それからというものの、フラウディアはラミキュリアとはあっという間に打ち解け、
そして、アールこと、リファリウスとも自然に打ち解けていった。
「そうなんですね、本当はリファリウスという名のハンター――」
「そうなんだよね、まあ、いろいろとあってさ。」
「リファリウスさんという方は知っています! とても素敵な方で、私、大好きなんです!」
そこそこに有名な存在であるリファリウス、フラウディアは知っていた、彼女にとっては彼はあこがれの存在だった。
それこそ、アールとリファリウス、天秤にかけられるとつらいレベルでの存在だった。
しかしそれがまさか目の前にいて、それもまさかの同一人物だったとは思いもしなかっただろう。
フラウディアはそんな相手に、態度を改めて言った。
「リファリウス様! 私、本当はあなたのことを――」
その続きを言おうとすると、リファリウスが続けて言った。
「フラウディア=エスハイネ、最近本土軍に直接潜り込んできて、すべて調べてきたよ。
私の変装術は強力だ、自分で言うのも変かもしれないけれども、師匠譲りの強力な極意だからね。
それはそうと、キミはベイダ・シスターズの一員となっていて、過去にはいくつかの国を――」
そう言うとフラウディアは暗い表情をしていた。だが、それに対してリファリウスとラミキュリア――
「すごいね! さすがは妖魔の技の使い手!
たくさんの男をメロメロにするだなんて、見た目がカワイイだけのことはあるね! カッコイイな!」
「ええ! そうですわ! とても素敵です! 同じ女として、同じ妖魔として、かっこよすぎます!」
えっ、そんなことは――フラウディアは顔を真っ赤にしていた。
何はともあれ、2人とはすっかりと打ち解けて仲良くなったフラウディア、
本土軍でのことや、計画の全貌もすべてを打ち明けたのである。
「それにしても――流石は大帝国の女性集団、団長は一番美人で可愛い女性が務めているというわけだね。」
そう言われたフラウディアはとても照れていた、憧れのリファリウス様に言われたとなればそれはもう別次元の喜びである。
ところがどういうことか、ラミキュリアにも予め言われた通り、
この頃にはフラウディアはラミキュリア同様にリファリウスにはそこまで関心がなくなり、
これまで燃やしていた乙女心は冷え切ってしまっていた。
正直なところ、がっかりしていたわけだが、
それでも、彼とは依然として仲良くしたいという思いは強くあり、やっぱりいつもべったりとしていて仲良しだった。
そして……フラウディアはベイダというよりは本土軍とは決別することを決意したのである。
「ムチはもうイヤです、未練はありません。私はリファリウス様の、アール将軍様のもとへ嫁ぎます。
私のことに対して理解してくださる方もいらっしゃいますし、
何より、ガレアの都はとても美しく、とても居心地がいいです!
外の世界にはこんなに美しいところがあるのですね、とても感動しました!」
「まだまだこんなもんじゃないよ、世の中は広い、
世界にはもっと綺麗な光景がいくらでも広がっている、私でも知らないような光景がね。」
そう言われたフラウディア、夢が膨らむ。
フラウディアはリファリウスに連れられ、港のほうへとやってきた。
「あっ、ちなみになんですが、本土軍は今のところ、私の合図なしに動くことはありません。
あっ、あと、私は本土軍のスパイですので――もちろん、既にいくつか情報をリークしちゃっています、本当にごめんなさい」
それに対してリファリウスは首を横に振りながら言った。
「別にリークしたってどうってことないよ、こんな美女に騙されるんだったら情報の1つや2つ、やむなしと思うからね。」
フラウディアは再び顔を真っ赤にして照れていた。
しかし、よくよく考えてみると、ラミキュリアの時同様、
情報が漏れたところでさほど気にしていないのがリファリウスのやり方である。
ただ、今回は本土軍、マウナ軍の時に比べると、扱う情報については少し慎重な姿勢だった。
港で待っていると、後ろからラミキュリアとシェルシェルという女性がやってきた。
「今回はラスト航海になるかもしれない、ルシルメアで変な情報が飛び込んできたからね、覚悟した方がいいよ。」
リファリウスがそう言うと、シェルシェルが答えた。
「ラストということは、私はしばらくラブリズにいた方がいいということですかね?」
ラミキュリアは答えた。
「残念ながら、そう言うことになりそうです――」
すると、シェルシェルは元気よく答えた。
「それなら、私はクラウディアスに行こうかなー?」
それに対し、フラウディアが驚きながら答えた。
「リファ様はクラウディアスともパイプがあるのですか!?」
「ごめんね、本土軍が目の敵にしているハズの国と仲良くやっているんだよ、本当はね。」
フラウディアは首を横に振りながら言った。
「クラウディアスはとても綺麗な国なんですよね! この戦いが終わったら行ってみたいです!」
「是非! その時は私が招待しよう、すごく素晴らしい国なんだ、
フラウディアさんのような方がくればみんなも喜ぶと思うよ!」
フラウディアは楽しみにしていた。
船が出航し、そして、ルシルメアの港へとたどり着いた。
しかし、今回はルシルメアの都へは立ち寄らず、港から外れ出たところにある輸送車に乗って北へとやってきた。
「通常なら港から出ている鉄道を使って町まで行くのですが、今回はそれを使いません――」
ラミキュリアはそう言った、理由はだいたいお察しの通りだとは思うが、
「ガレア排斥法――」
フラウディアはそう呟いた。
「そもそも帝国に対する反感が強い国だからね、あそこは。
排斥法案可決の機運が高まるにつれて民衆の間でも強めの運動が発生している、治安が悪化しているんだよ。
そう言うこともあって、国はルシルメア鉄道を運休しているし、ルシルメア港も関係者以外の立ち入りを制限している、
だから、今回は止む無くルシルメアの町を経由しないルートをたどることにしているんだ。」
と、リファリウスが説明した。
「本当はガレアは全く悪くないのに、私たちのせいで――」
フラウディアは自分を責めるように言うと、リファリウスは諭した。
「キミは国の言いなりだっただけだよ、
あそこにいると本当に国のためだけに命を尽くすことこそがすべてと教えられるだけだからそれは仕方がないと思う。
とにかく、キミらが考えている本土軍の作戦は中止しないで継続してほしい、いいね?」
それに対してフラウディアは言った。
「本当にうまくいくのですか?」
「似たような作戦は何度もやっている、今回も手はず通りならうまくいくことは間違いないよ。
大丈夫、みんな自分を信じ、そしてお互いを信じているんだ。
だからこそうまくいくんだ、キミも私を信じてほしい、お願いだ――」
それに対してフラウディアはにっこりとしながら答えた。
「わかりました! そう言うことなら私はキレッキレの悪女を演じます!」