運ぶと一礼してその場から退いた。
そして、アズラザルは話を続けた。
「さて、我らが敬愛するベイダ・ゲナ様がお怒りになられたことについては2点あってだな、
1つ目はお前がした行為そのもの、そして、もう一つは――」
そう言いながら、チュリンカが白い布を引っ張りあげた。
なんと、台車の上には鳥かごのようなものが置いてあり、そのかごの中には――
「ラミキュリアさん!」
そう、彼女が後ろ手に縛られ、さるぐつわされている状態でとらえられていた!
アズラザルは邪悪な表情で得意げに言った。
「くくっ、彼女だけは特別に我々のほうで捉えてある、まさにベイダ・ゲナ様のお怒りの元凶そのものだからな!
貴様も知っているだろうがベイダ・ゲナ様においては、女という生き物はまさに嫌悪の対象そのもの。
そして、お前は私の忠実なる部下を殺したその穴埋めとして、
今度はこの女を生物実験の材料にしてやろうと思ったところだ――」
それに対し、リファリウスは――
「なるほど、つまりは外道な行為をそのまま繰り返すつもりだ、そういうことか。」
冷静にそう言うと、アズラザルは得意げに言った。
「ああ、その通りだ! だが――ガレアへの侵攻はどうやら失敗したらしい。
見たところ、貴様はあのフラウディアの色香も効いておらんようだが――やはりあの女も殺したか。
となると、この女はどうやら貴様との交渉のカードとしての役割を担ってもらうことになりそうだ」
すると、アズラザルは怒りながら続けた。
「帝国の将軍としてはお人よしすぎるその性格が災いしたな!
そうとも、貴様のようなものはそもそも帝国の将軍の器ではなかったのだ!
貴様のような者がベイダ・ゲナ様と比肩するものを名乗るなど言語道断!
だが! そのおかげでほかの国との様々な交渉のカードが利用できるというもの!
この際だからありがたく使わせてもらおう! さあ、この女が壊されたくなければ、我々に素直に応じるのだ!」
それに対してリファリウスは腕を組んで答えた。
「まあ、そうなったらそうなったで仕方がないか。
でも、素直に応じろったって、そんなに簡単に人の心を縛れるもんじゃない。
そのレベルでよければいいだろう。」
だが、アズラザルは――
「フハハハハ! そういうことならば望み通りにしてやろう、なあ、チュリンカよ!」
すると、彼女から強烈な妖気が漂ってきた!
「ウフフッ、さあ、私のもとへといらっしゃい、あなたのことを幸せにしてあげるわ――」
チュリンカはリファリウスを誘ってきた――
「うっ、なっ、なんだこの妖気は――チュリンカ――」
「いいえ、私の名前はフロレンティーナ、今日からお前を使役する女神。
さあ、まずはこの私に対して忠誠を誓いなさい。
その証として――ふふっ、あなたはイケメンだから特別に、私を抱くことを許してアゲルわ――」
女神フロレンティーナからさらにいい香りが漂ってきた、その香りに対してリファリウスは無我夢中――
「フロレンティーナ、フロレンティーナ様――」
リファリウスはうつろな目をしながらフロレンティーナのもとへと誘われていった、そして――
「フロレンティーナ様、素晴らしく、美しい、愛しい女神フロレンティーナ様――」
彼女を抱きかかえた――
「ああっ、噂のあのアール将軍様が私のものとなるだなんて――」
フロレンティーナのほうもまんざらではなく、とても喜んでいた。
その様子に、アズラザルは呆れ気味に言った。
「ふん、流石は女たらし――やはり本物の女でなければ落とすことは不可能ということか。
そうとも、安心しろ、この女は正真正銘の女だ。
内緒の話だがな、この女はラミア族の女として生まれ変わったのよ!
ラミア族の色香の噂は知っておるだろう? そうとも、これがまさにそういうものだ!
この女はこれまで、あのフラウディアなど足元も及ばぬようなこの色香だけで男という男を虜にしてきたのだ!
それにより、いくつかの軍隊に所属していた男共はこの女についていった! 我が軍へと鞍替えをしていったのだ!
つまり、貴様もそのうちの1人になるのだ! 一生この女のいいなりとして生きる道をたどることになるのだ!
フハハハハハハ! フハハハハハハ!」
そう、フラウディアではなく、このフロレンティーナこそが本物の魔女だったのだ。