それからというものの――
「なんだよリファの野郎、なんだかんだ言ってやっぱりチョッカイ出してるじゃねえか!」
アーシェリスは激怒していた、アール将軍は脇にフルーミアを抱えていたのである。
「いや、というよりも、フルーミアさん自らがリファにくっついていっているように見えるんだが」
フェリオースは考えながら言った、そもそもアーシェリスの妹であるクレンス自身もそうだった気がするんだが。
だからなのか、余計にアーシェリスとしては気に入らなかったようである。
「それよりも、女性陣からあのリファリウスの女にだらしないネタ話は出てきたのか?」
フェリオースはアーシェリスにそう聞いた、しかし――
「まだ途中経過だ!」
彼はムキになってそう答えた、今のところ、一切出ていないようである。
とまあ、外野はさておき、
「うふふっ、アール将軍様ー♪」
フルーミアはアールの目を見つめていて離れなかった。
「フルーミアさんは可愛いね! 私はすっかりフルーミアさんの虜だよ!」
「まあっ、アール将軍様ったら♪ 私の将軍様♪ あなたのことを幸せにしてア・ゲ・ル♥」
フルーミアは甘えたような声でアールに色仕掛けをした。
「ははっ、フルーミアさんには参ったよ。」
しかし、当のアール将軍の口ぶりとは裏腹に、全く参っているようには見えなかった。
「流石はプレイボーイで浮き名を馳せているというだけのことはあるな、簡単には絆されないって感じに見える」
フェリオースは冷静にアール将軍の様子を見ていた。
「だけど、アールがプレイボーイで浮き名を馳せているという事実は虚構という始末、つまりは――」
ティレックスは考えながらそう言うと――
ティレックスはユーシェリアのいるデスクに向って話をしに来た、すると――
「なにー? どーしたの、ティレックス? デートしたいんだったらいつでも言ってねー♪」
と、彼女は楽しそうにそう言う――なんでそんな話に、ティレックスは頭を抱えていた。
「いや、あのフルーミアさんなんだけどさ……」
すると、ユーシェリアは何やら困惑したような様子で訴えた。
「えぇー!? ティレックスのバカ! 浮気者!」
だからなんでそういう話になるんだよ! ティレックスは再び頭を抱えていた。しかし――
「なーんて、冗談だよっ★」
ユーシェリアは楽しそうにそう言いながらウインクした……質の悪い冗談はやめてくれ、
ティレックスは切に願いつつ、さらに頭を抱えながら思い悩んでいた。
「フルーミアちゃんね、うん、アール将軍様から聞いたよ!
なんだかワケアリ見たいでさ、今は彼女の様子を探っているんだって。
でも、それにしても、やっぱり気になっちゃうよね……」
ユーシェリアが気にしているのは、それはティレックスにも共通することだった、
やはり、アルディアスの女性議員候補となっているエリュラ、ルシルメアの女性議員候補チュリンカ、
そして、帝国本土軍の司令官と思しきマジェーラと、そして、今はアールの隣にべったりとくっついているフルーミア――
ほぼ同時期に現れた女性4人、時期が重なったのは偶然かもしれないが、
しかし、いずれの御仁も何気に背景がすっきりとしていないことも共通していた。
「結局、誰一人としてわからず仕舞いだったんだっけ」
ティレックスはそう聞くとユーシェリアは答えた。
「エリュラさんもチュリンカさんも急に出てきたけど、特段これといったエピソードもないみたい。
言っても、選挙に出るというだけあって、流石に素性ははっきりしているけれども、
それでも、なーんか、売名行為感が否めないような候補みたいだってアール将軍様が言ってたよ」
売名行為……だが、その割には公約がしっかりしているらしく、単なる売名行為という感じでもなさそうだ。
そのあたり、アールとしてはなんだかしっくり来ていない様子らしい。
「でも、はたから見ると、内容はしっくりしているようにも見えるけどな」
それに対してユーシェリアは指摘した。
「そうかなー? アール将軍様に言われて考え直してみたんだけれども、
ほかの男性候補と比べても、言っていること自体は確かに似たり寄ったり、
公約の内容は違うけれども、やっぱり、女性が頑張りますっていう波に乗っかろうという感じしかしないんだよね」
ティレックスはその話に指摘した。
「あれ? 同じ女同士なら、むしろ女性議員を推すんだと思っていたんだけど?」
「うん、まあ、女の人を推したい気持ちもあるし、頑張ってほしいと思っていることは間違いないんだけど、それとこれとは別。
だって、こういう場合ってさ、公約の内容的には女性だからこうです見たいなことを言いそうなもんじゃん?
でも、そういうのがないんだよ、だからその辺、なーんか物足りない気がしなくもないんだよね――」
いくら同性同士とはいえ、女はシビアだったようだ、ティレックスは舌を巻いていた。
「あと、フルーミアちゃんの件だけど、気が付いたら船に乗っていたみたいで、それ以前のことは覚えていないみたい。
でも、彼女がもともといた場所は判明していた、ディスタードの本土島で暮らしていたって言っていたみたい――」
本土島か――ティレックスは悩んでいた、本土島でも兵隊でなければ連中にとっては用なしということか、
だから回収しなかったんだな。
それに、彼女を本土島に返すというのは……まったく想像もできなかったティレックス、
本土島については詳細は知らないが、とにかくとてもひどい場所、特に女性に対しては――
アールからは大体そう聞いているため、あいつも彼女をどうするか決められていないんだなと思ったのである。
でも、彼女には何かある――それでアールは彼女と一緒にデートまがいのことをしているのか、そう思ったティレックスだった。
だが、いちいち関連付けて考えるのもどうだろうか、なんとなくそう思ったティレックスはユーシェリアに話した。
「案外、考えすぎって気がしないでもないな。
そもそもアルディアスの選挙とルシルメアの選挙がたまたま時期が重なっただけだし、
そして重なった結果、どちらの選挙にも女性議員候補がたまたま出てきただけって感じもするぞ――」
もちろん、マジェーラもフルーミアもその時期にたまたま現れただけってことも考えられる。
「まあ、確かに――、それも一理あるけどね、でも、近いうちにわかるんじゃない?」
と、ユーシェリア、近いうちにわかる? どういうこと?
ティレックスはそう聞いたが、ユーシェリアはアール将軍様がそう言ってたからとしか答えなかった、どういうこっちゃ――
まあ、そういうことならそれでいいとしようか、疑問は残るが。
ティレックスは話を続けた。
「あと、ものすごく気になっていることが一つあるんだが、
俺としてはどうしてリファリウスにはあんなに女性がべったりくっついてくるのかよくわからないんだけどな」
ティレックスはそもそも論として気になっていたことを言った。
「それは――だって、リファリウスお兄様なんだから、当然じゃん♪」
それが何が当然なのかがよくわからなかったティレックスである。
「ティレックスも女の子だったらいいのに♪ そーしたら絶対にわかるのにね♪」
どういうこっちゃ……ティレックスは呆れていた、たとえそうだったとして、本当にわかるのかよ、疑問だ……。
「まあでも、いずれにせよ、ルシルメアはともかく、アルディアスも女性議員候補が名乗りを上げているぐらいなんだから、
今後どうなってくるのかちゃんと考えていかないとダメだってことだな」
確かに、自分の国を動かす存在がどうなっていくのかという点においては2人にとっては無視できないのは確実だった。