リファリウスとユーシェリアがトンネルの入り口付近を死守していると、
今度はそこへマジェーラ率いる本土の軍勢がやってきた。
「おっと、これはまた面白い展開になってきたわね、
あのフラウディアの術を振りほどいてきたのか、
それとも、フラウディアの詰めが甘かったのか――
言っとくけど、私は徹底的にやるから覚悟することね!」
それに対し、リファリウスは言った。
「正統派タイプの女王様ってところか、なるほどね。」
「だからそれが何だっていうのよ? いちいちウゼエんだよ!」
マジェーラはムチを地面に引っぱたくと、下僕たちがリファリウスたちに襲い掛かった!
だが、もちろん――
「殺しは生憎苦手なもんでね、できれば二度とこんなことさせてほしくないもんだ。」
リファリウスは剣の一閃でマジェーラの下僕たちを一撃で両断!
「なっ、なんですって――」
すると、そこへ別の女性がやってきた、それはエリューネルだった。
「詰めが甘いのはあなたも同じこと、人のことを言う前にあなたも自分のことを反省してみてはいかがです?
単純でわかりやすく、いつも正面からの突破という馬鹿正直な作戦――
仮にも相手は策士とも呼ばれたアール将軍がご相手になるのですから、
もう少し考えたほうがよろしいのかと思いますよ? それはいつもいつも言われていることですよね?」
エリューネルがそういうと、マジェーラがキレながら言った。
「うっ、うるさいわね! 馬鹿正直で悪かったわね! そんなこと大したことじゃないわ!
私の下僕はいくらでもいるのよ、それが私の能力! さあ下僕たち、私のために集まりなさい!」
マジェーラは得意げにさらに地面にムチを2度叩きつけた、だが――
「ほら、さあ集まりなさい、下僕たち!」
さらに2度叩きつけたが、下僕は一切現れなかった。
それを見かねたエリューネルが呆れながら言った。
「ヤレヤレ、バカは死んでも治らないとはよく言いますね――」
すると、エリューネルはなんと、マジェーラの後ろから刃のようなもので一突き!
「なっ!? エリューネル、あんた、何をする……の……」
マジェーラはその場で崩れ去るように倒れた。
それに対し、リファリウスとユーシェリアの2人は構えた。
「あなたの下僕たちはガレアにいる分はあなたが連れている分と、このアール将軍が殺した分、
それ以外はほぼアルディアスの警備のために駆り出されていて遠くにいることをお忘れではありませんか?
そんな無能っぷりではせっかくのあなたの能力も生かされることはありません。
まあいいです、我らがベイダ・ゲナ様の理想を掲げる世界に無能は要りません。
あなたもそんな理想のための礎となるのです、
そう――理想を掲げるには犠牲はつきもの――、犠牲という名の礎にね!」
と、その時、エリューネルは身に着けているインテリなメガネを脱ぎ捨て、
さらにその場で着ているものを破いて脱ぎ捨てると同時に突然豹変した!
「えっ!? そんな――」
リファリウスは驚いた。
「ウソっ!? なんてこと――」
ユーシェリアも口を押えながら驚いていた。そう、そこには――
「ウッフッフッフッフ――これが本当の美、本当の美しさヨ!
どうだ、私の美しさに恐れ入ったカ?」
そこには、最早人間とも思えぬような、いや、言ってしまうとほぼ魔物ともいえるようなおぞましい姿の生物が立っていた。
フォルムこそ人間の女性の姿を保ってはいるが、異形の存在が目の前にいることで、2人は驚くしかなかった。
「どういうことなの!?」
ユーシェリアは異形の存在に対し、もはや自分の理解を超えていたため、半ばパニックになっていた。
そんな中、リファリウスは冷静に言った。
「エンチャントの技術を人間に転用した結果の姿だ。
エイジ君の解析結果では、エリューネルのDNAには不自然なところがあるっていう見立てだったけれども、
サンプルが不十分だったために突き止められなかったんだ。それが――こういうことだったのか。」
エンチャント転用についてはフラウディアも似たようなものだけれども、こちらは彼女の比ではなかった。
もはや改造と呼べるほどの可愛いものではなく、まさに神をも恐れぬ悪魔の所業と呼ぶべきものだった。
それに対し、エリューネルは笑いながら答えた。
「カハハハハハ! 流石はアール将軍! 流石に存じておられるようダ。
この姿になったことで、私はベイダ・ゲナ様より特別に女性となることを認められたのダ!
そう、この姿こそが真の美しさ、真に美しい存在とはこの私のことヨ!」
すると、リファリウスがはっきりと言い切った。
「なるほど! ベイダも流石に魔物だったら女性でも構わなかったのか!」
そしたらエリューネルはブチ切れた。
「黙レ! そのようなものと一緒にするでないワ!
貴様にはわからぬようだな、真の美しさというものヲ!
いいだろう、この私の美しさを目に焼き付くし、そのまま地獄へと落ちるがいいワ!」
「……いや、あの、そうなんだ、それでマトモな人間だと思っているわけね。」
リファリウスは冷静に指摘した。
「リファ様、どうしましょう……」
ユーシェリアはリファリウスの後ろに隠れながら心配していた。
「大丈夫だよ、面倒するけれどもね。」
すると、リファリウスはユーシェリアにミスト・スクリーンを張った。
ユーシェリアの姿が霧で隠れ去った!
「あくまで貴様だけで相手をするということカ! 流石はアール将軍!
勇ましいものだナ! しかし、それが命取りになることを教えてやろウ!
もっとも、1人だろうが2人だろうが同じことだがナ!」
「雑魚ほど吠える。わかりやすいね。」