再びアールとフラウディアがいるベッドの上にて。
「アール将軍様、いかがです? 私も立派な癒しの精霊様になりましたか……?」
ん? あれ、なんか変だぞ? 彼女の様相はさっきとは違うような――
というか、そういえば癒しの精霊様といえば、どこかで――
そして、アールはそのままベッドの上で横たわったままだが、
女神フラウディア様は起き上がると、そのお姿は生まれたままの御身――ではなく、
あの可愛らしいネグリジェ姿だった、さっきと何かが違う――
そして、フラウディアは自慢の美しい髪をかき分けると、
その部屋の真ん中に置いてある、とても可愛らしいデザインの箱の前に座り込んだ。
彼女はその箱をワクワクしながらゆっくりと開けると、そこには――
「わぁ! 素敵♪ 今までの中で一番素敵! さぁっすがアール将軍様♥」
と、彼女が目をキラッキラと輝かせるようなものが入っていた、服と靴まで入っていた。
彼女はその服を取り出すと、とても嬉しそうに服と靴をギュッと抱きしめていた。
そして、フラウディアは着替えた。
服装としては、トップスは胸と下腹部を覆い、肩と胸の谷間が露出しているという、
それはそれでなかなかセクシーな装いだが、真打はその上に羽織る、
まるでお嬢様のようなエレガントな感じの上着である。
ボトムスはやっぱり可愛らしい短めのフィッシュテールのスカートで、
トップスとボトムスを合わせて服装のバランスが整っていた、
可愛らしいエレガントなお嬢様を演出していた。
最後に靴も女の子らしい可愛らしいパンプスを嬉しそうに履いていた。
彼女はそんな自分の立ち姿が写る姿見を眺めながらうっとりしており、いろんなポーズと取って楽しんでいた。
そんな彼女の様相はまさに純真無垢の女の子、先ほどの魔女を展開していたとは思えない女性である。
それに――
「アール将軍様♪ 私がこんな風になれたのはすべてあなたのおかげでございますわ♪」
フラウディアは楽しそうに、そして、清楚でエレガントな感じに振る舞っていた。
そして最後に、少々小ぶりめな剣を二振り握りしめると、それぞれの手で器用にクルクル回転させ、両方の腰に帯刀した。
「じゃあね、行ってくるわね♪ マイ・ダーリン★」
フラウディアは嬉しそうにウインクをしながらそう言うと、その部屋を去って行った。
彼女が男……いやいや、何かの間違いにしか見えない。
ある日のこと、フラウディアはネストレールに呼び出されていた。
「お呼びでしょうか?」
するとネストレール、何やらモニタを見ながら難しい顔をしながら話を始めた。
「来たな。いよいよベイダ・ゲナ様が動き出される――」
あたりに緊張が走る――周囲の側近たちもなんだか落ち着かないような様子だった。
「な、何かありましたか?」
フラウディアはびくびくしながら聞くと――
「先日のマウナでの件だ――」
そう言われると、フラウディアはピンときた。
「もしや、パレードカーの!?」
すると、ネストレールは机の上を思いっきり叩いた。それに対してフラウディアは驚きつつ、その場で土下座をして必死に謝っていた。
「も、申し訳ございません! 今のは禁句でした、何卒、何卒お許しを!」
だが、ネストレールはそれは気にしておらず――
「そんなことはどうでもよい! すべてはあのアールの!
若造の分際で我らが崇高なるベイダ・ゲナ様をコケにするとは許すまじ!
それでベイダ・ゲナ様はお怒りに! さあ、こっちに来い!」
そう言われ、ネストレールとフラウディアは別の部屋に移動した。
そして、その部屋に来ると、いつか知り合ったことのある2人の女と、
自分の大親友である1人の女、フロレンティーナがいた。
「並べ!」
ネストレールは勢いよくそう言うと、4人の女は一列に並んだ。ネストレールは話を続けた。
「フラウディア、マジェーラ、エリュラ、そしてチュリンカ! お前たち4人にこれから指令を与える!
我らが崇高なるベイダ・ゲナ様を穢すあのアールを! ヤツの管轄区域であるガレアを解体させるのだ!
そしてフラウディア! お前のその男の身体を使い、ヤツの心を弄び、身も心も奪い取れ!
プレイボーイ風の優男を気取るヤツに辱めを受けさせるのだ!」
えっ、そんな――男の身体と言われるのはいつものことなので諦めてはいるが、
フラウディアとしてはアール将軍様は意中の存在、ストライク・ゾーンのど真ん中にいるような至高の存在、
そのため、男の身体で彼を穢すというのには非常に抵抗があった、いつぞやのラミキュリアと同じ乙女心である。
それに加え、多くの男と淫らな行為を経験済みという穢れた女に触れてほしくないという気持ちもあった。
しかし、命令は絶対、やれと言われるのならやるしかないのだが、
これまでの命令とは違い、自分がアールに穢されるという点については異存はなく、
そう言う意味では非常に新鮮な気持ちになれる命令だった。だが、それでも彼女は――
「あ……の……、それで、例のロシュムの時のように、あんなことをしなければならないのでしょうか?」
と、心配そうに訊いた、流石にあのような行為をアール将軍にさせるのは抵抗だったフラウディア。
それに対してネストレールは言った。
「ロシュム? いや、それはいかん! それでも一応、アールはベイダ・ゲナ様のお気に入りだ、そこまでする必要はない!
とにかく、お前たち”ベイダ・シスターズ”の手で、ヤツのすべてを奪い取るのだ!」
ベイダ・ゲナも自分と同じ目線でアールを狙っているのか、それは意外だった。
そしてその後、フラウディアはネストレールと話をしてきた後、
チュリンカこと、フロレンティーナと話をした。
「あなたと一緒に仕事なんて嬉しいわ♪」
フロレンティーナは楽しそうだったが、フラウディアは残念そうに言った。
「でも、お姉様はルシルメアに、私はガレアだよ――」
「まあ、それはそうなんだけどね……」
フロレンティーナも残念そうに言った。彼女は続けた。
「それはそうと、よかったじゃない!
今度襲われる男があのアール将軍様だって! 羨ましいわ! 変わってくんない!?」
アール将軍様の女性人気はもはやよくわからない領域に達していた。
そう言われたフラウディア、どう答えようものか迷っていると――
「冗談よ冗談。でも、ホント、羨ましいわね。
あんたの二番目でもいいからいただけないかしら?」
するとフラウディアはこう言った。
「そうだよね、私たちの憧れの人だもんね!
2人で一緒にアール将軍様に抱いてもらおうよ♪」
それに対してフロレンティーナは答えた。
「あら、いいわねぇ、私たちの唯一の心のバカンス・アール将軍様ですものね!
うふふっ、2人であの方の身も心も私たち色で染めてあげましょうね♥」
そして、フラウディアとフロレンティーナが仲良さそうに話している様子を見ながらマジェーラはイラついていた。
「フン、何なのよあの2人、たかがアール将軍様1人で何をトキめいているんだか」
それに対してエリューネルが答えた。
「うふふっ、なんといってもあのアール将軍様ですからねぇ、女心を的確にとらえるものをすべてお持ちのあの方ですから――
女であれば黙っていないのは当然のことでしょうよ」
「あらそう。でも、この世に男はごまんといるのに、なんで2人で同じ男を狙っているのよ?」
「あの2人は昔から仲が良いですし、それに、2人とも誘惑の力が非常に強力ですからねぇ。
この前は2人が作り出した結界内にハマった男はすぐさま彼女らの虜となったという記録がありますね。
2人の力を合わせればどんな男でもイチコロでしょう――」
しかし、マジェーラは――
「そんなこと訊いてないわよ! アタシが訊いてんのは、なんで2人で1人の男をってこと!
まあいいわ、確かにアール将軍様は魅力的な物件だけど、アタシが求めてるのは多くの男!
男であるこのアタシに多くの男が弄ばれる光景が見たいのよ! ああっ、なんて、なんて快感なのかしら――
クックックックック……アーッハッハッハッハッハ!」
と、そう言いながらその場を去っていった。すると――エリューネルは不気味な笑みを浮かべながら呟いていた。
「うふふっ、どいつもこいつも、これだからまだ本物の美というものを知らない愚かで下賤な連中は困るのよ。
ふふっ、そう、本物の美というのはこの私にのみ与えられたもの、
表面的なもので満足しているお前たちとは違うことを教えてあげるわ――ウフフフフフ……」