そして、本部に閉じこまって寝ていたリファリウスが動き出した。
「ふぁっ、よく寝――てないか、まーたアリエーラさんに怒られるし。
とにかく、やっぱり、彼女の力は本物になったんだね、プリズム族の誘惑の力の本質は癒しの力、
あれには流石に逃れようがないもんなぁ。」
そんなことを考えながら、ベッドから飛び起きて窓から外を眺めていた。
「ルダトーラ側も動いたみたいだし、愛しのマイ・ハニーも過去との決別しようと対決しているわけだから、
それに応えてやるのが旦那の務めってもんだよね。
女神様の下僕は下僕らしく愛する女神のために行動を遂行するのみっと。」
リファリウスはそう思いつつ、調子よくそのまま部屋の窓から建物の外へと出ていった。
そしてその道中、ユーシェリアと出会った。
「おや、ユーシェリアさん、流石に抜け出すのが早いね!」
「リファ様! はい、抜け出してきたというか、私はそもそも捕まっていないんですよ。
それで、リファ様が復活するまでずっと待っていました!」
ユーシェリアは捕縛される前にひっそりと逃げ出し、そして、事が起きるまでひっそりとしていたのだった。
「それで、これからどうするのです? なんだか、ルダトーラ側が騒がしいようですが――」
それに対し、リファリウスは言った。
「実は、クラウディアスに協力を要請したんだ、こうなったら頼れるのは他にいないからね。
今の状態でクラウディアスに攻撃されれば、流石の本土軍もビビるだろう、
まさか、私とクラウディアスがつながているとは思わないだろうしね、私の強力なカードだ。
ただ、クラウディアスに迷惑をかけてしまうのが心残りだ――」
それに対し、ユーシェリアは言った。
「クラウディアスの人たちだってリファ様のためなら、ガレアのためなら喜んで引き受けてくださいますよ!」
リファリウスはその点を指摘した。
「そう、だから心残りなんだ――」
あっ――ユーシェリアはリファリウスの真意を悟った。
確かに、自分のためなら何でもしてくれるだろう、だからこそ、リファリウスとしてはなおさら忍びない――
ユーシェリアは自分の身に置き換えて考えるとその気持ちが痛いほどよくわかった。
「でも、今回ばかりは! 相手があの本土軍です、
クラウディアスとしても毎回攻撃を企ててくる相手が敵というのなら――」
リファリウスは頷いた。
「私としてもそれらしい理由を並べるとしたらそれぐらいしか考えられなくてね、
自分を庇護したいわけでもないんだけれども――まあ、
それこそ私のためなら喜んでやってくれるというのなら、今はそこに甘えるしかないよね。
そしたらもちろん、私はクラウディアスのためだったらなんでもしよう、そうするだけだね。」
それに対してユーシェリアはニコニコしながら答えた。
「そうです! みなさんリファ様に頼りたいし、頼られたいんですよ!
世の中持ちつ持たれつって言いますよね、まさにそう言うことなんだと思いますよ!」
そして、ユーシェリアは元気よく走っていった。
「……持ちつ持たれつ、ふふっ、確かにその通りだね、私もまだまだ甘いな。」
リファリウスは頭を抱えつつ、得意げに言った、すべてを抱え込む必要はないのだから。
ユーシェリアとリファリウスは南の洞窟方面へと進んだ、そう、ルダトーラ側につながるトンネルがあるところである。
「この調子だと向こうから来そうだから、まずは一旦ここで死守しようか。」
「そうですね!」
すると、いきなり本土軍の兵隊に囲まれた!
「貴様はアール将軍!? 何故だ、貴様はフラウディア様の虜のハズ!」
それに対してリファリウスは焦った風な態度をしながら言った。
「あっと、そう言えばそうだった。ええっと……」
そして、リファリウスは目がうつろなふりをした。
「フラウディア様が、どこかに行ってしまわれた――フラウディア様、フラウディア様――」
すると、今度はリファリウスはいきなり抜刀し、周囲の敵を一度に薙ぎ払いながら言った。
「貴様ら! 私のフラウディア様を隠すとためにならんぞ!」
とんだ八つ当たりである。
「まあ、フラウディア様は可愛いのだから仕方がない、それに免じてやられてくれれば助かるよ。」
それに対してユーシェリアは楽しそうに言った。
「わぁい! 早ーい! 強ーい! 確かに、フラウディアちゃんって可愛いよね! 私もだーい好き!」
「でも、無血革命はここまででおしまいか。
まあいいさ、ここから先は、敵とあらば倒していくだけか。」
ガレアに駐留している敵は本土軍に従順な兵士ばかり、リファリウスも気を引き締めて臨むことにしていた。