そしてその翌日、ガレア軍に対して審判が下される時が来た。
それはいつかのように、ディスタードの本土軍が堂々とガレアの北側から上陸してきたことから始まるのである。
ジェタがその様を見て慌ててアールに報告、ガレアにいたすべての隊員たちがその場で一堂に会していた。
「これは一体どういうこと!?」
アールは驚いていた、周りを見てみると、
北は本土軍なのはもちろん、西からはルシルメア軍、そして東からはアルディアス軍が、
それぞれガレア軍に銃口を向けていた。
するとそんな中、いつぞやの女王様が現れて言った。
「あーら、アール将軍様ってば残念ね。
ガレア軍は任務懈怠(けたい)により、本日を以て解散することが決定したのよん♪」
それはもちろん、各国で”ガレア降ろし”されている現状によることらしい。
「何を言っている! それをしたのはディスタード本土軍だろう!」
ヒルギース大佐はそう言うが、マジェーラは態度を変えていった。
「はァ? 三下のクセに何生意気言ってんのよ!?
そもそもアタシたちがどうやって”ガレア降ろし”をしたとでもいうのよ?
証拠はあるのかしら? ほら、証拠があるんだったら言ってみなさいよ!」
その証拠についてはエイジが答えた、しかし、証拠能力があるというものかは難しいものである。
「先日のマウナでの議員襲名の席でアールが持ち帰ったものを見るとだな、
少なくともあんたら2人が同一の種族であることが確認されたんだよな」
エイジは話を続けた。
「やあ! ヒー様!」
アールがそう叫ぶとエイジは気怠そうな声で答えた。
「何の用だよ?」
すると、アールはコートのポケットに突っ込んでいた左手を出すと、
その手には試験管のようなものが握られていた。
「エリュラとチュリンカの食べかけサンプルだ。」
エイジはその食べかけサンプルをまじまじと見つめていた。
「おいおい、またずいぶんとひどいものを食わせたな、
これ、アセラス・テネート・エルガの葉っぱだろう、よくもこんな死ぬほど苦くてマズイもの食わせたな」
それに対してアールは得意げに言った。
「うん、如何にもおいしそうに盛りつけしたしね。
それに、如何にも食べられる感出そうとして葉っぱを塩漬けにしたからね。
で、呑み込もうとすることも考えて、念のために同じようなものを3つぐらい用意したから、
ある程度咀嚼してから吐き出す可能性は十分に高いだろうね。」
そして、アールは冷蔵庫の中に保管してあるサンプルを取り出した。
「マジェーラのと、あとはなんだ?」
エイジこと、ヒュウガがそう言うとアールは答えた。
「マジェーラとエリュラの血液サンプル。
先日あったディスタード本土軍の健康診断に紛れ込んで少しだけ拝借してきた。
これだけあれば、彼女らの何かしらの共通点が探せるかもしれない。」
「……エリュラの血液サンプルがあるのにわざわざアセラス・テネート・エルガ食わせたのか――」
「念には念を入れてね。
ちなみに、エリュラは本土では別の名前で在席していることもある程度判明している。
だから、その確証を得るためにもアセラス・テネート・エルガが一役買っていると思ってくれるといいんだけどな。」
「なるほど、抜かりはないってことだな。
でも、どうせだったらチュリンカのも取ってくればいいのに」
「残念だけど、彼女はどうやら本土で健康診断を受けていないらしい。
でも、ここで面白いのは、あの本土でも一応健康診断をやってて、
末端の隊員たちの健康管理にまで気を付けていることだ、なんだか面白いだろう?」
「言われてみれば確かにな」
そして、ある程度共通点が割り出せた、それは――
「エリュラことエリューネルと、マジェーラはどちらも同じ種族で同じ性別っていうところだな、まさしくそれだ」
エイジは大きくため息をつきながら言った。それに対し、アールは――
「どちらもディストラード人か。
そして、方や本土軍の司令官に女性がいるというのがそもそもおかしいこと、
方や本土軍の回し者だとして、それが女性っていうこと――やっぱりそう言うことだね。
チュリンカだけ当てが外れているけれども、それでもちょっと見過ごせない結果になっている点がまた怪しい感じがするね。」
アールは得意げにそう言った。こいつのカンは正確に当てる……まさにその通りだったようだ。
そして、例外になったチュリンカについては――まあ、それについては後程わかることなのでここでは割愛。
「にしても、当ての外れているチュリンカはいいとして、ほかの2人はどこからどう見ても本当に女にしか見えないんだが、
プリズム族ってことは――ないよな、まあ、2人の場合はDNAの結果が物語っているからないよな」
それに対してアールは言った。
「連中はムチで人を育てるんだ、多分、そういうことなんだろう」
「でもさ、それって1日や2日のことではできないだろう?」
「そうさ、恐らくだけれども、
こういうことを見越して何人かを幼少のころから長い期間にわたってムチで育てているのだろう、
まさに家畜を育てるのと同じようにね――」
アールは暗い顔をしながらそう言うと、エイジは言った。
「本土軍は”家畜を育てている”か、そういえばそんな噂を聞いたことがあるな、本当の話だったとは――」
「健康診断していますって表向きはいい顔しているけれども、結局――」
「……外道の極みだな」