数時間後、エイジの目論見通り、ルダトーラ側で突然戦闘が始まった。
「なんですって!? 一体どういうことなのよ!? ルダトーラの残党!?」
「いえ、それが正体不明の軍団でして――」
マジェーラとその部下が交信していた。
マジェーラはガレアの軍本部の指令室に居座り、部下はルダトーラで通信していたのだけれども、
ルダトーラ側からの通信はそれを最後に途絶えてしまった。
「ちょっと! 一体何だっていうのよ! あんたたち、どういうことだか確認してくるんだよ!」
マジェーラは焦りながらムチを2回打ち鳴らすと、部下は慌てて様子を確認しに行った。
さらにフラウディアはその足でそのままガレアの北側にある建物へとやってきていた、
本土軍が上陸拠点として使っているガレア軍の建物である。
フラウディアはその中に入り、あの人物との面会を求めた。
そいつはフラウディアに背を向けて偉そうにたたずんていた。
「フラウディア=エスハイネではないか、ご苦労だったな、
アール将軍の心をもてあそび、手玉に取り、そして、自らの意のままに操らせる能力、
誘惑魔法を取得させたのは正解だったようだな!」
そう言いながらそいつはフラウディアのほうへと振り向くと――
「はっ、ネストレール様、すべてはベイダ様の意のままに――」
そう、相手はあのネストレールだった。
フラウディアはそいつに対して跪きながらそう言ったが、そんな彼女に対し――
「ん? なんだその恰好は? いつもの――正装はどうした!?」
ネストレールはそう言うと、彼女は嬉しそうに言った。
「はい、これはあのアールの趣味でございますわ――」
それに対してネストレールは――
「ヤツの趣味か――まあ、いいだろう。
というよりそもそもアールと言えばお前のお気に入りだったな、確か、”アール将軍様”などと――」
それに対してフラウディアは慌てながら言った。
「そっ、それは……! 決してそのようなこと――」
だが、ネストレールは遮った。
「否、それならそれで全く構わん。
ベイダ・シスターズの長たるお前が、あのアールにトドメを刺したのだ、
そう言うことであればあの男で好きなだけ楽しむがよかろう!
あのアールがお前に夢中になっているあの映像、
女たらしのプレイボーイが男の身体で悦に浸るなど聞いて呆れるわ!
ベイダ・ゲナ様にもお喜びいただけることだろう! フハハハハハ!」
ネストレールは楽しそうにそう言うだった。
それに対し、フラウディアは恐縮し、そのまま跪いたままだった。
「それでは予定通り、今後のガレアは新生ガレア軍として本土軍監督の下で再結成されることとなる。
当然その監督者としてお前たちベイダ・シスターズを任命することになるだろう。
その際、お前はあのアールを常に使役し、我らがベイダ・ゲナ様の飼い犬として手名付ける役を担うのだ!」
と、ネストレールはフラウディアに新たな任務を与えた。
「お前はこれより、新生ガレア軍の女王として君臨するのだ!
これまで”夢魔妖女フラウディア”が陥れていった数々の国同様にガレアを支配しろ!
そしてその手駒としてアールを使役しろ! お前の手足として弄ぶのだ!」
するとフラウディアは右手の握りこぶしを胸に当て、立ち上がって言った。
「つきましてはネストレール様、お話がございます!」
なんだ、申してみよ、ネストレールがそう言うと、フラウディアは言った。
「私、フラウディア=エスハイネはベイダ様のために尽力いたしました!
ですので、私の願いをかなえていただけませんか!」
「ほう? 願いとな? いいだろう、お前はよくやった、それ相応の褒美を取らせよう!」
すると、フラウディアはかしこまりながら言った。
「私、フラウディアは――あのアール将軍様と生涯を遂げとうございます! ですから――」
それに対してネストレールは考えながら楽しそうに言った。
「ほう、それはつまり、あの男と――なるほど、そういうことか。
そういうことならよかろう、ヤツはもはやお前の手足も同然、
ならばベイダ・ゲナ様にもそのように進言してみるとしよう――」
それについて、フラウディアはとても嬉しそうにしていた。だが――
「嬉しい――アール将軍様と……ありがたき幸せです!
つきましてはもう一つ、お願いがございまして――」
なんだ、もう一つあるのか、ネストレールはそう言いつつも、フラウディアの話を訊いた。
「私はエスハイネ家の長男として生まれましたが、幼少のころからムチを打たれ、
そして、男という存在をあざけるためにと女に育てられ、今に至ります。
しかし、私はそれでも男である事実は変わりません。ですから、私を、どうか、どうか、女に――」
そう言うと、ネストレールは急に激怒し、激しく反対した。
「ならん! それは断じてならん! お前も知っての通り、ベイダ様は女性が至極お嫌いだ!
だから、わが軍で女性が活躍しようもんならその芽を潰すために閑所に左遷させたり、
雑用・末端・雑兵にあてたりなどと、とにかく徹底的にベイダ様の周りから女を排除するために大変苦慮したのだぞ!
その様な中、お前たちベイダ・シスターズは女を演じれる男だからこそ、要職に就くことがかなったのだ!
それを忘れたわけではあるまい!!」
やっぱりそうか――フラウディアはそう思いながら頭を抱えていた。
「無論、手術をするなど以ての外!
もし、勝手にそのようなことをしてみろ、その時は――言わずともわかるな……?」
ネストレールはムチを出し、それをちらつかせながらそう言った、
あのムチはトラウマのムチ、フラウディアの脳裏に忌々しい記憶がよみがえる――