応接室にて――
「おい、テメェ、まさかまた女に、あのフルーミアって女にチョッカイ出すんじゃないだろうな?」
そう言われると、リファリウスは反論した。
「チョッカイ? ”また”って随分なことを言ってくれるね、
それじゃあまるで、私がこれまで女性にチョッカイを出してきたみたいじゃないか?」
だからそうだと言っている! と、アーシェリスは激しく追求した。
それに対し、ティレックスとフェリオースも深く頷いていた。
「なんだよ、私ってそう思われているのか、心外だね。」
「黙れ」
アーシェリスの怒りとは裏腹に、女性陣ユーシェリアは反対にリファリウスを完全擁護していた。
「リファリウスお兄様がそんなことするわけないでしょ! ねぇ、リファリウスお兄様♪」
そう言われたリファリウスは得意げに返した。
「とまあ、一方の女性陣はこうおっしゃっているわけだ。
これに関してはキミの妹も同意だよね? だからなんでそんなに私のことを目の敵にするのかなぁ?」
だが、アーシェリスは気が収まらなかった。
「妹に何を吹き込んだのかわからねえが、とにかく、絶対に何かしたに決まっている!
第一、女性”陣”ってなんだよ、全員に聞いたのかよ?
それに、こんな女の園を展開しといて――狙いは見え見えじゃねえかよ」
「どうやら残念なことに、これ以上私が何を言っても火に油を注ぐ様なものらしい。
そこまで言うんならいいだろう、どうしてもやりたければ止めはしないよ、
ここの女性陣全員に私のことをいくらでも聞いたっていい、
私はキミが思うような人間ではないことを保証してくれるからね。」
それに対してアーシェリスは立ち上がりながら言った。
「おう、言ったなテメェ!
何を安心しているんだか知らねえが、こんだけいれば1人ぐらい絶対にボロ出すやつがいるに決まってるぜ!
いいな!? 1人でもオメーが酷い野郎だって言う女がいたら、
妹の件については……とりあえず、手始めに土下座して謝ってもらうからな!」
何気にどうしてほしいか決まっていないアーシェリス。それに対し、リファリウスは堂々と言った。
「どうしてもというのなら構わないよ、受けて立とう。
もちろん、キミの要求は何でも聞いてあげるからね。
ちなみに、私が勝った場合は別に何もしなくていいからね、それは気にしなくていい。」
それに対してユーシェリアが言った。
「うわぁ……リファリウスお兄様、慈悲深いというか、甘いというか――」
リファリウスはユーシェリアに優しく言った。
「だって、そりゃあそうだよ、すでに勝敗が確定しているのに、
相手が負け戦に挑む姿を見ながらのそれは流石に酷だよ。そうは思わない? ヒー君?」
リファリウスはたまたま応接室の前を通りかかったエイジに話題を振った。エイジは呆れた感じの態度で答えた。
「確かに、いじめは見ていてあまり気持ちいいものではないけどな。
でも、それはそれで、相手としては張り合いがないんじゃないか?」
リファリウスは考えた。
「確かに、それもそうだ。じゃあこうしよう。
ここの管轄の女性陣全員分の――は酷すぎるから、5人分のおいしいスイーツを買ってくれると嬉しいね。」
それに対し、アーシェリスは鼻で笑いながら答えた。
「はっ、なんだか知らんが、随分と余裕だな! でも、最後に笑うのはこの俺だからな!」
そう言うと、アーシェリスは足早に去っていった。それに対してリファリウスは慌てて言った。
「おーい! 別になんでもいいんだけどさ、仕事の邪魔だけはしないようにね!」
それでも余裕である。それに対し、ティレックスがヒュウガに訊いた。
「てか、アンタもリファリウスの味方なのか?」
「別に味方ってわけでもない、ただ単に事実を言ったまでさ。
アーシェリスには悪いが、こいつのそういった話に関しては――俺に言わせれば”何を問題にしているんだ?”って感じだな」
そうまで言うか――それに対してフェリオースが言った。
「でもまあ、言われてみれば、健全で常識的な組織だったら、
上に立つ人間はその点クリーンであるべきってわけか」
そしてティレックスも頷きつつ、話をした。
「なるほど、女性陣としてもアール本人が公言するほど女たらしの将軍でないっていう背景はそこにあるわけか。
そしてその実態はクリーンな将軍――でもそれ、本当か?
なんていうか、アーシェリスの心配もわからんでもないような気がするんだが……」
それに対してエイジは頭を掻きながら答えた。
「いや、そもそもクリーンという表現も正しくはないな。
とはいえ、こいつがクリーンではないという意味ではないんだけどな」
どういう意味だ!? ティレックスとフェリオースは混乱していた。
「多分そのうちわかるよ、ねっ、リファリウスお兄様♪」
ユーシェリアは楽しそうにいうと、リファリウスも楽しそうに答えた。
「まあ、そのうちね。最悪一生言わなくても問題ないかもしれないけどさ♪」
それに対してヒュウガはため息をつきながら言った。
「あんた、本当に意地悪だよな。
まあ、でなければあんたみたいな難解な性格の人間は生まれてこないわけだが」
どういう意味かはともかく、エイジの言うことに対して一票。
一方、ラミキュリアとフルーミアは――
「ねえラミキュリアさん! ラミキュリアさんって、アール将軍様とデキているんですよね!」
フルーミアは興奮しながらそう言うと、ラミキュリアは焦って答えた。
「えっ? あっ、いえ、別にそう言うわけでは――」
「あれぇ? そうなんです? だって、そういう噂をなんか聞いたことがあるような――」
「えっ、どこで聞いたんですか!?」
「えっ、だって、男の人たちはそうなんじゃないかって噂していたような――」
「違います! 私と彼とはそんな間柄ではありませんから!
確かに、遊びでそういうことはしますが、本気ではないんですよ!」
「本気じゃないんですか?」
「確かに、アール将軍様とデートしたり、そういうのは楽しいですけれどもね、
でも――まあ、彼との関係はそこまでですね」
そう、アーシェリスが意気込んでいるところ申し訳ないが、
アールというか、リファリウスと各女性陣の間にも共通する不思議構造がまさにこのラミキュリアの例をとってもわかる通りの関係性でしかない。
それこそ、どの女性も、リファリウスとは結構仲の良い関係であることはよく言っているのだが、
きっぱりと本気ではないなどと、そこまでの関係でしかないと言い切っているあたり、非常に不思議なものである。
だが、それに対してフルーミアは――
「そうなんですか? ということはつまり、私にもチャンスがあるということですね!」
その禁断の領域に踏み込もうとしているのであった。すると、ラミキュリアは――
「フルーミアさんと、アール将軍様がですか? いいですね! 私、応援しますよ!」
その禁断の領域に踏み込むフルーミアを応援しようとしていた、どういうことだろうか――
「ふふっ、アール将軍様は私のものー♪」
フルーミアは楽しんでいるようだが、
「うふふっ、やはりそう来ましたね。アール将軍様、目論見通りの展開でございますわ――」
と、ラミキュリアはにっこりとしながらも、そんなことを思っていた。何やら波乱の予感が――