ガレア軍は解体し、ガレア領は本土軍の支配下となった。
ガレアの兵士はいずれも牢獄に閉じ込められていた。
「うっ、ここは――」
そんな中、ティレックスが目覚めると、同じ牢屋には格子に頭を突き出している状態で項垂れているエイジがいた。
「なっ、なんだ!? 何がどうなったんだ!?」
ティレックスは状況が把握できずに周囲を見渡していた、どうして牢屋に閉じ込められているのだろうか?
すると、エイジが鉄格子に張り付いて項垂れたままの状態で話した。
「お前、逆に誘惑魔法耐性が弱すぎ――てか、お子様だからか、
あの女の過激さに耐えられなくて真っ先に鼻血出して卒倒したもんな」
はぁ? どういうことだ!? ティレックスはそう訊き返すと、エイジは話した。
「お子様には刺激が強烈だから、かみ砕いて説明するとだな――」
エイジは説明すると、話がつながったようだった。
「ゆ、誘惑魔法って……あのラミキュリアさんやシェルシェルさんとかが使う、あれだよな?」
「まあ、そういうやつだな」
「えっ、じゃあ、ほかのみんなは!?
特に女の人――ユーシィは? それから、リファリウスは!?
あんたはつまりは誘惑魔法を食らったんだよな? 大丈夫なのか!?」
すると、その声に反応したディーグが起きて反応した。
「はっ!? あのフラウディアとかいう女――
くそっ、一体今、何がどうなっているんだ――」
それに対してエイジはため息をついて言った。
「一度にたくさん聞くんじゃねえ、面倒くさい」
「うっふぅん♥ ほぉらぁ、この世で一番の女のカラダが大好きなアール将軍様♥
たぁっぷりと楽しみなさぁい♥」
2人はベッドの上、フラウディアはアールを完全に悩殺していた……。
それにより、アールは女神フラウディア様に襲い掛かって……。
そう、言うまでもなく女神フラウディア様のために一番大活躍し、
そして、この世で最も美しくて麗しくて最高にセクシーで魅惑のパーフェクト・ボディの女神フラウディア様を賜ったのは他でもない、アールである。
「フラウディア様……女神フラウディア様……
この世で……一番……美し……く……麗しい……」
もちろん、フラウディアとしてもアール将軍様が相手なら異存はなかった、
というよりも、はなっからアールにしか眼中になく、あのゲーム自体がフラウディアの茶番でしかないのである。
「ウフフッ、アール将軍様♥
さぁ、ほぉらぁ♪ このアタシのカラダをちゃぁんと味わいなさぁい♥」
アールは女神フラウディア様のカラダに夢中になっていた……。
「女神フラウディア様……セクシー……美味しい……素晴らしい……」
そして、その光景を、フラウディアはアールの頭上からビデオに収めて楽しんでいた。
「いやぁん♥ 私の愛しのアール将軍様♪ もっと私で楽しんで♥ ウフフ……」
フラウディアはさらに誘惑すると、アールはますます彼女に落ちていった、
アールは女神フラウディア様の生まれたままの御身を――
エイジはティレックスとディーグに話をしていた。
「すると何か、あんたとアール将軍、そしてティレックスには、あの女の誘惑魔法が効いてないとでもいうのかぁ?」
ディーグは意地悪そうに言った。それに対し、ティレックスが不機嫌そうに言い放った。
「そうだよ、悪かったな、どーせ誘惑魔法とか食らう以前の問題で卒倒したドーテーだよ!」
一方で、エイジも意地悪そうに言い返した。
「まあな、俺もあいつもお前みたいな下心丸出しの男とは人間のでき方が違うからな」
それにはディーグも譲らない。
「嘘だぁ! つーか、アール将軍デレッデレのメロッメロだったじゃないっすかー!
しかも”ドリーム・ワールド”の住人になれただなんて羨ましい限りじゃあないっすかぁ♪
大体、あんなに心地いい魔法が効かないなんて、エイジさん、絶対に人生損しますよ!
男だったら絶対に効いておくべき幸せの魔法っすよ、あれは!」
そう言われたエイジは――
「昔の人はこういったっけな、”妖の業、効く幸せ知らぬ地獄、効かぬ幸せ知る地獄”……
知らぬが仏とも言うからな、お前ぐらいのなら効いているうちが一番幸せなんだろうな」
は!? どういうことだ? ディーグは訊いた。
「そのまんまの意味だ。それ以上でもそれ以下でもない。
ちなみに、アールにアレが効いているぐらいなら、
今までラミキュリアさんとかシェルシェルのとかで既に終わってるからな。
そうなると、今までのガレアはまさに彼女らの国として動かされていたってことになるからな」
どういうことだよ、ディーグは訊いた。
「そのまんまの意味だ、あの女共、平然とあいつに誘惑魔法してるからな。
まあ、一切効かない――というか、効かないことを知ってて使ってるわけだが」
「効かないことを使ってて、何故使う必要があるんだ?」
「それは知らん。どうしても知りたいんなら本人たちに聞いてくれ。
とにかく、やつに誘惑魔法の類が一切効かないのは確実だ。
少なくとも俺に効く可能性はあるハズだが、あいつに効いたら不思議な光景だ」
なんでそこまでリファリウスをフォローするのだろうか、それについてティレックスが訊いた。
「じゃあ、仮に効かないこと前提で言わしてもらうと、
あいつのあれは茶番で、こっそり巻き返しを狙っていることになるが」
それに対してエイジはずばり答えた。
「巻き返すも何も、そもそも論としてこうなることはすべて計画のうちだからな」
なんだって!? ディーグは驚いた。
「俺らがこんな目にあっているのはすべて茶番!?」
「そういうことだ。ついでに茶番の余興としてあの女の誘惑魔法がわざわざ強くなるように例の機械もあちこちに設置しているしな」
例の機械をあちこちに設置――まさか――
「あの意味不明な物体、そんな効果があったのか!?」
ディーグはそう訊くとティレックスも訊いた。
「ひでえな、お前、自分たちの墓穴を掘るためにあんなもの設置させたのか!?」
それに対してエイジがもんくを言った。
「俺に言うな。むしろ、計画を知ったうえであれを作らされたほうの身にもなってくれればありがたいんだが」
それもそうだった、つまりはすべてリファリウスが問題か――
「でも、なんでそんなことをする必要があるんだ!? それは訊いたのか!?」
ディーグが訊くと、エイジは答えた。
「血を流さないため、如何にもあいつらしいだろ?
ガレアはともかく、ルシルメアとアルディアス、そして、特に本土軍の連中がいきなり攻撃しかねないリスクがあるからな。
そこで女神フラウディア様に協力してもらい、すべての男たちの行動をコントロールしてもらい、
無血革命を達成する、というのがここまでの計画なんだとさ」
となると、2つほど気になる点があった。
「ん、待てよ、そういえばあれ設置したのっていつだったっけ?
いや、ていうのもさ、こうなることはずいぶん前から予測していたんじゃないかと思ってさ――」
ディーグがそう言うと、エイジが言った。
「設置はマウナで会食があった日、あの日にアールに頼まれごとをこなしてたから間違いない。
ちなみに、あれを作れって言われたのは船が座礁した日から2日後だからな、
こうなることは早くもお見通しだったってわけだ。」
でも、作れって言われてから完成するまでにだいぶ時間がかかっているような――ディーグはそう言うと、
「生憎、誘惑魔法なんてさっぱりなもんでな。
使い手のプリズム族が2人いるにはいるが、流石にそれだけじゃあどうしようもない。
だから頼まれてから着手するまでに1か月以上かかってるが、サンプルもらったら実装まではあっという間だ」
それと、やはりそのままズバリ、女神フラウディア様に協力してもらう、というところが最も気になるところである。
「もういいだろ、面倒くさい。
とにかく、そのまんまの意味だ。それ以上でもそれ以下でもない」