エンドレス・ロード ~ティル・ジ・エンド・オブ・ザ・ワールド~

遥かなる旅路・天使の舞 第4部 明日への扉 第5章 誘惑の魔性花

第81節 女たちの裏の顔

 そして、その帰路に就いたアールは――
「どうかされました?」
 ラミキュリアが気になって訊いてきた、 アールはデスクの上に右腕で頬杖をついたまま、何か考えていたようだ。 左手はポケットに突っこんだまま出そうとしない。
「どちらも見た目は確かに人気のありそうな美貌をお持ちの方だったけれども――」
「何か気になるのですね?」
 ラミキュリアはすかさず聞いた。
「そう、なんていうか――どちらからも妙な感覚を感じたんだよね、特にエリュラ議員からは深い闇を感じた。 チュリンカ議員のほうはむしろ楽観的なキライもあるんだけど――あちらはなんていうか、なんだか絶対的な自身があるようにも感じた、 思うに彼女は結構な策士だ、私とどっちがと聞かれると――ふふっ、なんだか面白いことになりそうじゃんか。」
 なんだか自己満足しているようだ。
「まあいい、それはともかく、どちらの候補もファースト・インプレッションこそ柔和な雰囲気であるのとは裏腹に、 なんだか裏のあるようなものを感じる、そんな感じだったけど――」
 すると、アールは思い立ち、どこかへと向かっていった。
「どちらに?」
「エージ君のところに行ってくるね。」

 エイジのいるガレア本部付属科学研究所から出てきたアール、 その途中、アールとティレックス、そして、フルーミアの三者がばったり出会うことになった。
「あら、アール将軍様と、ティレックスさんですか? アール将軍様、いつお帰りになったのです?」
 フルーミアは可愛げにそう訊いてきた。
「うん、今帰ってきたばかりだよ。そういえば、エクスフォス組はどうしたのかな?」
 アールはそう訊くと、ティレックスが答えた、 ティレックスと一緒にいるわけでもなし、なんだか姿を見せないため気になって訊いた。
「今はルダトーラにいるよ、せっかくだからあっちに招待してみたんだ」
 それに対し、アールは訊いた。
「あれ? ガレアが気に入らなかったのかな――」
 ティレックスはすかさず答えた。
「ガレアはいいんだけどアンタが気に入らないんだそうだ」
 そう言われたアールは笑っていた。
「あっははははは! それじゃあどうしようもないよね!」
 それに対してティレックスは呆れていた、ダメだこりゃ、 アールとアーシェリスが相容れる日が来るまでには途方もない時間が……いや、そもそもそんな日は来ないのかもしれない、と。

 そして、そのままアールは執務室のほうへ戻ろうとすると、ティレックスに呼び止められていた。
「何? どうしたの?」
 ティレックスは男性隊員たちが何やら作業をしている方向を指して話した。
「あれ、なんなんだ? なんか地面に次々と刺しているみたいだけど――」
 どういうことだろうか、アールは首をかしげながらその様子を見つめていると、 状況を把握したのか、納得したようだ。
「ああ、あれね、思い出した。あれは大事な作業だよ。」
 そして、そういいながら、そのままどこかへ行ってしまった――それだけかよ、ティレックスは呆れていた。
 すると――
「おっ、ちょうどいい所に。 作業見てればわかる通りだが、とりあえず、これで全部だからお前も手伝ってくれ」
 ティレックスの後ろからエイジが現れると、男性隊員たちが地面に刺している謎の物体をティレックスに手渡した――
「えっ!? ちょっ!?」
 渡された物体は手で握れるような細い棒というよりほぼビール瓶、 瓶底には何か機械のようなものが取り付けられており、 その表面には防水用のカバーみたいな感じのものが取り付けられているような物体だった。 そして、その謎の物体はいきなりティレックスに8本渡されたのである。
「ったく、あいつ、人に頼んどいて忘れてんだもんな」
 と、そういいながらエイジはどこかへと行ってしまった。残されたティレックス――
「おっ、おい! 俺に押し付けてどこ行くんだよ! どーすんだよこれ!」
 言っていても仕方がない――ティレックスは諦めて男性隊員たちのもとへと赴き、 どうすればいいのか聞くと、彼らの作業に加わることとなった――。

 そしてその夜、アールとラミキュリア、そしてフルーミアの三者は寝室にて――
「まったく、アーシェリス君ってば、私が気に入らないとかどストレートに言ってくれるじゃないか。」
 アールは得意げに言うと、ラミキュリアが言った。
「まあでも、仕方がないのではないですか? アール将軍様のような方が羨ましいのでしょうよ」
「そうかな、私は思ったことはないけれども――」
「アール将軍様はそう思うかもしれませんが、普通の男の人からすると、やはり違うものなんでしょうよ」
「普通の男の人ならね。まあ、私は普通の男の人じゃないから、普通の男の人の感覚がわかるわけないか。」
「そうですよ、だからこそ、女性はみんなアール将軍様を全面的に支持するのですわ――」
 しかし、その話に対し、フルーミアは違和感を覚えていた。
「アール将軍様は普通の男の人じゃないって、どういうことですか?」
 それに対し、ラミキュリアが言った。
「うーん、そうですねぇ……、なんて言いますか、説明が難しいですねぇ――」
「まあ、そうだね……、なんて説明したもんだか――」
 と、ラミキュリアとアールは悩みながらそう言った。 しかし、言われてみれば、フルーミアにも何となく心当たりがありそうなものだった、というのも――
「まあ、その話についてはまた今度。それよりも、明日も早いですから寝ましょう!  それではアール将軍様、それからフルーミアさん、おやすみなさい!」
 アールとフルーミアはそれに対して楽しそうに返事をすると、ラミキュリアも楽しそうに去っていった。
「さて、私らも寝ようか!」
「はーい♪ アール将軍様ー♪」
 フルーミアはアールを色仕掛けで迫っていった、最近はそこまでは成功する。 夜中も確かに、アールは彼女の魅力でメロメロになっているようだが、 どういうわけか、アールのほうでどこかでピシっと一線を引いているらしく、 誘ってもまったくフルーミアに手を出そうという感じを出してこない。
 そして――気が付いたら朝、ラミキュリアのカーテン明けと挨拶のセットとアール不在のコンボで朝を迎えるのであった。 これは相当の強者だ、フルーミアは相応に覚悟を決めていた。