そしてその夜、アールとラミキュリアは一緒の部屋にいた、その部屋は寝室なのだが――
2人で話をしている中、可愛げなネグリジェを身にまとっているフルーミアがその場に現れた。
「あら? フルーミアさん、どうかされましたか?」
するとフルーミア、可愛げな仕草でアールにねだった。
「ねえアール将軍様、私、将軍様と一緒に寝たいの――」
それに対し、
「――いよいよ来たわね」
ラミキュリアはそう思いつつ、アールと顔を見合わせ、お互いに頷いた。
そして、アールはフルーミアに訊いた。
「私と?」
それに対し、ラミキュリアがすぐさま答えた。
「アール将軍様、いいじゃありませんか?
フルーミアさんはずいぶんとアール将軍様のことを慕っておいでですよ?」
そう言われたアール、フルーミアはアールの目を見て離さなかった。
「そ、そうか、わかったよ、仕方がないな――」
「わぁい! うふふっ、私のアール将軍様ー♪」
フルーミアは大いに喜んでおり、可愛げな仕草でアール将軍を誘惑していた。
すると、ラミキュリアは部屋から出て、部屋の戸を閉めた。
「うふふっ、まずは小手調べ、ですわ――」
ラミキュリアは不敵な笑みを浮かべながらそう言い残すと、その場から去った。
そして、その翌日――
「おはようございます、フルーミアさん!」
アールとフルーミアの2人が寝ていたはずの寝室にラミキュリアがいて、
カーテンを開けながら彼女に挨拶をしていた。
「あれっ、ラミキュリアさん? あれっ、アール将軍様は?」
どうやら、一緒に寝ていたハズのアールの姿はなくなっていた。
「恐らく、お出かけになられたのでしょう、そのようなことを言っていましたからね。」
「そうなんだ……」
フルーミアはがっかりしたようにそう言った。
「それで、どうでしたか?」
ラミキュリアはフルーミアにアール将軍様と一緒に寝たことについて感想を迫っていた。
「えっ、どうって、その――」
残念ながら、フルーミアははっきりと覚えていなかった、ただ――
「でも、なんていうか、とってもあったかいような、懐かしいような、そんな感じがして――」
それに対し、ラミキュリアは頷き、答えた。
「そうですか、それはよかったです! これからもぜひ、アール将軍様とご一緒に寝てくださいね!」
それをラミキュリアに言われたフルーミア、ある種の違和感を覚えたようだった。
「本当にいいのですか? 私、あの方の心を奪っちゃいますよ?」
それに対し、ラミキュリアは答えた。
「どうぞ、私は全く構いませんよ? だけど、その様子だと――かなり難航していらっしゃる様子ですね――」
フルーミアは口をつぐんだ。
「別に私は、お二人の仲については何とも思っていません、
最初にも申し上げました通り、フルーミアさんを応援していますからね♪」
というのも、その夕べの話――
「わぁい! アール将軍様♪」
フルーミアは楽しそうにアール将軍様に甘えてきた。
「本当に、フルーミアさんは可愛いなあ♪」
アールもノリノリで答えた。
「ホント? 私って可愛い?」
「可愛いよ! いやあ、キミみたいな娘と一緒に寝られるだなんて、私もすごく幸せ者だなあー♪」
「ウフフッ、アール将軍様ったら♪
いいわ、このアタシが、アール将軍様のことをうーんと幸せにしてア・ゲ・ル♥」
と、フルーミアはアール将軍様のことを誘惑し、色気で迫ろうとしていた、だが――
「わぁ! やっぱり可愛いなあ、フルーミアさんったら! こんなに可愛い娘はこうしてやるっ!」
と、アールはいきなりフルーミアに襲い掛かった! それにはフルーミアも驚いた――
「えっ!?」
しかし、襲ったといっても、別に狼が羊に襲い掛かるようなそれではなく、
「あははっ、可愛いなあ――」
アールは彼女のことをまるで幼子を愛でるかのように、自らの胸の中へと彼女を抱擁したのである。すると――
「あっ……なに、なんなのコレ……すごく、すごく気持ちいい……心地いい……」
彼女はそのまま意識を失った。
「ふふっ、まずは小手調べ、とりあえず、ご挨拶からしないとね。」
アールは得意げにそう言いながら、彼女の頭を優しくなでていた。
翌日、フルーミアは再びアールを誘い、そして、その日も先日に引き続き、デートを決行。
可愛らしい服装で決め、アールを色仕掛け。
その夜中はやっぱりかわい子ぶりっ子してまでアールを誘惑、アールと一晩を明かすこととなった。
しかし、その結果は残念ながら昨日と変わらず、朝目覚めたフルーミアの頭上でラミキュリアがカーテンを開けながら、
「おはようございます、フルーミアさん!」
と、先日と同じという、まさにデジャヴ状態から一日が始まったのである。
そして、その日はラミキュリアからひと言。
「ああ、そうそう、余計なお世話かもしれませんが、一つだけアドバイスを。
かくいう私も、以前はフルーミアさんと同じような経緯をたどっていますので、
経験者から言わせてもらいますと――あの人を色で落とすのは至難の業です。
極端な話、無理なんじゃないかと思いますね。
むしろ、あの方に心を奪われておしまいというパターンがほとんどです。
その方がむしろ幸せなんですけれどもね――」
自分と同じことをしている? このラミキュリアさんが?
それでいて、男女の仲にならないというのは何故なのだろうか、それはそれでフルーミアは疑問に思っていた。
確かに――なんて言うか、彼に、まるで、幼子を抱くかのように抱かれて――それで終わってしまった感は否めない。
そして色で迫っても彼を落とすのは難しいと言われ――
「私、絶対にアール将軍様を落として見せますから!」
逆に、フルーミアの心には火が付いたようである。
だけど――確かに、フルーミアのターゲットは相当のクセモノであることは確実なようである、
なんといっても相手はあのアール将軍なのだから。
それから数日が経ったが、フルーミアの計画はことごとく玉砕、いずれも、自分が心を奪われて終焉を迎える結末が続いた。
自分はアール将軍様に認められたい! 乙女心の火は日増しに激しく燃えていくこととなったが、
それでも全然手応えを感じる事はおろか、実行にさえ移させてくれない感じである。
そうこうしているうちに、アルディアスとルシルメアで動きがあった、選挙の投票日が訪れたのである。
いずれの国も民主制であり、議員は国民投票によって直接選ばれる。
そしてそれから数日後、大方の予想通り、
アルディアスではエリュラ女性議員候補が、ルシルメアではチュリンカ女性議員候補が、それぞれ当選したのである。
「なんだか、なるようにしてなったって感じだからなんと言ってみようもない感じだね。
まあとりあえず、行ってくることにするよ。」
そして、アール将軍も動き始めた、ガレアとしてはアルディアスの国民の代表が選ばれたことで、
将軍が挨拶をしに行かなければならないのである――いや、
本来であればアルディアス側がガレアにあいさつをし行くべきところだけれども、
ここの管轄はそこが違うところ、自分自らが赴いた。
そして、ガレアはルシルメアとは政治的にも同盟を結んでいることもあり、こちらもやはり挨拶することになる。
しかし、これでは手間も大きく、アルディアスとしてもルシルメアとしても、
お互いに挨拶がしたいということにもなりえるため、今回のあいさつは3国間による共同の催しということで、
間をとって主催者であるガレアのアールによる呼びかけでマウナの某所を会場に行われることとなった。